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のんびり屋の精霊使い  作者: 夢見羊
入学式と回り出す大きな歯車
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戦いは己の為に2

 暗がりの道。人気はただ二つだけ、それ以外はなく静かな路地裏。暗い影が犇めき合い、互いに喰らいあってその身の暗さを黒さへと変色し、じわじわと広がっくる。

 微かに町から響く楽しげな声がその黒を抑え込むように照らしていく。

 そんな夜と夕方の境を表すかのような場所に、一人の少女とただらぬ雰囲気を醸す男が居た。いや、出会った。

 このような暗がりにいる男女といえばカップルなのかと一見思うが、でも年齢差が結構有るように見える。なら少女を口説こうとするおじさんか、悪い道に誘う悪者か、それとも精霊科の新入生を狙う噂の人拐いだろうか。

 少女に考える時間もなく、緑髪の男は動いた気づかれるより早く。

 極限までも音を鳴らさないように走る男からでる微かな音に気がついた少女の赤い瞳は、動く者を目の端で捉え、護身用のナイフを袖から落として手に取る。そのまま防御の姿勢を取ったが、少し遅かった。

 男は壁を素早く走り抜けて少女の背後を取り軽めの打撃を喰らわせる。

 少女の背中に強い衝撃と痛みが駆け。ボホっと肺の空気を無理やり吐き出さし空気と共に吐血を吐くも、意識を手放さなかったのは少女の決意の表れであろう。

 痛みに耐えるために歯を食い縛り、目を凝らし意識を広くして一つだけに向かないように注意深く観察する。

 男はそれにまた失敗をしたかと理解する。

 高位の精霊と契約を結んだ少女だと高が知れてる。そう思った、でもあれは他に言いようがない意思を持っている。前の男もそうだったが、大変今年の精霊科には粒揃いが揃っていると。

 だから、男は、

 ――少し壊れてもお釣りが来る代物だ。

 と認識を改め、少し頬を緩ませる。それは男の笑みではなく、誰かの笑み。

 そして先程より力を出して娘を手にいれると決めた。金もそうだが、遊びの為にも。そんな心意気を持って少女の前に立ちはだかった。

 ゆえに自然体にして、魔力を体に纏わせ、力の半分を出す。これはリスクとリターン。

 これだけの魔力を露出したら近くを通る騎士どもや学園の実力者に感づかれ来るかも知れない。今のままではそれらを相手取るには危険過ぎるが。目の前にいる少女にはその価値があると確信し、力を顕にした。

 魔力に乗った威圧が場を支配した。

 少女には途轍もない威圧の念が乗った魔力の重圧が重なり、心が押し潰されそうになるもとても強い意思で相手の観察を緩めず。相手を確実に倒す、いや、仕留める一撃を入れん為に。

 男に焦りはなく、剣には鞘を着けたまま意識を刈り取ろうと狙いを定め、どこかわざとらしく見せつける。

 少女はそれに臆さず、自分が出せる攻撃魔法の殺傷能力の高いのと発動時間が短い魔法から単純な魔法を選択して、使う魔力を練り合わせ純度を高める。

 左手に高純魔力を宿らせ、掌の上に熱の塊を作り出す。それに確かな形はなく、何となくの球体である。だから形はぼやけて燃え揺らいでいる。

 男は高温の火の塊と判断し、当たらなくては意味がない。そして当たることはない、いくら意志が凄かろうと実力は少女程度である。それを見違えるほどバカではない。傲慢な男はそう抱いた。

 それは男の盛大の間違いである。あれは火の塊ではなく、光の光源。それも太陽の如く代物だ。

 ――光、通るとこ何もなく。

 それがこの魔法の本質である。光滅の一種を産み出す魔法。それを隠す炎の衣、娘の施したフェイクである。それは正に炎の塊でだが光に纏う火、つまり飾りである。それを隠す為に火球を本当に纏っている。

