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のんびり屋の精霊使い  作者: 夢見羊
終わりと始まりの体魔全力祭
58/69

勝利を掴みて

 近距離のイロカゼ、遠距離のハナサキ、中距離の自分、間合いがないこの場が作れた。

 スムーズにこのような戦闘の距離を無視できる混沌とした戦いにしたかったのが、理想。

 出来なかったのは仕方ない、出来たら少しだけ相手に自分の情報をなくすことが出来る程度なので、無理するようなことでもない。


 にらみ合い状態。

 先に動けば、二対一の状況に持ってかれる。でも、止めをさす場面がくれば一人は待っていたとばかりにもう一人を隙を狙う。仲間ではなく、あくまで強力関係、気を抜くとやられる。気を付けねばならない。

 一番、問題なのは先の状態のように、二人が潰し合い、一人が静観している状態。一番望むが一番来てほしくはない。狙いもしない、これは欲に駆られば、負ける。


 相手の動きを待つか、此方から仕掛けるか。

 ハナサキが最初に動くことはない多分ないだろう、だとするとイロカゼが最初に動くのが危険か?

 でも自分が最初に動くのが一番、危険なような気がするが……ベストは二人をにらみ合いをさせて、うまい感じ良いところを奪うこと。


 そうするには今のままでは駄目だろう。

 ちょうど良く、にらみ合いの状態だ。

 自分の魔力器官をフル活動させて、扱える魔法を多くしなければ。


 魔力を高鳴らせる。ほぼ完成に近い魔法器官に莫大な魔力を発生させ、押さえていた魔力の流れを解放し、活発化させる。


 その急激な変化が、外に現れ出る。

 空間に圧力が加わり、空気の流れが発生し、強くなり風を生む。


 最初に気づいたのはやはり魔法使いのハナサキであった。その二人の変化に気がついたイロカゼは愉しそう笑みを浮かべて、様子見をしている。

 体の中をぐるぐると流れ回る魔力が先とは比べれないぐらい速まり、魔力貯蔵庫(ホワイトダム)に魔力が爆発的に貯まっていき、すぐに容量を超えて溢れだす。


 その魔力の全てを使って。


 未熟でまだ弱く、ちゃんとした手順を踏まなければ、至れない境地に踏み込む……

 己に胸に強く、告げる。


 ――我が救いは最果てに――エンドクエスト――


 体が精神が魂が、狭い枠組みから解放されるように拡張していき、自分という存在が押し広がていく。

 世界が色鮮やかに咲き、嫌な音もどこか心地よく鳴り、無臭のここが花畑を漂わせ、舌に触れる空気が味わい深く、肌には粘りこっく感じる空気がす澄やかに。


 あらゆる不安はなくなった。


 そんな数秒間に満たない一瞬の万能感が脳裏を埋め尽くす。

 そんな一秒が永久に等しい世界で、自分という理性が酔った自分をぶん殴り、目を醒ます。


 意識は明瞭になって、周りを見渡す。

 魔法を発動し此方に攻撃をしてくるハナサキと、油断なき眼差しで自分を観察するイロカゼ。


 まずは、攻撃に備えて防御結界を展開し、それと同時に並行してもう一つの魔法を使う。

 ここ全体を濡らすために。

 ハナサキが放った火炎を纏う風の矢が爆炎により加速する。ギリギリに展開した防御結界が防ぐ。

 ただ、風の矢が防御結界に当たることで矢の形が壊れて火炎と交じり爆発を起こす、猛々し音が鳴るなか自分は呟く。


『水球』


 爆炎に包まれた自分は他人からは見えなくなっているだろう。その周りに球の水を作る。

 満杯のバケツぐらい水量を持つ、水球と名の魔法だが本当なら球なのだが、その形は不安定で歪となっていた。


 透明な水がキラキラと光に反射を繰り返し、幾つもの水球は、相手に射つのではなく、空に向かって放つ。

 あまり使いなれてない魔法の為に速度は遅く、形も不安定。上に射たれて何処までも存在する空の途中にあるはずの展開された防御結界が作った天井に当たることなく。

 速度は重力に引かれて、速度が徐々に落ちていき。

 そこに次の指示を告げる。


『凄まじく破裂しろ』


 水球は言葉の意味を実現させるために、形を膨らませ歪みが広がって、形を失う。

 パッんと破裂音が慎ましくも耳に届き、雨として渇いた大地に降り注ぐ。


 幾つも射たれた水球が作った雨は大地が泥寧る。

 続けざまに自分以外も聞こえるように魔法を使う。


『すってんころりん。すってんころりん。泥寧む地面は農夫さえ、すってんころりんと掬われる、呪いの地。|転ばぬ加護は転じて転びの呪いに《カース・イフ・ブレシングフォール》』


