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のんびり屋の精霊使い  作者: 夢見羊
終わりと始まりの体魔全力祭
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勝利を掴みて

 控え室。

 部屋の中は、椅子や机だけな簡素で、天井に付けれられた魔宝石によって照らされる。光量が少ないのか、部屋の隅は暗くジメジメとした雰囲気が気持ちを落ち着かせる。

 熱が籠った声が風音を掻け消し響く。


「もうすぐ始まるか」


 自分は気合いを入れるためにも準備運動をする。

 さて、フルカザキ先生とのガチガチ特訓の成果かで、無事に戦いの感覚が取り戻せた。他にも痛みに強く慣れたし、力の淀みや緩みなどの無駄も落とせた。

 それは魔法もで、魔力の使い方は奥深いし、取得が簡単な生活魔法の実用性も高ことも確認した。


 無理に攻撃魔法や防御魔法を取得するより、此方の方が良いだろうと判断である。それが吉とでるか、凶とでるかは始まるまで分からないが、切り札もちゃんとある。


 コンッコンッと叩かれるドア。


「ナガクラ選手。そろそろ、入口にお集まりください」


 告げれた言葉を聞いて、自分は準備運動を終わらせる。

 机に置いといた二対の剣を手に取って、自分は控え室を出る。


 声が響く。増幅させられた声が洞窟の反響のように暗がりの廊下を伝わり耳に届ける。

 歩き、一歩一歩と大きくなる歓声、入口にたどり着くと声は予想以上に大きく、プレッシャーのように重くのし掛かる。


 入口から戦う場を見る。

 土固められた地面には、一切の緑は存在はしない。観客席から一切の遮りは当たり前のようにない。

 三方に別れた入口には、自分を含めそれぞれハナサキ、イロカゼの二人。


 呼び掛け耳に届くと自分らは中央へ行きに睨み合うように集まった。


 今日は色々とあったが、心の奥底では楽しみでもあった。

 フルカザキ先生が特訓でくたくたの自分に言った言葉「丁度良いぐらいの実力が盛り上がりそうね」と。それはとても自分に興味を引かせた。

 自分は格上格下と戦うことは幾度もあれど、同程度の者と戦うことはない。だから、とても興味を引いたし、その後の図書館で会った二人と初めて名を名乗った時に、初めて本気で全力の勝ち負けの分からない戦い。


 まあ、それは制限があるなかでの話ではあるだろうけど。

 でも負けられない理由はまた別にある。だから、勝つ。


 長い紹介が終わり、二対の剣を構える。


 相手の二人も構え。


 始まりの合図を待つ。


『初めッ!』


 その声と共に観客達の声は轟いた。

 脳内に響く声に熱を与えられたが、頭にあることがよぎる。


 ここに三人がいて、今からぶつかり合うはずなのだけど。


 騎士科のイロカゼは見た目通りの近接戦闘でしょ、魔法科のハナサキも見た目通りの遠距離戦闘に、自分はどちらかというと中距離である。


 これって、一番、狙われるのでは?


