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5.ジョシュアの誤算2② 〈ジョシュア〉

「……おい、トビアス。ここら辺がお前が用を足した場所じゃないか?」


車窓に現れた風景に、俺の記憶が反応する。

あの時は暗くて分かり辛かったが、遠くの湖に月が浮かんでいた光景が脳裏に蘇る。

付近には打ち捨てられた農機具や小屋、かすんで植物に呑まれた道標が点在している。

そして、近くにはこんもりとした森があり、その茂みの中に入っていったトビアスの姿が思い出される。


「うーん、どうだったかなあ」

「あの時の状況を思い出せ! ああ、そうか。思い出しやすいようにお前の頭をかち割ってやろうか?」

「あ、思い出しました! 茂みの中に入っておしっこしようとしたら、なんか風に乗って変な音が聞こえてきたんで、そっちに向かったんです」

「変な音?」

「うーん、言葉で説明するの難しいんですけど…なんか、ごもももも! って感じの音」

「はあ……それで?」

「そんで、その音の方に少し進んだら、紫色の果実を見つけて、美味しそうだったんで食べてみました。酸味と甘さがちょうどよくて、何より歯ごたえがバターみたいで面白いんです!」


シェザハが何やら唸ってる。


「音か……それはもしかしたらミストランザの噂の声かもしれないね。」

「ミストランザ?」


「昔、この付近にはミストランザという村があった。今は廃村になったがね。流行病で村人がほぼ死んでしまったんだ。そこから、その村の井戸から死んだ村人の怨念が聞こえるって噂が広まってね」


「えええ~~~⁉ じゃあ僕が聞いたのはお化けの声だったんですか⁉」

「ははは、あくまで噂さ。もしかしたら、魔獣が住み着いてるのかもしれない。どっちにしても危険に変わりはないから近づかないのが身のためだね」


トビアスとシェザハのやり取りを聞きながら、車窓を眺める俺の眼に向かいから馬車が走ってくる。

すれ違う瞬間、車内にいた人物に俺は目を見張る。


何やらずっと下向きに険しい視線を向けるレザト。そして後ろ姿だったが、あれは確かにルチカだった。

あいつらも、リタクロスに…⁉


「……ジョシュア君、どうした?」

「さっきすれ違った馬車、ル…領主のレザトが乗っていた」

「ほう、領主様か。もうじきリタルク・ルミナリアだからね。領主として今年も招待されたんだろう」

「ハッ! お忙しい事で結構なことだ。せいぜい、祭りのために尽力願いたいところだな」


吐き捨てるような俺の言葉にシェザハが何か探るように声を掛けた。


「ジョシュア君は領主様の事はあまりよく思ってないのかな?」

「別に。婚約に浮かれて油断している隙に、誰かに足元をすくわれるんじゃないかと、純粋に心配しているだけだ」

「ハッハッハッ! さすが商人は情報が早いね。彼が婚約した事を知っているんだね」

「……まあな」

「彼の婚約でまた色々な動きが出てくるだろう。祭りは政治的な色も強い。商人としても敏感になるだろうね」

「ああ、お祭り楽しみだな~。早く当日にならないかなあ」


若干ひりついた俺たちの会話など意に介さず、のん気なトビアスの言葉が車内に響く。

その声に、シェザハが独り言のように呟いた。


「そうとも。楽しい祭りになるさ……きっとね」


次回はレザト様視点になります! 

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