 魔法を発動させたが見える形には、確かな変化はない。

 見た目は、という話であるが。


 ここは既に泥寧みの地である。下手に動けば転ぶ。それは滑ってか、転けてか。

 この濡れた地を泥寧む地に変える魔法ではなく、滑り転びの呪いを再現する魔法。元々は転ばないようする為の魔法。

 神の加護を得る魔法。一応、生活魔法の分類で各地の民間伝承に登場する豊穣の精霊から加護を元にした魔法。


 本当は使えるような魔法ではないが、農民でも生活魔法が使えるのは理由がある。

 ある程度の魔法を使うには、基本的に魂の階層を登り、人間が世界に与える影響を高め魔法の範囲が広げていく必要がある。

 では、自分がしたように魂の階層を農民達は登っているのか。正解は登っていない。


 それには二つの要因があるが……今はそんなことよりも、二人とも迂闊に動けない為に今がチャンスなのだ。

 だから、自分は口を隠し、本来の魔法を自分に掛ける。


「すってんころりん。すってんころりん。泥寧む地面は農夫さえ、祈りを捧げなければ、加護は得ん。転ばぬ加護サンラト・イ・ブレシング


 これが改造前の転ばぬ加護の魔法。

 さて、未だ動けない内に出来るだけ、ハナサキに近づく。

 この場所で早々動くことは出来ない。


 何故かといえば、転びやすくする魔法の詠唱を聞こえるように言ったから、正確な魔法の効果は分からないだろうが、どのような効果は大体分かる。

 ただこの魔法は対処が簡単である。生活魔法をアレンジしたものであるから。


 対処法はパッと考えれるだけで、三つはある。

 濡れた地面に掛けた魔法だから、乾かせばいい。多分、ハナサキなら普通に可能。

 ある種の呪いであるから、解呪する。これは呪い系の魔法を学ばなければ、解くのは難しいだろう。

 最後に自分と同じ様に加護の魔法を掛ければいい。自分と全く同じ魔法でなくても良いけど。

 この三つが簡単に挙げられる。強力な魔法ではないし、対処も簡単。


 先にその簡単のを三つが最初に思い浮かぶはず、だがどれも簡単ではあるが最善ではない。自分は思うわけだ、ハナサキなら思考を早め解決しようとするだろうと。ほんの数秒で無効化される。