 二人の準備は整った。動くにはそう時間は掛からない。

 二人は一秒一秒も経つ毎に深い集中に沈んで、一秒の世界に入り込む。

 娘の方はそうするしかないだけであるが、入れただけで既に異常。それほどに少女は意志が強く、全てを捧げて未熟ながらに至らせた。

 動き出しはやはり男から。

 最初から分かっていた為に少女は、タイミングよく狙うだけ。避けさせないように確実の距離まで待ち続ける。

 二人は果てしなく伸びる時間に躊躇なく、互いに自分の一撃を入れが為に見合っていた。

 男は走り、大地を力強く蹴る度に速くなって一秒の世界を当たり前見たいに走っているようであった。人成らざる者に憑かれた者だからこそ、普通の人間それも魔法なしに出せる速度ではない速度を出す。

 最初から次元が違う。

 男はそんなことも知らずとまた愚かさを見せる。

 剣の柄を右手で待ち、鞘先で鳩尾(みぞおち)を狙う。それでも死ぬ可能性があるために、本当は動けなくする薬を投入して体を動かなくさせるのが真の目的。

 娘は魔力を高める。そして火球内で輝く、太陽の如く眩い光は今か今かと炎も焼いて全てを滅しようとしている。

 身の程知らず。今の少女にはその言葉がよく似合う。

 『光滅の柱』何てものをこんなところで、それも覚束無い制御で扱おうとする者には特に。

 男は単純な突きを狙うふりして、胴に動けなくする薬を取れるように分からないように構え。

 素早く、油断なく、相手の間合いに無造作に入り込む。

 娘は待っていたとばかりに左手の火球を相手に向ける。放つ時、光はすぐさま炎を破り去り全てを滅してしまう。光の放出を制御するために、意識を集中して、手の動作ともシンクロさせる。

 男は鞘に入れたままの剣で素早く突くふりをして、少女は左手の火球を相手に向けて放つ――。

 その時、唐突に見知らぬ女の悲鳴は甲高く響き渡るが、遅く遅く路地裏に響き渡るように思える意識の時間。それは大通りにも聞こえるじゃないかぐらいに響いた。

 その声に体が少しばかり固まってしまった少女に、男は隙を見逃さず。剣の柄を持ってないほうで注射器を持ち、通り抜けざまに胴に射す。

 いきなりの胴に浅くはあるが刺さったそれに痛みの苦悶を上げる。

 少女の手から眩い光は消えるはずだったが、覚悟が光を灯らせ続け、制御から離れてもあり続け。

 やがてその光は暴走し、大半の魔力が爆発として放出。残りは光へと変わって光滅が放たれた。 それは少女の罰として左腕の肉が爆ぜ飛び、腕だった肉から白い物が見え、赤く幾つもの繊維が血管が飛び出し血が絶えることなく流れ続け地面を赤く染めていく。

 男にも光が差し込み、脚に意識する暇なく貫通して焼き尽くした。

 少女は体を動かすことも、喋ることも、痛みに耐えることも、叫ぶことも出来ず。

 腕に纏う痛みに苦しみ続ける。のたうち回ることもできるはずがなく、呼吸をすることが苦痛に満ちる。

 こんな事態になってしまった原因を起こした女は、恐怖に染まりながら、必死の思い出、助けを求めるように悲鳴をあげる。

 男はそれを気にせず、本来の魔法を行使して止血する。それ以上の魔法は使えず、急がなくては行けないレベルで死ぬ可能性がある少女に少なからず癒す止血程度に少ない魔力を沢山扱い。

 そろそろ厄介な奴らが来ても可笑しくないために、少女を連れて逃げることにした。決断は早く、直ぐに連れ去ろうとした。

 目があった。黒目がギョロリと女へ向けられ、へたり込んだ姿勢が寝転がるような姿勢に変わってしまいそうなほど怯えきった。

 女は恐怖に固まって、此方をただ見ている。次第にその表情が恐怖に染まって、絶望へと転じた。

 愉しげな男に肩に掲げられた少女は耐え難い痛みに意識が飛んだ。

 少女を肩に抱えて立ち去ろと時に此処に向かってくる足音が。それに急いで消えようとするが、止血した程度の足に痛みが走り、動きが止まってしまう。

 そして此処へ来た。ただその者が前の標的だと気づき、容易く逃れる、と分かると暗い影がより暗く染まった。

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