テストがやって来た3
体操服に着替えて、グラウンドに集まると二つ黒いドームが不自然にあった。その結界と思わしき、ドームの中は黒い壁で光が遮られ見えない。
ドームの近くにフルカザキ先生がいたので先生の元に皆、集まった。
特に説明があるわけでもなく、いつものように出席確認をしてから授業が始め、いつものように準備運動を済ませてから本日の内容に話が移った。
授業内容は皆が分かっているように実力テストである。
「それではテスト内容を確認しますので、ちゃんと聞くように」
皆に視線を向けて、真面目に話を聞いているか視線を走らせて、少しの話し声も静まらせ、続きを話し出す。
「今回も、前回同様に結界内で悪魔と戦ってもらいます。この結界は、中からも外からも物理的に魔法的にも遮断されているから、安心して全力出しても被害はでることはないので全力でやるように。それと個人の、現在の実力や考え方を測るので、中を見ることが出来ないようにしています。……今いったなかで質問があれば、答えます」
と皆に視線を向ける。それに手を挙げたのがヒマワリくんである。
「先生、テストが始まるまで、練習とかはして良いのですか? これだと現在の実力を測るに支障があると思うのですが……」
その質問に間を開けずに、確りと目を捉えて答えた。
「良いですよ。準備運動は大切ですし、その些細な時間で人の実力が上がることは殆んどないので、今の最高状態での実力をちゃんと出したいなら、準備運動はしないといけませんから」
次の質問はと探すが手を挙げる者はいないようなので、話し出す。
「それでは、次は点数配分について、倒すことが出来たら満点合格。致命傷を与えることできても合格。それ以外では、魔法や魔力操作の熟練度、身体能力や考え方からの四つで五段階評価で決めます。その中で、三以上で合格。二点以下で不合格とします。
制限時間は十分、致命傷を負わせた場合は合格なので、結界の入り口を開きますので出てきて来て構いません」
ということは、最後までやりたいならやってもいいよ、ということか。
ほどよい緊張感があるのか、クラスの大半が静かである。大体の人が、これで魔物との戦いが二回目ので仕方ない。
この緊張を乗り越えれば、いらない緊張感を抱く必要がなくなる。
「それでは、最初の二人は呼びますので来てください。と言うわけで質問がないなら直ぐに始めます…………無いようなので、ナガクラくんとナナキくん。私の元に来てください」
呼ばれるまま従い、最初の人として向かう。この順番はあれかな、前の成績がよかったほうからやるのかな。と思いながら先生の元に向かう。
先生の近くで話を聞いていたのだろうナナキくんは先にいた。
後から来たので、ナナキくんと目が合ったので、軽く会釈をして先生の元に着く。
明るい笑顔を向けて、自分の会釈を返しいた。
自分があまり感じたことがない雰囲気を纏う不思議な男。名前は確か、ナナキ・アガタ。
基本的には、気さくで話しやすいが、人を観察する趣向があるのか色んな人をよく見ている。
そんな彼をチラッとみて、フルカザキ先生の話を聞く。
「それじゃ、二人ともルールは覚えているはね」
「はい」
「分かってます」
返信を返すと、よろしいと言った感じで話を進めていく。
「では、武器が必要ならここで選んで、ドームの入り口を開きますので入って。合図がされたら試験開始ですから、それまで攻撃はしないように、分かりましたか」
それに返事を返して、武器を選ぶ。今回は、双剣を使う。どうしても、他の武器はしっくりこないから双剣にした。
武器を選ぶと先生の近くに行く。
「それでは、ドームの中に入ってよし」
言われて、結界の境目に触れる。前の結界の感触はなんか粘っこいイメージがあったが抵抗感はなくスッと入れた。
中は明るかった。朝と変わらない明るさ。
目の前には、敵がいた。下位の悪魔。知性を持たない人を殺すだけの生命。
餓えた獣は、うねり声をあげ。揺らぐ視線が自分一人は統一する。
殺意がドバトバと溢れ、黒さが目立ち、ない知性がよりなくなり、ただ生命の力を発揮する。この試験では、この状況はベストコンディションというべき状態の悪魔。
