何時もと違うが平凡の一日 2
あれからそこそこ長い時間が過ぎて、入学式を終えた。
入学式の進行をしていた女性職員が『明日から学校が始まりますので、そう言う諸々のことは寮の部屋にある机に置いてある予定表に書いてあるので、それを見て学校に来てください』と入学式を終わってから新入生全員に伝えられて帰った。
あとは自由行動をして良いらしいが寮には門限があるため、夕陽が完全に落ちるまでに学園内にいることなのだと。
特に自分はやることもないし、昨日からの疲れが溜まっているのか、早く寮に戻って寝たいけど荷物の荷解きをしないといけない。
後日、町を周りながら必要品を買え揃えるとして、ひとまず寮に戻ることにする。
行動は決まった為に人混みから抜け、自分の寮に向かい歩く。
確かに寮を目指して歩いていたはずなのに、いつの間にか見知らぬ場所に出ていた。
「参ったな、もしかして迷ってるか」
ぼやきを溢す。何時もの事だが、学園に来てそうそう迷子になってしまった。ただ学校きただけで治るわけもないのだけど。
ちゃんと寮に向かって歩いていた、それは確かである。人混みの流れに任せて歩けば、寮に着くだろうと思っていたが段々と寮から離れていくために途中で抜け出して、寮を目指していた。それだけで道を間違えるほどバカではない。
でも道に迷ったのは確かなので、周りを見て目印になりそうなものを見つけて、人が居そうな場所に向かい道を聞く。それとも来た道を戻るかと迷子上級者としての経験から導き出される答えは――
「眠たいし、来た道を戻るかな」
そうして自分は180度回転して、先まで歩いていた道を戻る。
欲求に忠実に従うべし、そっちの方が結果的に早く帰れ場合が多い、前者のだと時間が掛かるし単純に面倒臭いからだ。
自分は整備されている道を歩く。道の地面は強く埋め固めてあるために歩きやすく、整備された道の幅は赤いレンガで決められているから、レンガの外は木々が生えており、自然といった感じである。
道なりに歩いていると、噴水が遠目からでも見える。そのまま近くまで歩いていく。
そこは赤いレンガの地面で噴水に、ベンチといった物があり休憩には最適な場所である。言わずもがな公園である。
ただここで一つおかしなことがある。最初に来たときはなかったはず。
「おかしいな。最初来た時はこんなの無かったはず…………デイスタアブに迷わされたか」
有りもしないことを考えてみるがさすがにないと頭から消す。
しかし会館からの道には公園がなかったはずだし、いったい此処はどこなのか。学園内の外か……校舎らしきものが見えるから多分違う。入る時に見た学園を囲んでいるだろう壁を越えた覚えはないし。学園内ではあるのだろう。
そう思いもう一度、引き返そうと振り返る時に草木の向こうから叫び声らしき音が聞こえてくる。
「悲鳴? あっちからか聞こえたが…………」
いやな予感が脳裏に走る。その予感は幾度も覚えがあり、行けば確実に悲しみがあると告げてくる。
でも、無視しをすれば――取り返しがつかない。
ただ此処でいつまでも立ち止まっている暇はない、無理にやりにその考えを無視して行くことに決める。
「行くか……」
悲鳴が聞こえた方向に向かって、走る。
悲鳴が起きた場所からはそんな遠くではないはず、そう思い木々の枝を避けながら進む。何回か当たってしまい折れてしまったのは許して欲しい。
草木を抜けた先は開けている。それが分かると見えた。
――女子生徒と大きな猫がいた。
円上に開けた先の真ん中で女子生徒は座り込んでいる。たぶん同じ生徒だろう。
女子生徒の目先には大きな猫は普通のより大きくて、今まで感じたことがない魔力を感じさせるほど。それだけ魔力を保持しているのだろう。
初めて見るが、あれが契約獣なのだろう。だが普通の生物ではない、魔物の一種であることが用意に分かる。
