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のんびり屋の精霊使い  作者: 夢見羊
終わりと始まりの体魔全力祭
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来る日は近く、感じる者は少なく、既知者はただ静観する。

「はぁあ~」


 大きな欠伸をする。

 眠い。


 鳥の囀りと朝日の光で目覚め、ぼんやりと体を起こした。だが虚無感が体を支配して、何をしようにも、体は眠りを求めている。だから寝てしまおうかと思ったけど、今日は大事なことがある。


 寝てしまえばこのまま明日に成っている可能性があるため、なんともいえない気だるげな体に無理をさせ。

 とても広く感じる部屋の窓を開けて、体に新鮮な空気を入れて、まだ少しぼんやりとした頭を冷まさせる為に顔を洗う。


「よし」


 気持ちを引き締め、身支度済ませて何時も通りの時刻に人には目の付きにくい木々の中に向かう。

 二が月ぐらい日課として続けたからか、やらないと調子がでない気がする。


 何時もの場所に着くと既に人がいた。

 近づく自分に気づいたのか、こちらを向き。


「ナガクラ、おはよう」


「おはよう、タツガワ」


 何事もなく、挨拶をして個々で準備運動を始める。

 昨日有ったことは昨日の内に色々と済ませた、色々と思うことはあるけども。


 今はそれでいい、いや、今はそれがいい。


 思うことはあるけれど、それらを胸の内に秘めよう。

 その為に今は一日一日を大事にする。

 準備運動が終わったようでタツガワから口を開く。


「今日は、軽い運動から模擬戦する?」


 悩む。それでもいいのだけど、今日は……。


「いや、今日は個人で鍛練をやろうか、自分でやりたいことがあるから……そうするとタツガワはどうするの?」


 そう問うが、タツガワはクスクスと笑っている。急な笑いにどうしたのかと疑問に思う。

 でも楽しそうに、


「同じだね、昨日でやるべきこと多く増えてね」


「じゃあ、別々でやろうか」


「うん」


 というわけで離れた所に移動した。

 今日のやるべき漠然としたことを纏める為に、まずは瞑想してから、纏める。

 地面に座り、座禅を組み、無心に生きるだけをやる。


 ……。

 ……。

 ……。


 十分は経ったぐらいで、瞑想を止める。

 十分というのは感覚的なものだから確かではないけど、多分そのくらい時間が経った。

 自分にしてみれば、三十秒ぐらいな気がするけど。


 で、今日やることだが。

 まず始めに、昨日学んだ事と直すべき事を挙げていこう。

 昨日は学んだ事と自分の直すべき事が多く合った、細かくは挙げないけど、大まかに。


 学んだ事は、一番は気術の七つの技術、二番は対人戦の動き、三番は魔法でなく精霊術。

 直すべき事は、一番は対人戦の拙さ、二番目は作戦の甘さ、三番は魔法の扱い方。


 他にも色々とあるけど、今はこれだけ。

 その中から重要度を決める。


 学んだ事では、一番は今日からやるべき事だが直ぐに身に付くものではない、二番目もしかり、三番は学んでいくべきものだが今の時点ではどうしようもないために。順番は一番、三番、二番と述べた順から重要度が低くなっていく。


 それじゃあ、直すべき事は、一番は対人戦を重ねる他ないので後回し、二番は今日から出来るが重要度は低い、三番が三つの中で一番重要かな。

 だとすると、三番、一番、二番と述べた順から重要度が低いから、総合して考えると、今日やるべき事は、気術かな。


 決まれば早く。

 昨日学んだことを思い出し、体感からの情報と言葉からの情報を擦り合わせる。


 まずは言葉で教えてもらった。

 縮地、気功、発勁、練丹、軽功の五つ、気を用いた技術。

 昨日のを簡単に纏めると。


 縮地は、気の力を利用した歩行速度の急加速化による距離の縮めた方。これはとても便利そう。

 気功は、外と内との気の交換をして悪い気を正しい気との交換を行い、体の調子と精神を整えること。これはあんまりな気がする、風邪とかには効きそうだが、自分事態があまり風邪を引かない。