人の姿は取ってはいるが、背にはギザギザの飛べるのかと疑問に思う翼と捻り曲がった二本の角を生す。黒々とした服に見える闇と灰色に近い紫の肌。人の形をしているが、人は違うと抱かせる嫌悪感を放つ。それが悪魔が持つ特性の一つ。
観察をしていると自分に声が掛かる。その女性の声は、フルカザキ先生でる。そろそろ始まるのだろうと思っていたら。
『――ナガクラくんは聖法術は禁止だから、理由は分かると思うけど』
理由はまあ分かる。これはあくまで魔法や肉体を測るのであって、聖法術をやられると測れなくなるからだろう。結果は同じであろうと何のためにこれをやっているかは違う。
元々そのつもりだったので、その分かっていますよ的なこを返すと試合開始の合図が響く。
「開始ッ!」
その声により、殆んどの制限が解かれた悪魔。
純粋な殺意が一直線に人に、彼の魔法師に燃えて燃えての憎しみが、ただ自分に、この世界にただ一人の人に魔法使いに注がれる。
獣は荒ぶりながらも駆け抜ける。それはすでに人型としての二足歩行ではなく、足で大地を蹴り、両手で前々と体を押し込む。
いつ、倒れてもおかしくない駆け抜け方なのに自分へと向かって確かにやって来る。悪魔と自分の距離の差は僅かとなって秒に消えた。
黒々と色づいた霧状の可視化した気は天へと登って消えていくものの、放出する大半は体に纏わりついている。
それ事態は誰もが持つ気であるが、正気と交じり通常時は均衡を保っている。それが崩れるくらいならば、人生幾度もある。だが、どちらかが一方だけが圧倒的に勝り、その状態が通常となるそれは生命として異端に等しい。
それが、悪魔。自然の摂理から外れ、自然の摂理より生まれし命。ただそれは人にも言えること、例えば、聖人……。
殺意の獣は人を魔法使いを果実に殺すために、狂暴さを隠していた爪、それに有した魔法が発せられている。黒く黒くと灰色の爪が染まっていく。
その爪、上から振り下ろされ。それを後ろに一歩下がって避ける。
回避されても勢いは変わらず追撃がやってくる。素早くきた攻撃は急所を正確的に狙った横払い、それに半身を後ろに倒し避ける。目先を通りすぎていく爪に危なげを感じつつも冷静に。
――ふと、思い出す…………最初の悪魔との戦いを。
あの時は、まだ、精霊もいなく、数々の技や経験もなく、道具すら持ってはいなかった。
使えたのは、気術と超能力だけ。
殺意を純粋に人に向け、殺す、その存在に畏怖を抱き、臆していた幼きころ。
それでも、小さな命の灯火を消そうとしていた時には、自然と悪魔に向かって走っていた。硬度を自由自在に変える力と力の流れを掴み利用する術でその悪魔とよく善戦したといえる。
切り裂かれようと、噛みつかれようと、骨がおれ肉が飛び出して内臓も傷つけていようと敗けられなかった。
想いは燃え上がっても勝てず、血だらけの肉塊と成り果て。本当の負けを知った。だけど、それだけど、その魂は未だ燃えていた。だから……壊れ一部が無くなろうと立ち向かった。
ゆえに、僅かな希望を叶えた。であったとしても、あの時の悔しさは今でもはっきりと思い出せる。
そんな遠い日の記憶を置き去りにして、両手に持っていた二対の剣、その右手の剣で、がら空きの胴を突く。
刃は通らず、傷つけることも出来なかった。
頑丈な肉体の半分以上がエーテル体であるから、物理的な攻撃はあまり意味はなく。痛みはあったようで、後ろに下がったが先より威勢よく、突っ込んでくる。
それに対して自分は、内の気を正した気を纏わせて、先の攻撃で効かないと思って油断をしている獣に、二撃目の斬撃を食らわす。
先程の突きと違ってスッと入って血肉をスッパァと裂く。
「ぐぁあああ!!!」
激痛が全身を走り抜けたのだろう痛みの叫び声を鳴いた。
一旦距離を置いて、準備をする。
確かめのために自分の得意な攻撃が一先ず効くことを確認してから、次は魔法攻撃を試す。
本当は、精神階層を上げたいのだが、その場合は魔法器官をフル活動させる必要がある。それは先生によって禁止されている。