 ただそこに自分が突っ込めば自分の接近を防ぐ方法と、地面に掛けられた魔法をどうにかする方法の二つのタスク与えることができ、時間を僅かに生む。

 でも、その僅かの時間も近づけばハナサキは考える時間が奪え対処の方法も自分が考えれる範囲に近づく。

 だから早く近づく。イロカゼが動く前に。


 駆ける。十メートルの距離もない。

 行ける。

 ハナサキは何処までも落ち着いていて、冷静に対処するように魔法を扱う。


 それは予想とは少し違ったが、自分の周り少し大きい範囲ごと地面に焼き目を付けるように炙る火炎。

 手早くなら、自分の周りだけで、自分の最低限の動ける範囲を作るかと思ったが。


 まあいい、結果は変わらない。炎の魔法で地面から水気飛ばす方法の時点で此方の思惑通りになる。

 自分は左手に持つ魔剣フレイムに魔力を与え、剣身に炎の衣を纏うい、その先が二つに割れて割れた表面はギザギザと。まるで獣の口のようにグワッと開かれ、それは。


 泥寧む地面を炙ろうとする火炎を喰らった。


 ムシャムシャと抵抗するように火炎は炎を燃やすが顔に纏わりついた菓子屑の如く舐めとり、貪る。


 入り混じった魔力を我が物かのようにである。

 異質さを放つ魔剣。それを振るうとその周りの火炎も食らう。

 ハナサキは思ってもいなかったことが起きたことに驚き表情として素直に表した。だが、冷静さは。

 呟くように少し怒りを混じらせた言葉で。


「舐めないで」


 手に持つ杖、銀の輝きに金の魔法的装飾を加えられた間違いなく一級品のそれを。

 しならせ、空気を切り裂き。とても、打ち合えるような代物ではないし尺も足りない、それを此方に向かって振るう。

 自分は迷わず、魔剣ロストを振るう。


 意識が吸い込まれるように、刃と杖が触れる瞬間を捕らえる。

 刃と杖が不釣り合いに釣り合って、一瞬止まり、攻撃が反らされる。

 ぶつかった時に全身に感じた衝撃はやはり見た目に合わない。故に、不自然に見えた。


 何ならかのトリックがある。

 身体強化とかではない、魔法が関わっている気がする。

 何か、思考が遮るように素早い二撃目がやってくる。

 自分はそれをひらりと避け、相手を観察しながら、再び刃を合わせる。


 全身を一瞬だが押し返すような威力を持っている、最初の一撃よりも弱かったが似た感じがあった。


 やはり、純粋な身体強化だと、あの衝撃は生めない気がする。

 他に肉体の強化魔法は身体強化、筋力強化、骨格強化の三つ。自分もこの三つは必ず掛けているから、考えれば考えるほど無理だと分かる。

 なら他にあるとすれば、重力増加も考えれる。


 最もシンプルに魔法的に考えれば、風を纏うか。先のは多分違う、風を纏うなら、風圧による押し返し。それは端から見れば、見えない層に止められていることになる。

 そんな感触もなければ、見えない何か止められている訳でもない。


 三度目、四度目と打ち合わせるほど、不思議に思えてくる。


 先から、合間なく攻撃を入れられる。

 思わず魅いるほど綺麗に速度が乗った攻撃、これは自分の予想と違って近距離でも戦えるように仕込まれている。

 その事に心の中でため息をつきながら、思考を戻す。


 不思議な衝撃。まるで、魔法とは違う何かで動いているような。

 魔力は必ず使っているはず、魔力で魔法を発動するから。だけど、幾らなんでも発動が早いような。


 魔力が魔法そのものみたいに。


 いや、魔力を使った魔法的工程が殆んど無い魔法。


 そうか、そうか。

 こんな単純のことか。

 すっかりと忘れていた。


 魔力とはどこまで純白魔力で、ここでの純白、つまり白とはエネルギーの特性のこと。他の色に染まりやすさを表す。

 ならば、後は単純で衝撃を魔力で強めたのだ。それも指向性を定めて。

 だとすると、自分ができる対策はない。単純に力で勝つ以外ない。自分もハナサキのように同じことをすれば、間違いなく失敗する。


 それに、勘を取り戻すように徐々に上手くなっている。タイミングや体の節々に見える急激な加速による緩急が捕らえづらくなる。

 こいつ、本当に魔法使いかかよ。と思いつつ、対応していく。

 次に自分がハナサキに攻撃を入れるタイミングで、不安の言葉が不自然に聞こえてくる。


「これは、魔だろう?」


 完全に意識の外にいたイロカゼ、その集中の中で聞こえた言葉が何処か不安を抱かせる。


 自分は攻撃のモーションから回避に無理やり移し、ハナサキとの距離を保つ。

 ハナサキも同じようで、イロカゼに意識が向いているが此方を確りと警戒している。ここで、完全に意識が向いていたら良かった。 

  まあ、それでも多分、攻撃はしなかっただろう。ここでそれをすれば、イロカゼの対応ができなくなる。


 目尻の端で捉えたイロカゼは、星剣の切先を空に向けて構える。そして赤く輝かせ。

 大太刀の剣身に沿うよう重なる七の刃。その一枚が赤き輝きを吸収するように、赤く色づく。


