戦いは己の為に1
いろんな人種がいて、いろんな目的を持つ者達もいて、いろんな会話をする者達もいる。それは別に、今日も今日とて変わらず、人々はこの大通りを歩いている。
そんな中で、私は大通りから離れる場所でため息をつく。
人の多さに嫌気が差す、ただ愚痴を溢さぬように心の内に留め、さいど溜め息をつく。愚痴を吐きたいが、誰が居るかも分からない場所で吐くのはいない。
だけど、愚痴りたい。
率直に言うと、人混みが嫌い。
誰かに知られたくない、見られたくない、一人でいたい。
本当なら昨日の買い物で暫く町には行かないつもりだった。だけど、買い忘れた物があった。それなら早く買って帰ればいい、でも部屋のもう一人の住人に買い物を頼まれて、思わず引き受けてしまった。
ただ、よりによって下着、それも下の方。
それもこれもあの男のせい。あの男が雑貨屋に居なければ、忘れずに買えていただろう。
会って数日程度の私にあの子も普通頼むだろうか。
顔は可愛く屈託のない笑顔がゆらりとふわりとした髪質と相まってほのぼのとした魅力的。少し抜けているのは私でも分かるほど。
あの子、本当に大丈夫か心配になってしまう。
それを受けてしまう私も私か。
それにまた、溜め息をついてしまうが人の多い所を避け、目的の場所に向かって歩いていく。
夕方近くに寮を出た為に昼とは違って若者が少なくなりつつ、騒ぎを起こす駄目な大人が多くなる。
駄目な大人とは、攻略者でバカみたいに酒を飲んで人に迷惑を掛ける者達のこと。
でろんでろんに酔っ払って裏道で胃の中のものを吐き出したり、喧嘩騒動やナンパなどを行う迷惑な者。そんな者らが増えてくるのがこの時間帯。
ソワっとした感覚がうなじに流れ、そのまま背筋に流れて歯がゆい感覚になる。
咄嗟に、後ろを振り返る。
怪訝な眼差しを向けるが、そこには商売人や攻略者などしか居ない、日常といえる光景しかなかった。
うなじを撫でる。咄嗟に行った行動に疑問を抱きながらも頼まれた物を買いことにする。
美味しそうと抱かせるスパイは屋台から漂う香り、食欲を沸かせる。
屋台に目を向ける…………早く行こう。
雑貨屋は別に良いが、女性洋服店は閉まるかもしれないので、足を早める。
そのお陰で洋服店の閉まる時間前に間に合った。
閉店ギリギリに来たので、店側に迷惑になってしまう。
流石に長く居座るほど、図太くはない。それにここの店はお高い場所なのでるからあまり迷惑なことはしたくない。
さて、早く選びましよう。と下着のコーナーを見る。
慎重に選ばずに適当に取っても私のでないからいいのだけど、適当には選べない。
パッと見て、少ない時間で考え込む。
まずは型は可愛いらしい系かセクシー系かである。いや、考え込む必要はないかとセクシー系を選びとる。理由は何となくである。
そこに少しも意地悪の気持ちなどはない。
次は色合い、赤、緑、黄、青、黒、白などから、彼女の雰囲気と接して感じた性格を考えるに赤が良いかしら。
選び、手に取って買う。
ついでに私のも買う。値段は高くなった、預かったお金は一般的下着の値段。だから足りてないけど、そこはいい。だから少し悪意が交じってもいいはず。
そう心の中で悪魔が笑みを浮かべて店を出て雑貨屋に向かう。
途中で気になっていたホットドッグを買ったり食べたりして、雑貨屋に着く。
見た目的にはでかくは無いが、可笑しいほどに広い店。空気の流れがあり、窓などは見えない。 天井に着いている魔宝石内の魔法陣により、光が灯っているも、部屋全体に光が届いているわけでなく。薄暗い場所がある。
薄暗い雰囲気が怪しさが漂う、中は清潔感が保たれた店。
その中の商品の目当ての物を買い、帰ろうとしていると人形が目に入る。それは前、男が手に取っていたものであった。
前も少し見たが作りが確りしたもの。どこか孤独の姫と感じさせた。それに心的に引かれる。だが手を取ることなく、店を出て行く。
すっかり空が焼けていた。そろそろ門限近くなのは分かった。
他の目的も無いために、寮に素直に帰る。
一応、護身用の武器が有ると言え、厄介な者に出くわす可能性がある為に帰りは何時もより早足で門へと向かう。
が今日はついていない、酔っ払いに話しかけられた。
「よお~~お嬢ちゃん。……かわ、ヒッ……ね。これから、ひっしょに遊ばない~~」
顔を赤くさせて酒臭さとこの男の体臭が鼻について曲がってしまいそうだ。
頭が回っていないのか呂律も回っていない、嫌悪感を抱きつつ平然を装い断る。
「いいえ、結構です。貴方といると気分がよろしく無いので、それでは、さようなら」
なるべく簡潔に言って、帰ろうとしたら私の言葉を理解していないのか。
腕を掴まれて、引き留めれる。
「まぁあ、まあ……まてぇよぉー、おいちぃーーご飯しって、るぅ…………いこぅ、ぜぇー」
明らかなナンパで、そこそこ有名なのか人の視線が集まる。それに心の底からこの男に嫌悪感を抱く。
私の瞳は多分、今物凄く冷徹の視線を向けているだろう。言葉も相手を煽るようなものであって仕方ない。
掴まれて腕を振りほどき。
