大事な繋がり3
私は怒りに満ちていた。
生徒の前にださないようにとして心掛けていたが漏れていたようで、鳥がざわめき飛び去って行った。
こんなで生徒の前に姿を出せば、怖がられてしまう。抑えなくてはと深呼吸をしながら高速でナガクラくんの所に向かって走る。
でもこんな怒りを抱いたのは何時ぶりか。思い出すだけで腹立たしい。
表に怒りを出さないようにすると力の入れ具合が変わって地面が砕ける。
その高速の中、数十メートル先にカザクラさんが見えた。
そのまま、カザクラさんの元に近づく、ひどい姿になっていた。
血と泥で汚れた服、所々が破れていて白い肌が見える。
見た目には擦り傷や切り傷などの怪我はあるけど、大きい怪我はない。それはあくまで外部は、内部が大分酷いことになっているのは私にとっては見ただけで分かる。
痛み表に出さないように走っている姿、普通の少女が耐えれるような痛みではないはず。それを耐えている、孤独を彷彿とさせる。
私は近づくと同時に名前を呼んで呼び止める。
「カザクラさん! 止まってください! 貴方の担任のフルカザキです」
聞こえるように大きく声を出すと、カザクラさんに聞こえたようで、立ち止まって此方を振り向く。
彼女が止まったことで、距離は一瞬で縮まる。加速しすぎ、止まるのに地面を抉り土埃を立て彼女の目の前に、無事に止まることが出来た。
一瞬の出来事だった為に、何が起きたのか分かっておらず、目の前がいきなり土埃で遮られている。その表情は困惑で、此方を怪訝に見てくる。
辛いだろう。苦しいだろう。彼女に、
「大丈夫だよ。もう、大丈夫だから安心して」
混乱して慌ている、確かに深い孤独をいる彼女を抱きしめて優しくいった。
私は、ただ優しく抱きしめる以外は出来なかった。直ぐにそんな時間は終わり。
カザクラさんは少しだけ恥ずかしそうな顔して、真面目な顔に戻り私に話す。
ナガクラくんの状態はかなり酷い怪我をしているが、ずっと回復魔法を掛け続けることで戦っていた。半端な回復魔法で体の傷を癒しながらも追い付かず、痛みは絶えず広がって蝕んでいる。と容易に分からせる内容だった。
既に戦い自体は終わっている、血が流れ過ぎて、かなり眠そうとも。
後はアムズを呼んでカザクラさんを学園に連れて行くように任せ、私はナガクラ君のところに行く。
今、敵を捕まえていると、殺したわけではない為に何が起こるか分からない。急がなくて、怪我が酷い、探索魔法を使って魔力を反応を見る。
魔力がドーム状に私を中心として一気に広がる。すると二つの弱い魔力の反応が見つかった。
その反応がある場所に向かう。だが妙に生物の反応が少なく、強い魔力の反応が弱い魔力を離れて囲うようにいる。それは確実に魔法生物の反応。
何の原因かは、分からないけど。ただ森に入る前に、放出されていた大量の魔力が原因かと思いながら、そこに向かい加速する。
そして二つの魔力が合った場所に着くとそこには見知らぬ男が立っていて、足が痛めているのか立っているだけで精一杯のナガクラ君。
どちらも魔力も体力も限界に近い状態である。それに客観的に捉えて、怒りは沈めながらに確かな相手に武威を放った。
男は怯むように体を硬直させたがほんの少しである。実力者と言えるが魔力と体力の消費が激しい、ベストコンディションであろうと敵ではない本能的にも理性的にも分かる。
ただ気になるのは、ナガクラ君にも多少にも伝わっているはずなのに特に何も感じていないようだ。
その理由は顔を見れば、分かった。
安心したような顔で立つ姿から崩れた。彼の元に近づき、優しく受け止める。
私はカザクラさんと同じ様に抱き締めて聞こえてないだろけど。
「よく頑張ったね……後は先生に任せて、起きたときには全部が終わっているから。だからお休み …………後ちゃんとナガクラ君が知っていること話してもらうからね」
既に疲れきって寝ている彼に回復魔法を掛け、ポンポンと頭を撫でてゆっくりと地面に寝かす。
後ろでただ見ている男に向き直る。そこには先のように強ばった顔はなく、薄汚い笑みを浮かべる男がいた。
さて、ここに来る前のカザクラさんが拐われる現場に訪れた女人から聞いた話だと。
ナガクラ君が言った言葉曰く、エニシングセルの人形使い、裏幹部のジャ……なんとか。言葉とエニシングセルの情報、人形は男の体、ジャなんとかと言う者は体を操っている精神的な存在、魂か悪霊または霊の何れかである。
本当は他にもあるが強さ的にも組織的な大きさでもそれを行える魔法使いがいるとは思えない為にない。
