まだ平凡の日2
目が覚めると知らない天井でしたなどは、攻略者や冒険者の者達からよく聞くことだったが本当に起こるとは思わなかった。
気づいたら、ベッドで寝ていた。
ここはと思いながら、起き上がって周りを見ると自分の後ろ以外は薄い白いカーテンでとじられている。その右側から太陽の光が少量差し込んで白いカーテンが蒼白と色ずいている。
周りを見てもカーテンで何もわからず、目覚める以前の記憶を振り返ることにする。
確か、体魔測定を行って試合をやっていて一回戦目をして、二回戦目が始まり相手は道を教えてくれた女子生徒で同じクラスのカザクラさんであった。
結界内に入り中央から少し離れて、互いに向き合い。
目と目が合う。
彼女は木槍を扱うようで、姿勢を低め、地に穂を近づけて槍の中央を右手で持ち、左手は穂からペンぐらい離れたところを掌に乗せて優しく包んで支える。
穂先は地に向いているが、それは今だけで油断をすれば自分の心臓を貫くだろうという圧迫感を感じさせる。久々に感じれる緊張感に体が固くなる。
ゆっくりと深呼吸を行い、此方も構え、脇の隙間を出来る限り少なくし、相手を見据える。
今回は一回戦目と違って慎重にことを運ぶ、呼吸を整え精神を統一し、体に力を入れ過ぎず抜き過ぎず、全神経を研ぎ澄ませ開始の合図を待つ。 体の中で流れる力を速めていき、力を振り絞るようにだす。
緊張に溢れたこの結界内は二人が作り出した緊張で一杯にになり、それを割るかのような先生の声が試合の開始の合図を響かせる。
『始め!』
合図と共に走り出したカザクラさんは体勢を前のめりに変え、口が微かに動くと急激に加速する。その速さの変化に驚きながらも目が何とか付いて行く。
防御か、魔法か、攻撃か。迫られる選択肢。ただ、こちらが魔法を使う時間はないようだ。
攻撃は出来はするがその先の行動に支障が出る。
そのために防御に集中していく。さもなければ一発でやられてしまう。魔力を自分の色に変えていき短剣に纏わせ染み込ませるようにイメージを鈍い魔力で行う。
これで防御は何とかなる。そう信じることにして、攻撃の瞬間を見極め短剣の柄を強く絶対に離さないように握り締める。
そんな間に彼女は既にあと数歩。地面を数回蹴れば自分を攻撃範囲に入れてしまう。
そして一歩と地面を蹴りつける彼女。自分はふと時間の遅延が視認できた。
もう一歩と地面を蹴り進む彼女は自分を攻撃範囲に入れ。穂が此方を向いている。
彼女が槍を右手で握り締め、穂先を自分に向ける。左手は穂から離れたところで支え心臓を狙い穿つ。今か今かと心臓を貫かんとする槍。
数秒と経たずに死は放たれた。
(今だ)
と思い、左手の短剣、その側面で穂先を受け止め、木の武器では
到底鳴らない音が聞こえてくる。
基本的に剣は縦に強く、横には弱い。それは短剣であろうと変わらず、本当は当たれば壊れるはずが壊れず耐え続けるその異様に、驚いたのか僅かに力が弱る。
それを好機と右手の短剣を使って上から右斜めに穂に打ち込んだ。
それにより、心臓を狙った穂先は自分の短剣と一緒にずらして、横脇ギリギリで抜けていく。
攻撃のチャンスが巡る。素早く右手を振るい腕を目掛けて狙う。
勢いの付いた槍に引っ張られて此方に何も出来ないカザクラさん。防御は出来ないだろう。攻撃は槍に力がまだ乗っているために、無理に別の力を与えれば相当の負担だが出来なくはないどろうが、ただそれが右手だけでできるかは知らない。
僅かな思考の後に勝ちと思った時に腹を突き抜ける衝撃、遅れてやって来た浮遊感でようやく攻撃をされたとわかる。
腹部から激痛が走り、胃にあるものが押し出され食道を登ってくる感じが伝わってくる。
何故かなどの考えは頭から直ぐ様捨て去り、歯をグッと噛みしめて嘔吐を抑え、痛みに堪え忍ぶ。
ギリといったところで受け身に難とか間に合い、落下のダメージを軽く済まる。そして相手を即座に向く。
何をされたかは分かるが、まさか同い年の女性に一メートル以上も蹴り飛ばされるとは思わなかった。
此方の攻撃より早く強く蹴り飛ばした彼女は、持っていたはずの槍をなく、脚を蹴り上げた姿勢のまま。ゆっくりと脚を降ろす最中、スカートの中の白い何かが見て、ヤバイと視線をそらす。
体魔訓練では指定された服を着るのだが、今回は先生のミスで伝えていなかった為に制服姿のまま試合をしているわけだ。
それならば、蹴り上げるために脚を上げた彼女のあれが見えてしまう。
彼女は此方が目を反らしたことが不思議に思ったのか自分の状況を見て沈黙の間、頬を少し赤らめ、でも冷ややかな視線が此方を見つめている。
それも数秒と経たずに平然を装った顔ではあるが、スカートを手で抑えて、口を開く。
「見た?」
その声は何処までも冷たな声で空気が冷え込み震えあがりそうだ。
もし嘘を吐けばその場で殺されるのではと思い自分は正直に答える。そんなことはないだろうが、そんな雰囲気があった。まじであれは危険信号が鳴り響く。
「ほんの……少しだけ?」
彼女は「そう」と呟いて此方に向かって歩く。その態度に揺るぎなく、無駄もなく、慈悲はない。
一歩一歩と近づいてくる。死を告げる黒男のように。いや、この場合は黒女か?
