種目
鬼から逃げるために全力で森を走り抜け、追い付かれていないことを確認すると、酷く荒れた呼吸を落ち着かせる為に木を背に深呼吸をする。
手を膝につけて息を整えるのに必死になるが、膝が笑ってしまう。
周りに意識を向けながら鬼が来ていないことを確認すると休憩とばかりに木の根元に座った。
同じく、未だ整ってない呼吸のシロミヤさんと二人で一緒にここまで逃げて来たのだが、他の皆が逃げきれているか心配である。
特にナガクラくんは私達に一言、『今から一つ、この鬼ごっこの対処法を試してくるから、逃げな皆』と残して鬼に立ち向かっていった。物凄い速さで一瞬で距離を殺してきた先生を投げ飛ばしたのが目の端で見えて、そこから全力疾走で逃げたのだ。
この鬼ごっこにはナガクラくん曰く、何ならかの対処法を考えないといけないとのこと。
なぜ、そんなことを考えなければいけないのか最初は分からなかったが、あの鬼を見れば一目瞭然。実力さが離れ過ぎている。
多分また見つかったら逃げきるのは難しいだろう。体力的に運動能力的にも、強化魔法を掛けたとしても今の私では、無理だろう。
これからどうするか考えるためにシロミヤさんに話しかける。
「シロミヤさん、落ち着いた?」
声に反応すると此方にまだ息が荒いけど、笑顔を向ける。
「うん、久々に本気で走った」
「鬼が速いから、でもナガクラくん大丈夫かな」
「大丈夫と思うよ。何をやるかは分からないけど。格上相手でも戦えるからね……それより、これからどうしようね」
少し真剣な顔から直ぐにいつもの笑顔になる。 シロミヤさんの言葉に少しだけ違和感を覚える。ナガクラくんへの信頼を抱いている様子。確かに私も、誘拐された時に見た格上相手の戦いを見たから分かる信頼があるけど。
どうしてか、シロミヤさんは私よりも厚い信頼を強く抱いて信じているようにも思えた。
でも、それを聞くにはタイミングを逃してしまい、聞くには聞けず。どうしようか、悩んでいると、シロミヤさんが返しが無かったから心配してくる。
「カザクラさん、どうしたの?」
「……えっ、うん、大丈夫だよ。それと、そうだね。鬼が来たら私の光魔法で閃光を上げて目を眩ませて、シロミヤさんの精霊魔法で幻影を作り出して隠れて行くのを待つのがベストかな? ……その時は勿論、魔力を断って隠れるよ」
「うん、それでいいね! じゃ鬼が見つかって逃げきれなかったら、それで行こう。じゃあ、もう少し休んでから歩こう」
鬼への対処法が決まったことで、もう少し休むことにした。
木々の枝葉を揺らして、頬を優しく撫でる風が吹く。
涼しい風、静かな間に流れる。どちらも話さず、体力の回復に勤める。
でも、一つだけ気になることが生まれていた。そのことを聞いてしまうか、クヨクヨと考え込んでしまう。一、二分と悩むが、思い切って聞いてしまうことにした。
「ねぇ、シロミヤさん」
「うん、なに?」と柔らかな笑みを浮かべ返す。
私はこの質問を本当にして良いのか、悩んだ。でも知りたい、友達のことを。だから、聞いてしまった。
「シロミヤさんって、ナガクラくんと昔から知り合いなの?」
私の質問に柔らかな笑みは固まった。一度足りとも、そんなことはなかった。多分、触れてはならない場所に触れてしまったのだろう。だから、
「――いや、やっぱりさっきのは無し。止めるね。……皆、大丈夫かな、多分タツガワくん一人だけに生っちゃったし、どう思うシロミヤさん」
私は咄嗟に、このこと事態を誤魔化すかのように無かったことにする。その急変ぶりにシロミヤさんは多少驚いた様子であるが、話に乗ってくれた。
「そうだね。タツガワくんなら意外とのろりくらりとしているかもね……そろそろガサクラちゃん休憩を終わろう」
「う、うん」
何とか話題を変えれたかと安心すると。シロミヤさんは私に向かって話す。
「カザクラさん。先の質問ね」
私はその言葉にビクッと肩を揺らす。その隙に顔を耳元まで近づけ。
「カザクラさんの皆に隠していることを話してくれたら教えて上げる」
「!?」
目を白黒させる私を豊かな笑みで、見つめ。
「私の眼は色々見えるんだ。その奥深くまで覗けなかったけど、その体を蝕むくろ――」
その言葉を最後まで聞くことなく。甲高い声が辺りに響く。
「止めて!」
誰にも知らないようにしてきた。誰にも話さないようにしてきた。バレないように、分からないように。でも、それは全て相方にバレて友達にバレた。
言えない、こんな体に成っていることを口が避けても言えない。
体が段々鈍くなっていることなんて絶対に言えるわけがない。
だから拒絶してしまった。友達を。今日は楽しむ為に頑張ろうとしたのに、これでは全てが台無し――
何を思ったか。
抱き締められた。
優しく回された腕、慈愛ある笑みを浮かべ、とても暖かく。
心の隙間を埋めるように、いや埋められていくように。孤独の気持ちが埋めていた所が暖かな慈愛に変わる。
ダメダ、コノアタタカサハダメダ。
全てが駄目に成ってしまう。これまで抱いた気持ちも覚悟も駄目に変わってしまう。
しにぃ――
私はその言葉だけは思うこと考えることも一切禁止した。唯一の本当の願望。
抱き締められ、言われた言葉は聞いては私は聞けなかった。
「大丈夫、救いわある。望み歩き続ける限り。救いは何処にでもあり続けるから、諦めないで、この世界にはナガクラくん見たいのが居るんだから。それに私達も力を貸すからね」
既に諦めた私を励ます言葉はとても私には聞けれなかった。
だからこそ、私は誰も傷つけないと決意を抱く。
「もう、大丈夫だから、まだ競技中だから、楽しもうよ」
心の底から笑顔を向けて、シロミヤさんにいうと心配そうな顔であるが笑顔を向けて頷いてくれた。
私は少し解放された気持ちは小さな勇気に満ちていた。
大丈夫。もう、迷わない。
私達はもう少し経ってからこの場を離れた。
大変遅れました。
次回更新は明日です。