「貴方は私の言葉が理解出来ていないようなのでもう一度言います。臭くて、不潔で、ゴミグズと一緒にいると気分がとても優れないなので、止めときます」
ようやく侮辱されたのだと理解したのか。
「何だと!」と怒り顔は先より赤くさせ湯気が立ちそうだ。
私の肩を掴んで歩みを止めた。
体は自然と反応して袖に隠してあるナイフを手元に落とし、肩を掴んでいる手を払い退ける。
それにより周りはただナンパとして素通りから何だ何だと此方を見てくる者達が増える。より強い不快感を抱くが、表に出さず平然とした態度をとる。
相手に恐れを抱く必要はなく、相手に感情を見せる必要もない。ただ見せるのは無である。
だが相手は攻略者、未知に溢れた危険な異界の塔に登り、世界に豊かさを与える勇敢なる者達。そう呼ばれる者達は荒れくれ者が多い。
今、目の前にいる男のような奴である。短気で下品でグズの奴らである。
それに抱く気持ちなど勿体無い。だからこれで良い。だが、そんな奴らでも私より強いのは確実。油断なって一切ない。逃げるその一と踏みを出すだけだ。
酔っ払ってはいるが戦いに成れば負ける。でも逃げるに関しては別である。逃げ切れはする。
そう確信して逃げる。
その時、心から呟かれる声が聞こえた。
『逃げるのか』
それに体は重りを付けられたように動けなくなる。
この一歩を踏みだせば、私は私で無くなるのではと。そんな疑問。
正常の者ならばそう言う考え至らないだろう。だが私に取っては逃げると言う行為は重大なこと。逃げれぬ者から逃げる。
そんな考えが一瞬頭を駆け抜けて停止してしまう。それに男は先の仕返しとばかりに拳を握っていた。
それが私に向かって放たれる。
反射的目を瞑り数秒と経つ、でも衝撃が来ることはなかった。
ゆっくりと瞼を開くとそこには女性が立っていた。その人からは鳥肌が立つほどの怒気が溢れていた。
高々と上がった長い赤髪は湯気のように揺れている。そしてその人は片手で男の頭を握り潰すが如く万力により、頭から鳴ってはいけない音が聞こえてくる。
女性の顔は怖くて見れない。その人は男に向かって闇の者のような低く恐れを抱くかす声音色はこっちまで震え上がらせて。
「お前は何処で何やっている? お前。まさかこの少女に危害を加えようとしたわけじゃないような? その右手の拳は自分を殴るためのだよな? 決して少女を殴るためのではないよなぁ。……おい、返事はどうした」
そのドスが聞いた声に男は未だ酔っているのか、痛みを感じている様子はない。それに決して怒らせてはいけない人に向けて反抗的な目を向ける男に、呆れを隠せない。だってそんなことをしたらどうなるかは、やる前から分かることなのだから。
「何だテメは? このゴリラが頭を掴んでじゃねえよ」
頭を掴まれたまま女性の顔に先まで私に向かって放たれる拳で殴
る。ただその攻撃が通じていないかのように平然としている。いくら本来の威力じゃないからて言って、獣なら一発で昏倒させるほどの威力はあるだろう。
女性は男の頭を掴んでいる手に力を入れて、顔面を紅葉レンガの地面に途轍もない速度と力でぶつける。
衝撃音が響き、土煙が立って、地面はボコと円状に凹み四方八方に亀裂が伸びる。
それでも生きてる男の方も可笑しいが、それをやった女性も可笑しすぎる。
酔いが覚めたのか頭に手を置き、痛みに耐えようと悶絶して転げまくっている。
その間に女性が此方に来た。先の怒気は感じさせない、優しげの女性。髪も上に舞い上がっているなどはなくストレートの髪。
「すみません。内のバカが此方でキツイお仕置きをしますので、これで許して上げてください」
そう言って男の懐から金が入った袋を取り上げて、それを渡して来た。その中には多額の金貨が入っていた。
流石にこんなに貰えないので「要らないです」と言うが聞いて貰えず。それにこれ以上言うならと言った様子で右手を此方に見せる。
私はもう何も言えないために貰うことした。
女性はそれを見て「本当に申し訳ありません」と言ってお辞儀をして未だ転げ回る男の頭を掴み引っ張っていく。
引きながら私は唖然とした空気の中、寮にそそくさと帰る。
人目も集まりが悪寒が立つほどあり、気分もよろしくない。
とても疲れた数分と言えあれは精神的に堪える。その為に人通りが少ない道を使って帰ることにする。
最近は変なことばっかり。あの猫に会ってから……いや、あの男に会ってからだ。ナガクラ・ヨシタカ。
暗い裏路地の冷たい壁に心の重みを任せるように肩を付けて、薄らと見える先をただ見つめる。 頬に風が掠める、まだ夕方近くの春の暖かさは関係無しとばかりに暗く冷たい風は吹いていた。
その寒さに体を抱き締める。心の中の暖かさを感じるように。
『もう関わらないで欲しい』と正直に思えるのに心は嘘かのように邪魔をする。
あのような人達は私みたいのを助けようとする。
だから駄目。
だってそう人達は皆――砕けた。
もう出来ない。やりたくない。あの優しき人達を。
心に刻み込んだ想いは深く綺麗に美しく、未だ焼かれているみたいに残り続けている。




