04/01. 祭りの日の朝
早朝の教会堂。
いつものように掃除を済ませた俺は、最奥部にある台座の上に、儀式用の石版を置いた。
こういう時にしか使わない、ちょっと特別な祭具を。
その上には、香りの強い野草の束。
特に青々とした張りのあるものを、昨日のうちに準備しておいたんだ。
今日は緑草祭。
村人の健康を祈ると同時に、緑の恵みを祝うにぎやかなイベントで、宗教的意味合いは薄い。
けれど、ナコタ村で暮らす牧師としては、それなりに筋を通しておくべきだろう。
だから、やるべきことはやっておく。
聖職者としての『お務め』ってやつだ。
台座越しの壁には、ずいぶんと大きな諸刃の剣が、刃を下に向けて掲げられている。
祈りの場に武器だなんて物騒な感じだけど、あれはあくまで模造品。
本物の剣じゃなくて、信仰の対象となる存在の象徴なんだ。
俺が牧師と名乗れるのも――もっと言えば、俺たちの住むガーシュ王国があるのも、この剣によって示される偉大な英雄が、命をかけて戦ったからこそ。
すべての始まりは、その英雄。
我らが『国父』である、その名は――。
「遅くなってごめんね、カッタ」
開かれた扉から入ってきたリリウに、俺は思考を止める。
「昨日はあたし、料理の下ごしらえの手伝いでさ……今朝は、ちょっと寝坊しちゃった」
「大丈夫だよ、そんなの」
振り返った俺は、本当に早起きが板についてきた彼女を迎え入れた。
「もう終わっちゃったよね、掃除?」
「いいから、いいから。気にするなって」
申し訳なさそうなリリウに、俺は笑って返す。
正直、今日は一人でやっておきたかったんだ。
緑草祭だからってことじゃないけど、こうやって静かに、どうやら空の高いところにいるらしいその相手へ、聖職者らしく想いをはせることが、最近はできていなかったから。
さて、マルセラ姉さんを起こしに行くか。
あと、ついでにフィンネもね。




