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ケモ耳紳士かと思いきや、激重感情拗らせた溺愛に蕩けそうです 〜獣人騎士団長との年の差婚姻譚〜  作者: 観世こより
第6.5章《リタルク・ルミナリア前夜譚》 それぞれの祈り、それぞれの夜
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理想は都市に、誓いは孤独に <イリアナ>

幕間第2話はイリアナ視点。

夢を捨て、現実と秩序に賭ける彼女の選択は、

「優しさ」では守れないものを知る者の、静かで冷たい決意です。

文官たちが立ち去った後、私は静かに執務室に立ち尽くしていた。

蝋燭の炎がわずかに揺れ、壁には私の長い影が揺らめいている。山積みの書類と地図が、この街の未来を形作る私の手腕を待っている。


祭りまで、あと一日。

都市全体が浮き足立ち、誰もが笑い、踊り、歌っている。

けれど、その下で幾つの警備計画が崩れ、どれだけの予算が火を噴いているか……誰も知らない。いや、知ろうとしない。


「……夢を見るのは、自由だわ」


窓の外、ギルドの塔に取り付けられた巨大な秘石ランプが視界に入る。

あれが灯されれば、この街は夜でも星のように輝く。

だがそれは光ではなく、制御された希望に過ぎない。


レザト……あなたには分からないでしょうね。

あなたは、剣で守ることに誇りを持っている。

でも私は、違う。

私はこの都市を「守られるもの」ではなく、「統べるもの」に変えたい。


都市は今、膨張し始めている。発展には必ず光と影がある。

この煌めく光の下で、どれだけの闇が蠢いているか、知らない私ではない。

——この街はもう、止まらないのよ。


秘石ランプに群がる商人たち、王族の影、そして──この街が持つ可能性への嫉妬と監視。

私は、王都で思い知った。

女であることが、どれだけ可能性を潰される烙印になるかを。

あの濁った男たちの目が、今、再びこの街に向けられている。

だったら、先に手を打つしかない。


この街が「統べるもの」として立つために。

誰にも手出しできないほどの、構造と秩序を築く。


「人間って、愚かね……何度、同じ過ちを繰り返せば気が済むのかしら」


その言葉が、思いのほか苦く響いた。

理想だけを信じて、現実に打ち砕かれた——かつての私自身の声に聞こえたから。


レザト、ルチカ。あなたたちは、優しい。

でも……優しさだけでは都市は動かない。


静かに、深く息を吐く。

この背中の書類たちは、“理想”ではなく“結果”を求めている。

だから私は、違う道を選ぶ。


たとえ、理解されなくても。たとえ「冷たい女」と呼ばれても。

愛されるより、恐れられる方が、街は守れることもあるのよ。

私は、机上の命令書を手に取った。


《民間防衛隊増強および特別警備権限付与に関する緊急令》


それは、混沌の中に秩序を打ち立てる、私の誓いであり——最初の一手だった。


次回は、ギルドの塔の上で笑う“狐”──カイの視点です!

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