精霊からの魔力供給が限りなく少なくなっていている、この男の体そのものに結構な魔法的内部器官が作られて、内部環境も上手く回っていて魔力を精製する器官もある。
そこら辺の攻略者の魔法使いのモノではないつまり本格的に魔法を学んでいた可能性が高い、その体の男本人だったら厄介だが、操っている者なら大したことはない。
体の持ち主だったら此処が荒れ地になっていた可能性もあった、それならナガクラくんに止められるというヘマを起こすことはなかったはず。
対処は簡単であれは一種の悪霊であるから祓うことわけもない。
あまり時間を掛けるほどの相手でもないし、一瞬で……。
そう考えている内に、相手は懐から小さな瓶を取り出した。中は青い液体のようにさらさらであるが砂のような何かを見せびらかして、此方に話し掛けてくる。
「なあ姉ちゃん、これは知っているか。これは、内の組織で作られた特殊な薬でな、肉体本来の力を一時的に引き上げ、身体能力を五十パーセント解放するモノだ。
人間の体は、本来の数パーセント位しか扱えてない。それはどんな怪物でも、この薬はそんな怪物らを一瞬で越える素晴らしい代物。
だから姉ちゃんがどんなり強かろうと関係ないて話。諦めて俺の女にならねえか? 今なら苦しませずにそこの男を殺してやる。姉ちゃんの顔もスタイルも良い、強い女は好きだ。
ああ、だから、最高に鳴かしてやるからよ、俺の女になれよ」
下品な笑みと下らない提案。自分が強いと、自分が最強だと、それを使えば勝てると愉悦に浸っている。
つまらない、そもそもあれは自分の立場が分かっていない。なら教えて上げないといけないみたい。
「いいえ、結構よ。くだらない男はいらないから」
男は余計に笑って真顔で言い放つ。
「お前の意見は心底どうでも良い」
その言葉を聞いて私は同調して言う。
「同意意見」
男が瓶のコルクをポンッと外し中の青い薬を飲み込む。その前に、私は地面を強く蹴り飛ばし。
後ろからドッフンと鳴って、柔らかい地面は爆発が起きたようにクレーターを作るだろう踏み込みは。
私を加速させ。どれだけ長い距離がたった、一だったように、距離を殺す。
遅すぎる。それが私の感想。
そもそも敵を前にして、そんな隙を作る時点で弱い。
私が背中を向けている時に飲まずに脅すように見せて、脅しが効かなかったら飲むとは遅すぎる。それに目の前の私に気付くことないとは呆れてしまう。
色々の意味で残念極まりない存在を、眠らせる。
右拳を腰に構えて力が全身駆け巡るように、でも死なないように手加減する。
軽い踏み込みからタイミングをわざと外して、力が十二分に乗っていない拳を放つ。
それでも速く、拳が男の腹にめり込んだ。
全身を襲った激痛に困惑するような時間はなく、拳を下ろすと前に倒れる。
手から溢れ落ちた青い薬が入った瓶を地面にぶつかって割れる前に拾う。
本当に弱い、結局最後まで気付くことなく気絶した。手加減を大分したから、死んではいないはず。
まあ、クスリとやらを飲んでも結果は歴然。
そもそもの話、体の本来の力を解放するとか私達精霊使いには関係ない話しだ。魔力があればそんなことは簡単に解決する。魔力量の関係とかではない、魔法の知識があればそれがいかに簡単なことかは分かる。
普通の人達も気付かず内に魔力を制御するために内部器官が自然と作られるようにシステムがある。
攻略者や開拓者は戦う内に知らず知らずに自分にあった器官を生成している、特に上位層となると賢者の位の魔法使いでも作れないような器官があるそうだ。
でも魔法を主にしない人には、器官の精製は難しい、弄る程度はできるが。
私達魔法使いは自分達のために体を魔改造をしている。そもそも基本的に学園で習う基礎項目である。普通科は大分後に習うけど。
しかし男が知っている怪物とは、どんなに弱いのか……私が知っている者は首が取れても死なない者達であったり、四肢が切り落とされようと戦う獅子だったりと……やめよう、闇が深い。
「無駄な思考はやめて、ちゃちゃっと済ませますか」
此処でも祓うことは出来るが、犯罪自体を犯したのは体を操っている者であるから、此処で祓うと証明が難しくなるから連れて行くしかない。だから深い眠りについてもらったのだけど。
腰につけられた杖を取り魔法『安眠の睡魔』を掛けて眠らす。既にカザクラさんを病室に寝かしたとアムズから連絡を受け取ているためにもう一度呼んで男を運んでもらこうにした私はナガクラ君を背負って運ぶ。
後日、男の身柄は学校持ちになり、そしてフルカザキ先生の仕事が二倍に増えて、泣きながら休みを返上した。