 その刃は剣身から浮き離れて切先に沿う。


 刃の赤が剣身を染め、ブワリとした熱気が空気を揺らがせた。

 そして、構えた星剣を地面に突き刺して灼灼と熱が滾らせ、大地へ放出する。


 その光景を見ていたことを自分の致命的なまでな隙となって、一瞬にして地面の水分がカラカラと乾かせた熱が水蒸気を生む。

 水分は水蒸気として白色の湯気が地面から噴射される。強烈な熱を含んでおり、肺を焼くような空気とかした。


「きゃっ!」


 悲鳴のような声は遠く消え、自分もそれを気にするような余裕はなく。

 自分は出来る限り息を吐き出し、魔力と気を用いて自分を熱から守る。後は魔剣フレイムで炎のではないが熱を喰らわせる。

 微々たるものでもないよりまし。


「……ッ!」


 声を出せば喉の内から焼かれる。

 ほんの数秒間、蒸気の熱に耐え凌ぐことができた。

 体が空気を欲して、固く閉じた口を開き、肺を大きく広げて吸う。


「すぅう~、はぁあ~」


 深呼吸を数回繰り返す暇もなく、肌身に強く感じた気。接近の反応を感じとり、背を勢い良く後ろに反らし一撃を避ける。

 感嘆の声をあげて、此方を面白い物を見るような視線を向けてくる者と目が合う。


「へぇー、これを避けるって、中々の勘だな。まあ、本当に勘は疑わしいが」


 自分は次に来る攻撃を予想して、無理矢理でも体を右に捻らせ。勢いと回転でずれて地面を転がって距離を得る。

 すかさず、イロカゼの方を警戒する。

 未だ落ち着かない呼吸を整え、思考する。


 厄介。先の攻撃の時にイロカゼが自分に問いかけるように言ったあの言葉。

 勘もあるが、あの蒸気の攻撃が予想して行ったのではなく、それを利用した攻撃ならば、一番対応が遅れるここを狙わないわけがない。

 やはり、あれに対応出来たのは気術のお陰であろう。先の攻撃を避ける要因は気なのだ。


「チッ、どんな身体能力しているだよ!」


 距離を無かったように近づいてくるイロカゼに悪態を付きながら、刃と刃を幾度も重ね合わせる。

 笑みを浮かべ、速度が上がる。


 正直にいえば、自分が二人と比べて自分が持つアドバンテージというのは〝気〟である。

 そこに気づかれても何もないが、もし気に気付き天才的に使われたらアドバンテージが揺らぐ。

 それが何処までも杞憂であってほしいと切に願う。


 イロカゼが振り下ろした刃。早く重い一撃を、使える技術を用いて、反らし、いなし、防ぎと攻撃を捌く。

 一振り一振りであろうが、次の攻撃を視野に入れた攻撃の為に次の攻撃のモーションが早い。


 でも連撃は此方の双剣の方が早い。

 モーション時に隙をつくように攻撃を入れる。防がれ反動で剣が帰り、その反動を利用して片方の脚を軸に回転し、攻撃に使った方じゃない剣で薙ぐ。


 守りが堅く、防がれるも。回転の勢いを殺さないように防がれた刃を止まることなく滑らせ、回転の軸を変えて姿勢を特段と低くし、先まで軸にしていた脚で、相手の脚を狙った回し蹴りを喰らわす。

 綺麗に相手の脚へ向かうがジャンプしてかわされ、相手の振り払われた剣は防げないので避けて距離を取る。


 一瞬の確認に、素早く距離を詰める。

 相手が振るう一撃を双剣で受け流しつつ、もう一度蹴りを入れようとするも、イロカゼは瞬時にそれを悟り、呟いた。

 魔力の流動が見え、気の流れが変わった。

 仕掛けられる前に早くと思うが。


寂しん坊の草(グラスオブハグ)


 その魔法名を告げることで、蹴りをしようとした足に絡み付くように、緑のウネウネと蔓が生えてきて蛇のように足に巻き付いてきた。

 魔法を使えないとは思ってはいなかったが、ここまでスムーズに実践耐え得る形の魔法がまだ使えるとは思ってはいなかった。だから、自分は隙が大きい攻撃を仕掛けられたのだ。

 全くもって見当違いな考えに自分は思わず舌打ちをする。


「チッ」


 その魔法により動きが止まる。

 もちろん、イロカゼは攻撃をしないはずもなく。当たれば間違いなく、ルール上でも本気の戦いでも負ける一撃を振る。


 自分の足に絡み付いた蔓はそう簡単には外せないし破れない。つまり、この蔓を外すには圧倒的に時間がない。

 加えて、避けるにも足が使えない状態では結局、一度避けても二撃目は避けれない。

 だから、ここで自分の持ち札の一つを使う。


 振るわれる刃。何処までも危険で、自分が今持つ二番目の剣では、星剣の全力は到底打ち合えない。

 空気を鋭く切る音が正確に聞こえ、時間がゆっくり流れているかのように思えるほどに自分は集中の中。


 自分は後ろに崩れた。


 足元の地面が脆く、体重により沈んでしまう、まるで沼のように足が捕らわれる。だからバランスが崩れて後ろに倒れてしまう。

 自分からの動きではなく、自然によるもので倒れることで後の対処がしやすくなり。地面が砂のように崩れている、蔓の根がどれだけ伸びようとも地面の確固たる固さを失えば妨害は出来ない。