ふんわりとモフモフとした毛の色合いは薄茶色と白が入り交じって、色合いは普通の猫と差異はない。大きさは普通の三倍位であろうか、ただそれだけなら良い、魔力の量が自分を遥かに越えていていることは容易に分かり、自分では勝てないレベル危険度。それに喋り声が聞こえてくるから、知能が高い魔物らしい。
先の悲鳴は気のせいか、契約獣が生徒を襲うなどないだろ。もしそんなことがあったら、先生が何らかしらしていることだろう。
契約獣なら、襲うなどはないし。
たぶん悲鳴は気のせいだろう。それにホッとして寮に戻るために引き戻す……丁度迷っているから、道でも聞いて行くべきか。
そうして女子生徒の元に向かうことにする。
それに気づいたのかこちらを振り向き、猫は元々気づいていたのかチラッと視線をずらしてすぐに女子生徒の方に戻し、座った状態から立ち上がり別れの言葉を残す。
『君は嫌うのかも知れないが解決をしたいなら、手を取ることをオススメするよ。次会うときは君が君で要ることに期待しとくね……』
何か大事な話をしていたのか、そういい猫は歩きだし、尻尾をゆらっと揺らした。それは別れの別れの言葉を言うように。
女子生徒は自分の手を見て、こちらを向いた。
こちらを見る赤というよりオレンジの瞳に自分が映り、長い髪は色鮮やかで秋の紅葉であるかのように綺麗に色づいている。そのイメージされる雰囲気とは違って、落ち着いていたものをとくに感じる。
自分は少し申し訳なくなる気持ちになる。大事な話をしていたみたいだし、聞かれたくないことかも知れないことなので彼女に近づいて素直に謝る。
「ごめんね。大事な話を邪魔しちゃたかな」
謝るも彼女は確かにこちらを見ているが瞳に映る自分は消えていた。それに先ほどまで思いは高熱の上に垂れた水滴のように忘れ消えてしまった。
「いいえ、気にしないでください」
少し冷たさが籠った声に平坦な言葉。こちらを見ているはずなのに見てない瞳。来る前に感じた悲しみ。
忘れたくも忘れてはいけない思い出が、体の芯という芯が痺れ。重なる思い出の想いは次の言葉をすらりと言ってしまう。
「何か困っているならーー」
ただ、その言葉は彼女の深層に深く無造作に踏みいるにひとしいことだった。
「気にしないで!」
その荒げた声は、拒絶を強く示し、冷えて冷めきった瞳はこちらの体温を一瞬だが奪った。その為に熱を取り戻した体は冷や汗をかいた。
久し振りに冷や汗というのをかいた。
関わらないでということは強く感じた、こちらも深く突っ込むとこちらが怪我をするから。でも……。
まあいいか、自分には関係ないし、道を聞くべきか。
「ごめん…………この後に言うのおかしいかも知れないが道を聞きたいのですが、よろしいかなぁ?」
「ええ」と了承してくれたので、道を聞くことにする。
「自分、ちょっとした迷子でね。寮の道が分からなくて、道を教えてくれるとありがたいかな」
「道? ……まず公園に戻って、噴水の上にある水の妖精が指差す方に向かって、その道は二又道の一つで、もう一つの方です。それで開会に行って、会館の入り口の前にある階段を降りて、右に向きそのまま歩けば寮が見えるはず。なぜ迷子になったか分からないけどこれでいいですか」
案外、素直に教えてくれた。自分に関わらなければ、別にいいのだろう。
「ありがとう。……昔からひどい方向音痴でね、何故か簡単な道でも迷子になるだよね。流石に一本道ではならないけど」
こればかりは生まれつきだし、治せないだよね。本当に不思議で仕方ない、悪魔や魔物に憑かれたわけでもないのに、どうしてだろ。
「本当にありがとう……」
そのまま自分が来た道を戻ろうと振り返る。ただ、少しだけ心残りがあるのか歩みが遅れた。
自分は、歯がゆい思いをするぐらいならと彼女へと振り向き。
「…………何かあったら手伝うよ……じゃあね」
お礼をして、彼女の説明どうりに従い来た道を戻る。
最後の言葉を聞いた彼女が少し困惑していたが、その後の姿は見えなかったが何かのあるのか直ぐ様に。
「結構です!」
強く言い放った言葉は聞こえたが、自分は迷わず帰れるかで頭が支配されていたので、返事を返すことはできなかった。