理由は至って簡単。不完全な魔法器官をフル活動させると無理をして不足している部分を肉体が補い、それを補うために魔法器官がという負の循環が起こり。壊れる可能性がある。それは、治りかけの傷に塩を塗るような行為であるとのこと。
だから今の自分に出来ることを試す。魔法器官を八割ぐらい活動させ、魔力を纏わせ剣の硬度を上げ、聖なる力も付与させる。
魔力を体内で循環させ、身体強化を施す。
悪魔の挙動の一つ一つを見逃さず、捉え、刃を向ける。
獣は自分が攻撃をしてこないことを隙に、傷つけた体は再生して治した様子。
手始めとして、簡易攻撃魔法を発動させる。
「火よ、飛び出し、燃え、燃え盛れ」
剣を持ったままの右手を悪魔に向けて、イメージを言葉として発することで、魔法の発動を鍵とした。
手から放たれた火。
悪魔に向かって飛んでいき。
弱い火が徐々に燃え、燃えて、燃え盛って、獣の元に着く頃には火炎と成って燃やす。
ただの生物ならば死免れないが、相手は魔物であり悪魔と呼ばれる精霊に近い存在。魔法には高い耐性があり、さほど効いていない。
それはあくまで、次の攻撃を仕掛けるための魔法でしかない。
悪魔に接近した自分は、素早く両腕を振るう。
二対の刃が一瞬の交差して切らんがために刃が立ち、その体へと切り込みをいれた。
だがさっきの感触とは違って、途中で感触が空を切ったものであった。
剣の刃を見ると、魔力から感じる力は弱く、甘かったことを理解する。
基本的にエーテル体とは、基本的なエネルギー物質で構成されているために、手や刃で、触ったり、切れはする、ただそれは触っただけ、切っただけに過ぎない。
傷つけるには魔力や悪魔が肉体情報として書き込んでいる属性の反対を付与した攻撃で乱したりや魔刃といった魔力のコーティングで肉体情報を傷つけたりとかである。
その点としては自分はできていた。ただ魔刃や属性の付与が甘かったから失敗した。
次はと、双剣を構えて、目を瞑る。
意識を魔力に回す。剣の先まで魔力を纏わせ聖属性を付与する。それから剣に纏わせた魔力を刃に添うように鋭く歪みなく整える。
慌てだし足音が聞こえてくる。だが剣身に纏う魔力が分厚かったり薄かったり、使えたものではない。ゆえに、最初から張り直す。
獣の息づかいが聞こえてくる。魔力の偏りは均一になったが、鋭さが足りない。ゆえに集中し研ぐ。
音を聞かなくても肌身に伝わる死。目を開け双剣を見る。鋭さをえた魔の刃は向かってくる敵に、対して怪しい光沢を返した。
獣は生物としての力を搾り出しかのような勢いで魔法と爪の攻撃が放たれる。爪が脳を突き刺すかのように上から下へと。それを中心とした黒い気と魔力の黒い帯が背中から飛び出た。
無数の帯が円を描くように丸となって伸び、自分を包むように逃げ道を塞がれていく。
だが帯は気にせず、前のことにだけ集中する。
爪の攻撃は深くしゃがみながら進み、懐に入る。空を突いた爪、伸びきった腕の肘あたりを力を込め丁寧に優しく振るい、切り落として封じる。
最後の一撃を喰らわすために残った腕を振るう、悪魔は最後の足掻きに等しい残った腕で防御の構えをとるが、それごと叩き切るつもりで振り下ろす。
瞬間――獣は吼えた。
耳をつけ抜ける音と共に、獣の背から伸びていた黒い帯が消えた。
一瞬で暗い所から明るい所になり、眩しさに瞼を閉じてしまいそうになり、たった一秒以下の瞬き。
だが突如消えていた黒い帯が瞬きの間にいつの間にか、全身から無数に黒い帯が出ていた、余さず指先から足先まで、それは既に悪魔ですらない何かである。
自分は止まれない。だから何かが起こるまえにキリを着ける。
その無数の帯はウニョウニョと動き、伸びて、全身に巻き付き、帯を纏った。
それは悪魔ではなく、本当に獣であった。
その変化による結果は未知数で、下位の悪魔に固有魔法が発現するなどの話も聞いたことがないし、先週の金曜日の生態雑学での話でもそんな話はしていなかったはず。
つまり、この悪魔は"何か"がおかしい。
……だからといって今の自分は、揺るぎなく悪魔を切り裂く。
魔法による強靭な帯の衣は、僅かな抵抗が刃を伝わってきた、だが魔力の編みが甘かったか、それとも硬度の高さで負けたか、衣を切り裂き肉がパカッと開いた。