 発勁は、気の伝わらせ方。気を、物体に液体に気体に浸透させた方。師匠曰く、何かを壊す時にはオススメとのこと。

 練丹は、練気という練り鍛えた気を作り体に投薬することで、体の性能が上がる。何かで補うのではなく、体の稼働率を上げているのだと。

 軽功は、重みを減らす、自身にのし掛かる重力という力から逃れ。身を軽く出来るそうだ。

 と纏めてみたが、


「どやって、練習しよう」


 どやったら習得できるのか、全く分からないし思い付きもしない。

 けど、真似は出来る。

 その為に死ぬほどボコボコにされたんだ。

 その中で何回も見た、縮地から手をつけよう。


 十メートルほどあった距離を一瞬で詰められた。急激な加速。

 速くなったということは、脚力が上がったということ。

 脚の筋肉を強化は魔法みたいな感じではないにしろ出来るけど、あそこまで加速が可能には到底思えない。なら足裏からの力の噴射での加速……力を上手く足裏から地面を蹴ると同時に放つことでは、出来そうだ。でもこれも師匠みたいのが出来る気がしない。


 でもこの二つと強化魔法を使えば、コントロールは難しいけど出来る気がする。


「なら一回やってみるか」


 まずは全身に完全な強化魔法を掛けて、気術で限定的な筋肉操作、筋肉の収縮を強める。そこから、最初の姿勢から一歩目の駆け出し方から全身に掛かる力を脚へと伝わらせ使う。

 イメージは出来た。実際に出来るかは分からない……でも。


 深く呼吸をして、開けた場所の距離を確認し、先のイメージ通りに、一歩目に脚を伸ばす。

 一歩目の脚とは違う、その脚の足先で地面から体を離すために押す。そこから放れる一歩目。


 結構良い感じな気がする。と思った時に違和感が生まれる。


 沈む?


 その違和感に気づいたが、その違和感の正体は分からず。


 一歩目が地面を踏み締める。

 そのまま、二歩目へと繋げたかったが。


 違和感が大きく膨れ上がり、一歩目がまだ続いている。その途中で二歩目を出そうとすれば、間違いなく、転ぶ。


「えっ?」


 素っ頓狂な声がこぼし、崩れた体勢で力の流れが前方方向へと向かって頭から地面に突っ込む。

 何とか頭から突撃を避けるも、土埃を立てながら地面を転がっていき、数メートル先にあった木に大きな音を鳴らしぶつかる。


「ガッハァ」


 肺の空気を吐き出す。強化魔法を掛けたお陰で何とか無事だけど、物凄い痛みが全身に襲いかかっている。

 それにしても何が起きたのか。辺りは土埃が立っていて視界は塞がれて、呼吸もしにくい。


 手で払うが何か違和感がまたある。その違和感に気づくのはすぐだった。

 土埃が収まり始めた時に、声が掛かる。


「ナガクラにやってるの?」


 もちろん、その声はタツガワのだけど。

 何か変、土埃から見えるシルエットは逆?