 本日、二度目の地面を転がり距離を取る。

 イロカゼの顔を見ると、まさに驚愕と言った感じである。


「どうやって抜け出せたかは分からないが、普通じゃない方法だな……」


 流石に分かるか。イロカゼが言った通り、普通ではない方法で抜け出した。普通の方法でいえば魔法を使うことだが、自分がしたのは地面を砂にする方法。

 地面に関する魔法は普通に考えれば土魔法だが、土を砂のようにするのは土魔法からいえば普通ではない。

 別に土魔法で出来ないことをしたのではなく、圧倒的な行程の少なさである。


 魔法ならば、魔力を使い、イメージを魔力に流し込み、足元の地面をイメージによって砂に変える。最低でもこの手順をする必要がある。

 だが、土を砂に変えることは簡単そうに見えて以外と難しい。土を操るのが土魔法。砂も土の分類にはなるが、細かすぎる。


 イメージではどうにもならないほどに細かくさらさらなのだ。


 だからもし本当に土を砂にしたいならちゃんとした理論と魔法式を組み込まないといけない。そこには最低でも魔法陣は要らないにしても、詠唱ぐらいは挟む。もし砂を完璧に使えるとしたら、それは得意魔法によるものだろう。


 完璧に扱おうとしたらの話。自分がやったのは所詮は分解。魔法でなく、錬金術だ。

 錬金術にはある程度手順がある。その手順さえ従ってれば、最悪魔力がなくても錬金術が扱える。だって昔から人が使っていた術だ。

 そんなことはいい。

 何とか抜け出せたが……早く……。


 自分に向けて振るわれる剣は超絶危険な星剣。

 威力と鋭利さに強靭性、間違いなくどれも一級、それにその真価がある。イロカゼが一度だけ見せたあの熱が片鱗。

 強大すぎる力ゆえに、イロカゼは何処まで本気でも、全力は扱えない。

 未だ底が見えないイロカゼの身体能力に星剣の力は、そこら辺にも及んでいるのだろう。


 段々と動体視力では追えきれなくなってきて、半ばの勘と気によって回避する。

 死を抱かせる連撃を避けるに精一杯でイロカゼの顔が愉しそうに歪んでいたことに連撃が止むまで気づかなかった。


「やっぱり……ナガクラ……お前、気を読んでいるな? じゃないと――」


 確信した瞳が此方の瞳を捕らえるが、それに返するように双剣の片割れの魔剣ロストを投げる。 集燥感に駆られる。まだか、早くしないと自分がやられる。そんな気持ちすら置き去りにするように。

 即座に駆け抜け、残った魔剣フレイムに魔力を喰らわせ。燃やす、乾いた薪を火の中に入れるように、弱い火が強く強く燃え盛らんがために。

 その赤に似た色味を持つ炎を、放出ではなく、収束させ。


 乗せれる全ての力を乗せて、剣身の内に秘められた赤が柄から切先まで遠心力に従うようにギラリとした赤が走る。


 もうお話し会いに付き合うつもりはない。

 潰すなら今しかないから。


 イロカゼの後ろから感じる魔力とは違う流れ。

 強い気の流れ。


 魔力だったらイロカゼも気づいただろう。だが、違う魔力を表に全く出さずに、魔法を発動しようとしている。影響が全く外に出ないわけではない。

 深い集中の中で行われる技術。何の魔法かは全く分からない。イロカゼを潰すことは出来るはず。


 自分の思惑知らず、此方だけに視線を意識を向けてくる。ハナサキのことを忘れているのではなく、ここで水を差すことはないと考え。一対一の潰し会いで、一人が傍観で準備万全で仕掛けられるのだから。