 目の前に迫る、イロカゼは星剣の柄を既に握って鞘から抜き放とうしている。その注意しながら横目に捉えたハナサキは詠唱をしていて自分に視線が来ている。


 ヤバい。


 イロカゼとの一瞬に放たれた一閃を双剣で防御する。速さに特化しているからあまり重みを感じなく、止めたが。

 防がれたことは気にしないとばかりに、力を込められそのまま振り抜かれ。

 それに合わせるように後ろへと下がって距離を取る。


 追うように迫る聖剣。どんな腕力で、振り切った剣をまた直ぐに振るっているのか。


 未だ、何もしていないハナサキは既に詠唱も終わらせて狙うように薄い緑に色付いた風の矢が彼女の周りに二本……フェイクだな。


 堂々、魔法を発動して目立つようにある。普通、目立つように魔法を発動するか、自分なら目立たないように狙う。出来ない分けもないし、それが考えれないわけもない。

 つまり、フェイク。そして、風の矢が放たれる時に此方側がアクションを起こせば、あらかじめ仕掛けていたのが発動するのだろう。でも、これも見え透いているような……。


 思考をぶった斬られるように、聖剣が振るわれた。

 先は余裕がなかったが、双剣で真っ正面からの防御ではなく、力をいなし上手いこと力を逃がす。


 二度の攻防で分かったことは、イロカゼの一撃一撃は重くて早い。だけど、目で追い付けないほどでなく、重さに負けるほどではない。

 対処が可能な一撃ではある。ただ、それは全力でも本気でもない準備運動にして、様子見である。


 ならば、その内に倒せれば楽ではある。相手が甘ければの話。


 次々と繰り出される剣戟は、王国騎士式剣術の流派なのだろう。隙無く確実に一切の油断も偶然の産物による隙をも疑い安易にその選択を取らずにゆっくりとでも一つの疑念なく殺しきるための剣術。


 本当に粘着質で此方のフェイトや誘いに絶対に乗って来ない、それが決して十代に満たない少年だあろうが殺すと決めたら油断も隙もなく此方にあらゆる疑いの眼差しを向け、別に隙を絶対に突かない訳じゃないのがまたいやらしい。ただその精神力と集中力は類い希なる才に等しい。

 一番厄介なのは、持久戦が最初から組み込まれていることで、逃げる機会も少なく、実力以上の相手でも、精神力、集中力、持久力で戦えることである。別にこれらに特筆した型が技が術理があるわけでもない。だからといって劣っているわけでもない。出来るなら強い剣術である。


 とても、厄介。一回だけ、殺し合いをしたが、危うく死にかけた。

 彼の剣は荒々しく、少し強引であるから、正確にあっているかは分からないが。


 剣と剣のぶつかりに、火花が咲き、剣の軌跡が花を描くように、幾回も紡ぎ合う。

 段々と剣の振う速度が上がっていき、比例するように一撃の重みが増す。


 自分の剣から伝わる衝撃と重みが、剣の柄を握る手に甘い痺れ。このまま防御し続ければ、剣から手を放すのとになる。


 未だ、何も仕掛けて来ないハナサキを見ると、潰し合いの後に残った方に攻撃をする感じだろう。下手に射ち込めば、自分の元に来るからと射たずに、潰し合いで残った方と戦えるように、そうならなくても良いようにと準備は終えているはず。

 そして、なぜか。自分を狙うイロカゼ。


 勝つためにも、このままだと。確実に負ける。

 だから自分から行動を移さなくては。

 振るわれる一撃に合わせるように双剣で防ぐ。


「……ぐっ」


 一番重い一撃をなんとか、防ぎ。手を放すことなかった。

 今まで、押すことはなく、引いていた為に、力を込め、押し返す。


 一瞬の隙を付くように、右手に持つ双剣の一対は紫の剣身、迷い剣(ロスト)が斬り込む。

 だが、何らくと避けられ。

 予想通り。そのまま、左手に持つロストの相方、炎の剣(フレイム)に魔力を食わせ。


 刃を灼熱させ。振るわれる過程で赤の剣身が炎に包まれ燃える。

 迫る燃えた剣を防ぐイロカゼは、危機を感じたのか力で押すことはなく、あっさりと引く体勢に移った。


 押しきれば、あのまま不利な体勢で自分は攻防を続けることになっただろう。でも、それをやめてまで、自分との距離を取ったのは彼が王国騎士式の剣術使いだからか、それとも危機察知能力からか。はたまた、別の何かか。

 分からないが、あのまま行けば自分はあらかじめに仕込んでいた身体強化と熱耐性強化で、無理矢理ではあるが高温の炎を生み出して、イロカゼを燃やしていただろう。これはただの炎を生み出す魔剣ではない。


 燃やす前に、ピタリと手首に付けられた魔具。一回限りではあるが致命的な攻撃を防ぐ防御結界が発動するだろうけど。それが発動すると負けとなる。

 発動条件が肉体に死に至るダメージか、衝撃である。あくまで発動の判定がそれであるから、毒や洗脳、呪いの類は禁止されている。発動は出来るが負けとなるし処罰が下される。