悪魔や精霊の肉体情報は精神体と情報の格である。その精神体は心そのものであり、情報の核という魂に近い最初の情報体。
それに深い傷を負わせて、情報の格を壊すと倒すことができる。
そしてこの攻撃はそれに値する。
得意魔法の硬軟変化を魔刃コーティングした双剣に掛けて硬くして、切り裂き肉を開いた時に精霊魔法の力変質で魔力を炎で内から燃やす。
「グッ……ぉおおおお!!!」
痛みと苦しみの鳴き声が悲鳴となって響き渡った。
その出来事の数々を一瞬の時間に起きて、それを捉えるただけで疲れが溜まる。その頭で悪魔の終わりを見届ける。
悪魔は内から燃えて、精神体と情報の格に再生出来ないレベルの傷を負わせた。
もがき、足掻き、苦しみの声を唸らせるがこちらを見る瞳には地獄のような痛みすらどうでもいいかのように未だ消えることさえない殺意が向く。
その哀れな魂にせめてもの想いを――。
「その魂に安らぎを、死後は誰にも平等ゆえに」
苦しみに捕らわれて、それでも人に対して恨みを忘れない。人の業とは深く深淵の闇。
であったとしても、その心で下位の悪魔が固有魔法を発現させるものか、中位ならば話は変わるが。それとも戦いの中で上がった? それはないか、強さが下位と中位では段違いに変わるから。
いつの間にか開いていた結界の入り口に、視線を向けると怨嗟は聞こえなく、後ろからドサっと何かが崩れた音に振り返る。
「げぇ……これは、どうなってんだ?」
思わず出た心の声は、誰もが見ればそんな反応するだろう。
体が崩れ消えていく獣。ただ黒い気が出ている。それは最初から僅かに漏れていた嫌な気が際ぎわなくドバドバドバドバと、酒の入った樽が倒れた拍子に一部が破損して酒が溢れ出たように。本当にヤバい感じ。
止めなくては、何か、本当に何か、恐ろしい何かが出てくる可能性がある。
これは完全に自分の仕事なので、アイデアメモに接続して、視覚情報と気からの情報から体感情報から空間を把握。
微少の魔力を使い、アイデアメモに保存した魔法陣を読み取って、広がる感覚に規定した魔法陣を描く。描くための絵の具は魔力を利用した魔力光で光の線が浮かび上がらせ地上平面に空間概念に刻む。
回転と不変を意味する二重なる円、その円内に星を意味する五芒星、変化の川を意味させた時間の記号として十二の数を均等に均一に二重円の外円と内円の間に書き、情報として二元論に正義と悪の摂理を説く。
そんな魔法陣が駆動する。魔法を起動させ、聖法術を主体とした浄化を行う。
祝詞は教会にある規定文を唱える。
「清め、病を断つ。浄め、災を断つ。二つ成せば、世は無垢と化す。
混ぜず整頓し、汚さず洗い、不変なく変化し、回り回りの流川、最果てに救いなき世界となって純化する――ここに乱れ汚れ変わらないその悪を浄化する」
魔法陣が起動する。白い光を放ち、循環する。世界のように、流れ流れ、悪は整頓され、汚れは落ち、変わっていく。
気は白く白くなって、黒の混沌は徐々に薄まって、時の中、獣から溢れていた黒い気は消えた。残るは気分爽快な空気と化した純化した世界。
それゆえにこの結界内は少し歪となった。ただ、この世界にはあるが外れた世界であるから気にすることはないだろう。
まあ、多分、先生も見ていただろうし、悪魔のことは深く考えるのはやめよう。後は必要なら先生から話が来るだろう。
最後になんかよくわからないことになってビックリしたが、無事に試験は終わった。
体に張った緊張をほぐすと疲れがどっと出てだるけを背負いながら結界を出る。
出ると、日の光が暖かく、心地よい風が肌を撫でてくる。それに疲れはほんのりと癒され、友達の所に向かう。
すると横目にある者が映る。グループで話しているナナキくんであった。既に終わっているようで、友達との話をしている。自分も早い方だと思うのだが、やっぱり見た目ではわからないものだ強さとは。
そんな笑顔を向けて話している姿を見て、友達の方へと視線を移す。
ただ何処からか見られている視線を感じながら、あまり関わりたくないと平然を装う。




