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のんびり屋の精霊使い  作者: 夢見羊
入学式と回り出す大きな歯車
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大事な繋がり1

 夕焼けが青黒い空に飲み込まれ、温かな風は肌寒い。

 近くの森に急ぐ為に強化魔法を掛けて、薄らっと纏った金に光る膜が一秒毎に加速度が上がっていき、ピンクな髪が揺れそれが閃光と化した。

 野原に一つの光が走る。

 それを石壁の上に立っている者が見ていた。その者の隣には先ほどまで閃光となった者が一緒に居た。

 見ていた者は、右目を手で押さえながら、片方の目で、樹海と呼ばれる森を見て、ニヤリと笑みを浮かべる。

 それは恐怖に打ち勝つ為の笑みか、狂気に狂い喜びの笑みか、それとも〝運命〟の幸せを表した笑みだったか。

 幾つもの道の果てを、万華鏡のように絵柄変わり行く光景の如く見てきた。でもその中でも、最も最悪な世界があった。

 だから、その笑みには、恐怖もあれば、狂気もあり、運命の結末の全てを含む。


「恐れる必要はない……あの人が向かった、ならあの少年は助かるはず……」


 左目は真っ赤に染まって、まだ無事な目は虹のようにあらゆる色、溢れない幾何学的図形と相まって万華鏡のようだ。


「本当は見るべきではなかった、でも見ないといけない気がした。でなければ、彼は亡くなってしまった。それに、私にとっても良いことを知った……これから、忙しくなる」


 今まで以上に見えた、数々の果てと可能性。

 あの光、あの存在、あの秩序の円盤。


「この一年、私は楽しもう、皆と。もう、あれに怖がる必要もない、ただ生きるだけ……。

 ――何年だと何時も何時も楽しい時に、フッと考えてしまっていた。でも、それも、無くなる……後――十ヶ月弱」


 より表情に出るように笑みを浮かべる。

 これからの未来をどうするかに計画を練り始めた今の彼女は昔から知っている者でも年に何回見れるか分からない姿であった。もしその者達がこの姿を見て彼女の言葉を聞いたなら、深く黙り込んでしまうだろう。それだけ彼女は苦しめられていた。

 右手で押さえいる目から手を離して、その目から赤い血が流れる。

 数秒で血は止まるが水滴のように水玉が肌を滑り地面にポタポタと滴る。

 それを気にもせず、左目を開いて赤く染まった目で苦しみを表すような景色を喜びにうち震える。

 そこに写し出されいるのは終わりであり、変えようのない幸せ。

 なら今のこの笑みは、狂喜の笑みなのだろう彼女すら気付かない内にしていた、それが隠された本性のなのかも知れない。ただ、狂ってしまったのは必然なのだろう。

 全てを知った彼女は声にはならない笑い声を出していた。静かな夜は、無音で奏でられた。

 すると石壁の上にいる彼女に声を掛ける者がいた。その者は急ぐように走って来た少女であり、探したと言うように様子で彼女を見上げて呼ぶ。


「先輩、そろそろ帰りますよ。寮の門限は過ぎてますし、帰っても書類等々を書かないといけません。後、ミルチ先輩が「お腹空いて腹と背中がくっついて死にそうだ」と言ってますし帰りましょ」