そんな冗談を考えている暇はない。弁明をしなくてはいけない。さもなくはボコボコだ。
「待て、本当に待て、これは……」
「これは」
そう言葉繰り返すカザクラさん。その声に許しは通じないのだろうと思うも、答える。
「じ……事故だ。そうこれは事故…………いや、だから一旦止まろう?」
此方の声がちゃんと聞こえているようで、止まり考えこむような姿勢をして。
「事故、そうかも知れない」
その言葉を聞いて何とか無事に済みそうだと思ったら間違いだよ自分。
彼女は続けて。
「でもね、今は試合中……だから――その言葉は聞けないわッ」
そう答える前から彼女は右手を振るい。袖から短剣が落ちる、それを手に取る。言い終わるとこちらに向かって擲つ。
此方に向かって飛んでくるそれを短剣で弾こうとするが、その肝心の短剣は持っていない。
どうやら、蹴られた時、離してしまったようだ。
それと武器って一つだけじゃないの?
そんな疑問を浮かべている間に寸前まで飛んで来た短剣を身を捻ることで避ける。だが、避ける瞬間を狙ってか、いつの間にか槍を再び持っていて、突くのではなく、薙ぎ払われた。
防御は間に合ったが、衝撃が骨に浸透し全身が痺れたように震える。
ここからは思い出さずとも結果が分かるだろう。
ぼこぼこにされるなか必死で避けて防御して、いつの間にか気絶したらしい。
この部屋がどういう部屋かは分かった。
この部屋には自分以外、居ないのか人の気配を感じない。それと体の痛みや傷がないか確認してから、ベットから降りてカーテンを開く。
誰も居ないと思っていたこの部屋には、机に突っ伏して寝ている白衣の上に黒髪ロングが掛かっている女性がいた
気配が全然感じなかった、寝ている人であろうと気はあるものなのに。それと結構感覚が鈍っているのだろう。
それはいいとして、これは起こした方が良いのかな。先生に近づいて、声を掛けて起こそうとする。
「先生? 起きてください」
声を掛けたが、「う~」とうなり声を上げて起きる様子は見せない。
なので、もう一度言ってみる。
「おい、起きてください」
だが、起きようとせず、寝続けている。
「…………駄目だな起きない。なら、一か八かでたまに使える言葉を」
ならばと。奥の手をだす。
そう、あれは、限られた者のしか効かない言葉。呪に掛かった者を解く聖句のように、眠りから覚まさせる言葉それはーー
「ご飯ですよ」
緊張感もなく、言う。すると、
「ごはん? …………あれ……まだ学校?」
眠りから目覚めたようであるが、少し寝ぼけているようだ。
「先生、起きました?」
声を掛けたら、怖がるように悲鳴らしきものを上げる先生と思わしき女性は、お化けでも確認するかのように、ゆっくりと恐ろしそうに振り替えりながら声を出す。
「フルカザキ先生? …………? ……違うじゃない。てか誰?」
そう言うは大人っぽい雰囲気を醸し出す全体的に幼い女性。
それに自分の事が分からないようである。
「先まで真ん中のベッドで寝ていた者ですけど」
この部屋にはベッドが三つあり、その中の真ん中で自分は先ほどまで寝ていた。
「ああ」と思い出したようだ。
「そう言えばそんな顔だった。確か結構ぼこぼこにされていたし、来た時は二人の男の子に気絶したあなたを連れてきたから、あんまり顔を見てなかったから。でも、うん、ちゃんと治癒は効いているようす……あとは適当に動いて、いっぱい寝て、ご飯を食たべて、いっぱい寝て、だいじょうぶ。それじゃあ、バイバイ。だから、私もいっぱい寝るので……」
そう言ってまた眠りに入る先生である。余程、寝たいのか、自分はそっと部屋を出る。
ぼんやりと、この後どうすれば良いかなと思いながら廊下に出て歩いていると、見たことがある者が反対方向から歩いていた。あれは担任のフルカザキ先生と契約した精霊のアムズさんである。
あっちも気付いたのか、話しかけてくる。
「元気か、ナガクラ」
「はい……まあ、何とか」
「そうかそうか」と笑いながら自分の背中を叩くアムズさんはげんきそうであるが、普通に痛い。
「それで聞きたいのだか、保健室の中に黒髪で白衣を着た先生は居たか?」
笑いと背中を叩くのを止めて、聞いてくる。
「はい、居ましたよ。でも今は寝ていると思いますが」
それをいうと怖そうな笑みを浮かべ「なるほど」と呟いていた。こちらが見ていることを思い出したのか、ヤバい笑みを止めて先同様に笑いながら「教えてくれてありがとう」といわれた。
「それじゃさようなら」
自分は逃げるように別れをいい。心の中で、保健室の先生に謝る。
そのまま去ろうとするが、呼び止められてしまった。
「まて、ナガクラに伝えることがある」
「伝えること」
何それ、もしかして告白と冗談を考えているとそれを見透かしたのかは、分からないが考えていること言い当てられた。
「告白とかじゃないぞ。業務連絡的なものだ。学校はもう終わって皆帰ったから、帰って良いとのこと」
「はい、分かりました。それじゃさようなら」
「ああ、さようなら。……さてしばきに行くか」
そう不吉な言葉を残して保健室に向かった。それを見て大丈夫かなと思いながら自分もここを立ち去る。
廊下を歩いていた時、保健室側から悲鳴らしきものが聞こえたが多分気のせいだろう。そう、気のせいだ。