「そんな格好で、この土埃……」


 そんな格好とは、どんな格好だと思ったけど。

 自分の体勢は逆さまで、足が天に頭が地、視界に映る全てが逆なのだ。そんな自分は自らでは見えないから何とも分かり難い、他人から見れば変な格好になるだろう……。


「……まあ……気にしないで」


「いや、それはないでしょ」


 体勢を戻して地面に座る、服に付いた土埃を払う。

 背中を強く打ち衝け背中と地面を転がった為に体の至る所が痛いし、特に脚が大陸横断したような痛みがある。


 尋常じゃない筋肉の疲労と骨の痛みに、立ち上がることが難しい。

 今、立てば、生まれたての子鹿みたいになってしまうだろう。

 座ったままタツガワに話し掛ける。


「タツガワは何をやっていたの?」


「何をやっていたかと言えば、う~~ん……素振り?」


「素振り? 剣術でも習うの」


 率直な疑問に対して、タツガワはうねるような声を出して考えている。

 特にそういった訳でもないのかな。


「剣術を習うかは迷ってるけど。習った方が良いとアイガワさんに言われたから、それぽっいことをやろうかなーと」


「それで素振りね……」


 タツガワが剣術、確かに良いのかもしれない、剣の太刀筋や力の伝え方を身につけるのは。多分、タツガワは剣術を身につけると弱くなるだろう。

 でもそれを、剣の太刀筋や姿勢、力の伝え方だけを学べば、強くなるだろう確実に。

 なら、


「タツガワが良いなら、ほんの基礎だけ教えれるけど?」


 考え込んだ末にタツガワは答える。


「じゃあ、お願いしようかな、よろしくね」


 と言うわけで剣術の基礎の基礎を教えることになった。

 だがグッングッンと地面に根を伸ばして、栄養を取って成長する植木のように。

 教えれることはなくなって、タツガワの素振りを見て、癖や弛みが現れる姿勢や振り方を直すという形になったがそれもはや早々、なくなりつつある。


 切り裂く音。一定のリズムによって繰り返され、幾度も無防備な空気を切り裂く。

 一振り一振りを大事に丁寧に剣を振り下ろす。

 あるところまで下ろすと、ぴったりと動きを止めゆっくりと最高の一撃を振り下ろせる高さ位置に剣を置く。

 一振り全てを落とし込む。

 そして、振り下ろす。


 音は鳴らず、剣の軌道はスローモーションに見えて、恐ろしく速い。

 何年も振り続けてようやく出来たことをこう簡単にされると自分がやって来たことにショックを受けてしまう。


 しょうがないとはいえ、自分には剣の才能はからっきし駄目。

 内心のショックを隠しつつ、称賛の言葉をかける。


「うん、綺麗な振り下ろしだったよ。覚えるのも早いし、身につけるのも早い。剣術、習った方が良いじゃない?」


 これを見た後だと、タツガワが弱くなると思っていたけど。物凄く強くなりそう、でも正直、自分では分からないのであまり適当はいえない。


「そうかな? まだまだ荒い部分があると思うけど」


「まあ、それは今どれだけ打ち込もうが、長い時間掛けて磨かくしかないものだから……始めて数十分なら上出来以上よ」


 自分の出来に納得していないだろうけど、それ以上は数千日という鍛練の道にある。

 それを納得できるかは心構えしだい。


「まあ、ちょうどいい休憩になったけど、朝食の時間まではまだまだありそう」


 自分の呟きを聞いたタツガワは笑顔で。


「じゃあ、試合する?」


 聞いてきた。


「無理」


 何かへこんでいるタツガワ。

 試合するには脚の疲労で、これ以上やると今日の予定がつぶれることになる。体を動かす系は絶対無理、出来たとしてもストレッチぐらい。


 日が登り始めた青空をぼんやりと見ながら、考える。

 何かあったかな、もう部屋に戻ってもいいけど……。

 ああ、ちょうどいいのがあった。


「精霊術」


「精霊術?」


 しゅんとしたタツガワは聞いたことがなかったのか疑問符を上げている。

 そんなタツガワに簡単に教える。


「そう精霊術。名前の通り、精霊の力を用いた技術のこと、簡単に言えば、精霊魔法」


「へぇー、それで、何で精霊術?」


 色々とあるけども、この中で言えば。


「強くなるために」


 不思議そうにだけど真剣にこちらを見つめてくる。


「どうして」


 その問い、迷う。どう返答すればいいのか。

 当たり前の疑問に対して、何故こうも答えれない。一回も間違えれない問題を出されているような気持ちだ。

 だから心の奥底で眠る思いを告げた。間違えないように。


「怖いから……唐突の終わりが」


「へぇー、意外とびびり何だねナガクラって」


 びびり、そうかも知れない。けど、怖くても恐くても、動かなければならない時がくる。自分の為に。


「ナガクラの意外な一面を知ったよ今日…………なんか、呼び難くない?」


「何が?」


「名字呼びだよ、名前で呼ばない?」


「確かに少し呼び難いかも、じゃあ……確か……ミセンだったよね」


 そう呼ぶと嬉しそうに微笑み、自分に手を差し出す。


「うん、よろしくね……ヨシタカ」


 近所の人や親しい人に家族から下の名で呼ばれることはあったけど、同い年から呼ばれることは無かったから新鮮な感じだ。

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