まだ平凡の日7
未だ眩しく輝いて雲ひとつ無い空は日差しを素通りさせて、つい最近までは肌寒かった。それは今朝の曇り空と違って、日桜を咲かせるほどに暖かい。日桜とは夏の始めごろの温かさになった時期に咲く桜である。
そんなことを思いながら寮のロビーにある椅子に座りながら、二人を待っていた。
授業が始まり、数学のテストで落ち込んだハルキくんを励ます為に三人で町に出て遊ぶことになった。ただ先生に忠告された為にも、一応武器を持っていくことにしている。
待ち合わせ場所で二人が来るまでぼんやりと待つしかない。といっても直ぐに来るだろから、魔力操作の訓練でも行うことにする。
いつものあれの魔力版というか複合版。
目をつぶり、手を重ね。背筋を伸ばし呼吸を整える。
少量の魔力を体内で意識的に動かして、全身を回るように水気が足りない泥を体内でゆっくりと解しながら回す。
慎重に丁寧に魔力量を無理に上げずに、魔力を操る感覚を体に馴染ませていく。
数分と経つころに、目の前に人の気配がした。
人の気配を感じたことに懐かしい気持ちが蘇る。
さて、練習も終わりと目を開くと、予想外な自分物がいた。
「こんにちわ、カザクラさん」
奇妙な物を見たような顔して、此方を見ている。
何で、そんな顔をしているのか、と。思い回りを首を動かさず見るが、自分以外に誰も居ないし奇妙な物があるわけでない。
自分に視線が向いているのだから、多分自分なのだろう。で、ようやく、理解した。
それりゃあ、そうか。こんなことをしていたらそうなるか。
先までの自分は椅子に正しい姿勢で正しい呼吸、目も瞑りながら深く深く落とし集中力を練り上げ、体内に力を意識を向けていた。
その姿は他から見れば、寝ているようには見えず、だからといって何かをしているようにも見えないだろう。その姿は傍らから見れば、奇妙に写るかと思っていたら。
カザクラさんは数秒ていどの硬直から解かれ、何事もなかったように、自分の挨拶を無視し、自分の前から居なくなろうとする。
それに思わず、ため息がでる。けれど、逃がさないように声をかける。
「カザクラさん。そんな嫌わなくてもよくないか」
その声に立ち止まった。
自分は確かに、彼女が拒否をしたことに反対しているが。そこまで、嫌うようなことはしていないはず?
彼女の返答の間。
沈黙という音が支配する。
そして声という音がそれを破る。
「貴方が嫌いだから、見たくも話したくもないの。ましてや、関わりたいなんてない」
冷たい表情。
だが、その言葉に確かに熱があり。その熱に影響されてか、瞳の奥には強い意思があり、手に握っていた。
常に見せていた冷たい仮面、それが外れる所は数回見てきた。それらとは全く違うような変化が微細に現れている。
だけど、けれど。
自分にはその言葉の真意を掴めなかった。
だから、自分は心から思っていることを呟いてしまう。
「何でそんなに……きみーーいや……カザクラさんはなんで、一人でいようとする。誰かを頼ってもいいだよ」
その言葉が、彼女の触れてはならない便箋にふれた。
「ぁたに……あなたに! 何が分かるの!」
轟く思いは自らの仮面を剥ぎ取って、四肢を震わせながら必死に大切な者を守ろうと敵に吠える犬のように、此方に牙を向けた。
怒気を含んだ声、激情を露とした彼女が向ける視線は、偽りの仮面を通した冷たい視線ではなかった。
ここに居たくなかったのだろう、ここから去っていった。
ただ、自分はその後ろ姿を見ることしか出来なかった。
怒らせてしまった。これは余計に仲を悪化させてしまったな。放っては置けない、悲しみ姿は見たくないし、悲しみたくもない。
どうしたものか。
どうしようもない感情を吐くように深い溜め息を吐き出す。
いま、考えても仕方ないと頭を切り替える。
再び魔力の練習をする。
練習している間に、二人がきたようだ。
「ナガクラ、待たせたな。……少し疲れているようだが大丈夫か」
声を掛けてくるヒマワリくんはお洒落な服に着替えている。
「大丈夫だよ。少し魔力操作の練習していただけ。それより二人とも一緒に来ているけど同じ部屋?」
それに答えるようとハルキくんが。
「そうだよ。昨日は授業の後は一日も会わなかったし、知らないよね。ヒマワリくんは昨日、寮に入ったばかりだし」
そのようなことを話すハルキくん。もしかして、同じ境遇。と思っていたが、どうやら、手続きだけは先にしていて、ちょっとした事情で寮に遅れて住まうことになったらしい。
そんなハルキくんの服装は爽やかな雰囲気が似合うカジュアルな服装。
さて、そろそろ移動をしないと時間がなくなってしまう。多分あと三時間位である。時計を持ってきてはいない為に分からないが。
その為、二人にそう伝えて寮を出て学園の敷地から町へ向かう。
町に入るまで他愛もない話をしながら学園の敷地を出て町へ。
今日も人がたくさんな大通り、その中を気にせず歩いて目的の雑貨屋に向かう。
どこかなと思いながら話をしていく。
「そう言えば、雑貨屋に昨日行った時に精密に作られた人形があったんだけどさ。この辺に人形師ているのかな」
「人形師? いや、この辺では聞いたことはないが、それがどうした。欲しいのか?」
不思議そうな顔をして聞いてくるので、素直に答える。それに興味があるのかハルキくんも
興味津々といったようす聞き耳を立ているようだ。
「妹にお土産として買おうかなと。あと、普通に良い人形だから、欲しいなと。別に知らないなら知らないでいいよ。作り手が気になる訳じゃないし、でも写真を撮る魔具は欲しいけど」
彼らを見ると、感心したといった顔で二人は此方を見てきた。なんでだ?