 だから、引っ掛かるし。ここのチャンスを逃せば、自分は勝ち目が無くなる。


 確かに、そっちの方が確実で合理的だろう。でも、今のハナサキは何故かは分からないがイラついている。

 気として流れる底知れぬ怒気を感じるから分かる。


 あらゆるを燃やす炎ではないが、あらゆるを熱し切る剣である。

 一度、肉に触れれば。

 水分は蒸発し、融けて二つに切れる。


 刃が通る空気は、乾く。その熱刃を真正面から打ち砕かんと星剣は星の輝き、眩き石の光を絶え間なく放出し続け赤く色づく。

 あれは、濡れた地面を乾かした星剣の力……。


 間違いなく打ち合えば融かされる。


 だからといって引くわけにはいかない。魔力を最低限まで喰わすことを覚悟し、ハナサキの魔法を早くと願う。


 赤と赤がどちらが塗りつぶすために。引かれ合う。

 熱が熱に融かされる。血肉が混ざった鉄が形を変えようとする。


 あと少し持ってくれ。刃の熱が柄に直に伝わり、手の皮が既に溶けてしまっている。

 そうここは――熱と空気嵩がある場所。

 熱が支配する世界で――自分達は止まった。


 熱された体がヒヤリと凍えた。冷されたのではなく、奪われた。

 あまりにも予想をしていなかった、圧倒という賛を送りたいほどに。


 全身を恐がらせる大きな魔力。鋭くギラギラと研ぎ澄まされ、膨れ上がっても留め続けた、いわゆる見た目以上の力が前触れもなく、放出された。

 油断――慣れてない体に、準備もなく。服の隙間に氷を入れるようなもの。

 その圧倒的な魔力が無防備の全身を突き抜け、熱を奪い去ったのだ。

 あまりにも予想外で、覚悟は当たったが動きが数秒と止まってしまった。

 それは序の口とばかりに詠唱が孤独に響く。


『魔の造花、誇り咲けーー魔造花種子卓越マジックフラワー・ビヨンドザシード


 立体魔法陣が起動した。


 白い光が線をなし、直線だったり曲線だったりが形を像を成そうと成していく。

 組み上げられた白い光の線は簡単に見て、複雑で、球体とか立方体、ましてや錐や柱なんて形ではなく、花として。


 色素なき花弁(花びら)がある法則に沿って五つ、それが形成する花冠。とは、違い植物らしい色合いをした蕚片。双方合わして花被がなる。それを支える為にと茎が大地に根を伸ばした。

 中枢になっているだろう雌しべ、その周りに集るように雄しべが花冠の内に、揺らいでいる。


 視線が奪われる。意識が奪われる。思いが奪われる。


 美しく咲いた、魔法の花が……新たな子を産もうと自然に願うように、風が花被を扇いでーー


 雄しべと雌しべが揺られ、触れた。


 一つの雌しべに食らい付く雄しべは一つと形と変わって、子を産むために、元に与えられたのでは足りずより大地に根を張って魔力(エネルギー)を吸う。


 魔力の集まる所は新たな神秘が産まれる所。凝縮精製した魔力、その残りが漏れて低位の神秘へと転じるそれは光。

 まるで星の光のように。強い命を感じさせ、受精したのか鼓動音が聞こえた。


 ドゥク、ドゥク。


 植物には心臓がないはずなのに、確かに聞こえたその音は間違いなく聞き間違えである。そうでないとしたら、勘違いをする程の力が新たな命を本当に産もうとしているのだろう。


 種は撒かれた。空へ、大地へ。


 魔力を吸って成長する花が、この闘技場の結界で囲まれた範囲、総ての魔力を残らず吸い付くした。一瞬の事だった。

 視界がぐらついて、胃に何とも言えない気持ち悪さを感じる。肺に空気をいれなけらば、思考もままならない。

 その急な落差に思わず酔ってしまった。


 魔力差による酔い。魔力を感じることができる者が、魔力あるところから無いところに移ると起こる現象。これに似た現象として転移酔いがある。


 何とか、倒れそうな体を保ち、ハナサキへ視線を向ける。

 だが寸前には無数に空、大地に舞う花が咲き誇っていた。


 目の前にプカプカと浮かぶ小さな花は繊細に組み上げられた立体魔法陣であった。

 これ、一つではなくすべてが。


 そして、その華華のフラワーガーデンの真ん中に、一つの大きくどの花よりも太陽の日を生かして人口なのに大自然にすら劣らないいや私が大自然とばかり、華々しく美しい人口美を放つ魔法の花。


 意識をそれに奪われ、目の前にどこ迄も美しく凛とした態度で不敵な笑みを浮かべたハナサキがいた。

 それに背筋をゾワリとさせる。

明日も投稿するよ。

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