 その為、右手に持つ魔剣のロストの効果を使えなかったりする。あれは洗脳に近い呪いを持つ魔剣である。

 呪いのレジストが出来ないと自分の勝利は確定と言って良いほどに決まる。


 さて、次は此方から攻撃をしようか。


 踊るように華麗な剣戟の舞い。を繰り出すが上手く防ぎ、避けることもあれど引くことはなく、反らし弾き受け止める。

 自分はその中、イロカゼに話し掛ける。


「なあ、イロカゼ」


 焦りも緩みも力みもなく、冷静に自分の舞いを対処していく。いつものような笑顔はなく、でも変わらない調子で。


「どうした、ナガクラ。悪巧みする子供のような笑みを浮かべ」


 そんな顔しているか。確かにちょっとした驚きは与えてやろうとしているが、悪巧みってほどではない。

 高みの見物をしているハナサキに近接戦闘か中距離戦闘に入れたい。そうすると勝ち目が見えてくる。


「少しだけ、驚かせようかなと」


 視線をイロカゼからハナサキへ向ける。それに同じ様に悪い笑みを浮かべて。


「……それで、俺に何をしてほしんだ?」


「いや、深く考えずに戦ってくれればいいよ」


 それに、不振がるような顔をする。

 あえて自分のリズムを崩すように無駄な力を込めて、不利なるように仕向ける。

 すると幾回の攻防の末、右手の魔剣ロストが弾かれてハナサキの方向に飛ばされる。

 落ち着きを保ちながら、左手の魔剣フレイムを右手に持ち変える。


「ハッ!」


 腹から出した声と共に、鋭い一撃は、容赦なく真上に高く弾かれた。

 イロカゼは何がしたいのかいまいち理解出来ていないが、最後の最後まで油断なく、一撃をーー


 ニヤリとした笑みを自分は浮かべただろう。


 作戦通りというわけではないが、自分の望んだ展開に持っていけそうだ。

 強引で無理矢理、運だよりだもあっただろう。

 でも、成功したならこっちのものだ。


 瞬間の爆発的速度で、イロカゼに接近し空いた手で、驚きの顔を浮かべているが、襟元を掴み取り、振るわれる手に余った手を合わせて。


「自分にばっかり攻撃しやがって、お前を投げてやるよーーおっも」


 あり得んぐらいに重いイロカゼが振るっていた剣の力を利用してハナサキの方にぶん投げる。

 ハナサキは冷静な顔をしていたが、投げ飛ばされたイロカゼが自分の方向に飛んで来ていることに思考が止まっている。


 見たか、これをやるために切り札を無駄に切ってしまったが、後悔はない。


 イロカゼ、普通の強化魔法の全力で掛けても、重かったぞ。見た目に反して。


 あまり余裕もないし、未だ空中にいるイロカゼと今だけ呆けてるハナサキを見て、自分に回復魔法を掛けつつ、動く。


 先の瞬間の爆発的加速のせいで全身の筋肉が切れた。あれが切り札の一つでもある。


 フルカザキ先生の強化魔法を真似した、失敗作の強化魔法。一秒にも満たない時間の中で通常の強化魔法の十倍の効果を発揮する。でも、発動時間は一秒も保たない、使えば使うほど肉体に対するダメージが大きい、一秒もない時間で動くことより意識すら出来ない。

 その問題を全く解決出来てはいないが、フルカザキ先生との特訓でなんとか無理矢理にでも動けるようになった。肉体は耐えきれず自滅するが。


 真上から落ちてくる魔剣フレイムを掴み、ハナサキの方向に向かう。


 既に強化は済ませてあるのか、距離を取るのが早い。でも風の矢は自分とイロカゼの方に放たれた。

 走り抜け、突き刺さっていた魔剣ロストを手に取り風の矢を叩き切る。


 イロカゼが飛ばされた勢いを利用して攻撃に移す。それに逃げれないと思ったのか、長めのナイフ位の杖を構えて、魔法を唱えた。

 何重層にも重ねられた魔法陣が結界を生み防御結界を作り、防ぐ。

 その攻防で、自分は二人のテリトリーに入るには十分な時間だった。


 さあ、遠距離のハナサキを交えた、本気で全力な戦いが始まる。

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