「ナガクラ、君が妹思いのお兄ちゃんなんだな……妹は何歳くらいだ。何だったら、一緒に選んでやる。妹は居ないが、妹的存在は居たからな」
そう気になる事を言った。それに同感と言った様子のハルキくんも話し出す。
「僕も妹が居るけど。あんま、その辺は考えてなかったな。高位精霊と契約する前はずっと村で畑仕事をしているだけと思っていたけど。まさか僕が高位精霊と契約するなんて微塵も考えなかったなら。妹や家族の事なんて考える余裕なかったな」
深々と思い耽るハルキくん。
少し雰囲気が暗くなってしまった為に話を変えるために。
「そんなことはないよ。自分だって、ずっと村で過ごすして人生を終らすだろう……思っていたけど。ある時に精霊と契約を結んだ、それは何処までも自分の選択」
――人は人知れず自分で自分の道を定める。
運命なんてない。誰かが言った言葉。忘れることはない言葉。
それにでもと思ってしまうのは、まだ自分が未熟なのだろう。
自然と出た言葉に懐かしさを抱きながら続けていう。
「それはハルキくんも変わらない。……それに自分は別に親のことは気にしない。妹とは、欲しがっていたから買って上げようとね。でも甘やかし過ぎて、メッて怒られるだよね」
でもそこが、とても可愛いくて仕方ない。
まだまだ甘やかしてやりたい気持ちがある。でもあまり甘やかすと妹自身に怒られてしまうけど。
そんなことを言ったら、二人は此方を向かず自分達の顔をまじまじと見つめていた。その顔にはマジかと言った疑いとヤバい奴では等を確認するかのような行動であった。そして二人は此方を向き大きく口を開いて空気を吸い、心を込めて言うのだった。
「「ロリコンじゃん」」
「――違うよ。言うならシスコンって言ってよ」
二人はその返しに絶句って感じだ。
先の言葉は同然周りにも聞こたのか。何人かは此方を不審そうに見ている。その者達のひそひそ話が伝染するように、ロリコン、ロリコンと呟かれている。
さて、冗談はこの辺に。じゃないと自分の評判がどん底に。雑貨屋に着いたと、二人に教える。
「冗談は置いといて、二人とも行くよ。雑貨屋に着いたし」
二人の肩を揺らしたら、ハッとして無事に戻ってきたようで冗談だよて言う。
ハルキくんは信じたみたいだが、ヒマワリくんは疑いの目で見てくる。
その疑いの視線を無視しながら雑貨屋に入る。
雑貨屋では特に買うもの無かったが色々とあるから見飽きない。少し人形が気になったがまあ後で良いかなと思いそのままにした。
そのあとは服屋に行って服を選んで二人をコーディネートをしてやる。ヒマワリくんは少年らしさを出した短パンに白服である。なんか麦わら帽子や虫取り網を一緒にしたい。
ハルキくんはお洒落にスーツとかにしてみたらカッコ良いとしか言えなかった。
そう遊んでいたら仕返しをされた。
そのあとは本屋に行ったり魔法屋に行ったりと遊びながら進んでいった。途中でちゃんとホットドッグを食べたりして――。
本当に楽しい一日。
そんな一日も夕方に近づくにつれ暗くなり、町中で聞こえた昼の賑わいは夜の賑わいへと変わる。自分達も門限に近づいているために寮へと帰る途中であった。
悲鳴が聞こえたのは。