 大声で言う少女は生徒会書記、ハチヤ・コハクはニンマリとした笑顔で、右手を生徒会会長キンジョウ・スズナにブンブンと振るう。

 それが微かに耳に届き、彼女は気付かぬ内に浮かべていた笑みを沈めて、何時もの様に大人しい表情にする。

 ただあらゆる柵から解放された様に清々しい顔であった、彼女自身気づくことなく帰るために地面なき場所を歩いた。

 当たり前のように空を歩いたが前へと進むことなく落ちた。スッと石壁から落ちた彼女は、手も使わずに着地をして、何事もないようにコハクの元に歩きだした。

 コハクは驚くように声を上げて近寄って。


「先輩! 大丈夫何ですか――右目から血が流れて……と、取り敢えず回復魔法を掛けますからじっとしてください」


 過剰な魔力の渦、未だ幼い少女の中に発生し繊細に魔力を使い、回復魔法、治癒魔法に必要な人体の造詣の深さが分かる。

 魔法使いとしての格、たったこれだけで見えさせる、魔法の中でも唯一、この魔法だけの国家資格としてある高難易度の魔法を。


『癒し、治しは緑色。世界に七つある内、一輪の月光花。傷ついた体を癒して治して見せよ。其の光は一度浴びれば、優しく全てを癒し治しの救済――回復の緑光』


 幼い声は、一切の狂いなく、詠唱のトチりもなく。完璧に上級魔法を使って見せる。

 何の疲れも見せず、少し慌てた様子でポッケトからハンカチを取り出して。


「…………あとこれ、汚れてもいいので」


 回復魔法を掛けられたキンジョウの体に入って疲労や怪我を癒し治った。

 そのハンカチで目元に残った血の痕を拭き取る。


「ありがとう、コハク。血で汚れてしまったので、新しく買いに行きましょうか」


「は、はい」


 嬉しそうな声で返事を返したコハクは嬉しそうな笑顔を浮かべ、歩きだしたキンジョウの後ろを付いていく。夜の静けさから夜の騒がしさの場所へと向かって学園寮に戻る。

 寮に戻ると死にそうな顔をして机の上で突っ伏しいるミチルの隣には苦笑をする青年。

 夕方の時の従兄弟のシンオトとの友達のハルキと言う者。なぜと不思議に思いはしたが気にすることなく、同じ机のイスに座って、このハルキを含めて四人で晩飯を食べてから彼とは別れて、お風呂に入り生徒会で各自で書類を作成などをする。

 無事にナガクラくんと誘拐された生徒が帰ってきたと報告を受け、座り疲れた身体は体を包むようにベッドに沈み深い眠りについた。

 彼女はつかの間の幸せを、今日と言う一日を噛み締める。

 このような幸せが永遠には続かないと思っている。でもこの幸せが永久にも終わりがないで欲しいと強く抱いている。

 矛盾を抱く。この矛盾こそが自由を取り戻した証拠。そのなことを気付くことはない。

 自由となっても、これから起こるだろう不幸を知りながら変えることはない。なぜらなら。

 夜は早く過ぎていき、朝を迎える。そんな繰り返しの日々。でも今日がなければ、明日もない。だから、今日は明日の大事な日であり、昨日は今日の大事な日である。小さな幸せ、小さな悲しみ、それは明日にどんな影響を与えて、どんなことになるか分からない。ならば今日も大事な日である。

 意図的に未来を変えようとすると、不幸が舞い降りた。未来を変えることは明日の幸せと悲しみを変えてしまうことであり、変えても絶対に大きな力で修正が掛かって夢になってしまう。だから大切にして生きなくてはいけない。もし、今生きる者達の強い想いがあれば世界は変えれるかもしれない。決定した未来などはないと過去の者達が証明して変えたように。

 だからと言って大事な日であることは変わらない。ナガクラ・ヨシカタにとって大切にしなければならない日であり、キンジョウ・スズネ、カザクラ・カクチカ、ヒマワリ・シオト、ハルキ・フユムこの者達にとっても大事な日である。すべての人々にとって大事な日である。

 世界から大きな悲しみを無くして、大きな悲劇が生まれた。でもそれと同様に大きな幸せが訪れて、大きな喜劇が生まれた。

 明日はどんな一日なのだろうか、楽しい日であるかは今日次第――

 さあ、一生懸命生きよう明日の自分の為に、今日と昨日の自分の為にも楽しく未来の自分が喜劇の舞台に登ってるように生きて行こう。

 それが生きるということで、キンジョウ・スズナの物語である。






 眩い光が満ち溢れたこの場所とも言えない『ここ』は人類が何れだけ手を伸ばそうとしても届かない所にある。

 そんな『ここ』には、なが~くおお~きい川が流れている。

 何が流れているのか、もちろん水ではないし液体でもない。個体、空気、そんなじゃない。これは人類の流れだ。と言っても川として見て感じるのは私が見ているためだ。

 私が最初に川として認識したから、川として形を成しただけで本当は形なきものである。それを抽象的なまま捉えることは出来なかった。

 だから、そう言う風に見てしまった、どんな風に見ようとそれの本質が変わるわけでないからそんなことはどうでも良い。

 ゆらりと進む世界。

 無限へと拡がり続ける世界に私は溶け込んでいくように同一となって、一が全と繋がる。

 主観的な視点は既になく、全ては客観的な視点で観る。

 目が別の光景を観た。

 ゆらりと写し出された光景は世界基準で流れていくのを私は何時ものように観るが人基準ではないから人が見たら走馬灯の数倍速く流れていく。

 嗚呼、世界とはこんなにも早く終るなのだと何時も思う、ただそれは今の私だけが知っている事。これから起こる事に喜びと悲しみが、私ではない私は知っている。

 そして私が誕生したときから私が私であるために永遠の一部出しかないこの愛を抱き続け、それで胸が焦げて燃えてしまいそうだ。

 嗚呼、ようやく、長く、短く、一つのフィルムに写しだされるこの愛して止まない彼に会うために、私は今日も永遠から分離して意識を一部へと落とす。

 既にどちらが私なのかは分からない。それでも世界は回り行く。

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