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ダークエルフの女の子が、聖職者と仲良くしたらダメですか?  作者: 渋谷 恩弥斎
第2章 少年牧師と、風を奏でる森の民
75/114

02/09. コーソ村の伝統(1)

 キルムーリたちの集落、コーソ村。

 その、やや奥に建てられた平屋の一軒。

 整頓された部屋に通された俺たちは、木製のテーブルを囲み、キルムーリの少年と向かい合っていた。

 どうやら、ここは彼の自室らしい。


『あらためて、僕の名前は「ウダロ」。よろしくね、カッタくん、リリウちゃん、フィンネちゃん』


 キルムーリの少年――ウダロは、一人ひとり確認するように、そう伝えてくれた。

 俺は以前に名乗っているし、ここまでの会話で、俺は何度もリリウやフィンネに呼びかけている。

 それを聞いていたであろう彼は、もう全員の名前を覚えてくれていた。


『驚かせちゃったよね、いろいろ。あっ、まずは助けてもらったお礼を言うのが先だよね。でも、僕らことを説明しなくちゃいけないし……』


 俺たちも混乱しているけど、ウダロはウダロで、頭の整理ができていないみたいだ。

 まぁ確かに、ここまで慌ただしかったからな。


『でも、とにかくありがとう。君たちのおかげで、この前も今日も、僕はケガをすることなく村に帰ってこられたんだ。本当に感謝しているよ』


 頭を下げてくれたウダロ。


 聞きたいことはたくさんある。

 この状況を含め、わからないことばかりだ。

 しかし、これだけは言える――彼は、ぜったいに悪い魔族じゃない。

 誠意ある言葉が、俺にそれを確信させてくれた。

 もちろん、十分にわかっていたことだけどさ。


「ふーん、いい心がけね。どうぞどうぞ、好きなだけ感謝してくれていいわよ。それで、初めて会った時、私を無視したことは許してあげるわ」

「お、お前なぁ……」


 相変わらず偉そうなフィンネ。

 彼女の中では、ここまでのすべてが、自分の手柄になっているらしい。


「気にしないでね、ウダロ。この、基本的にこうだから」


 こちらも相変わらずの流し方で、リリウが処理する。


『あ、あの時はごめんね……あの時は、とにかく僕はカッタくんを探していて。それで運よく出会えちゃったものだから、周りが見えなくなっていたんだよ』

「あ、やっぱりか。俺、もしかしたらって思ったんだ。だから、そう尋ねたよな?」


 ウダロの発言に、俺は自分の予想が当たっていたことを理解する。

 確かに彼は、森で遭遇することになった俺に対し、やや興奮気味に接触してきた。

 一度『言葉』を交わしているとはいえ、この前の消極的な雰囲気とは、明らかに違っていたもんな。


『う、うん……ごめんね、馴れ馴れしく近づいていっちゃって』


 申し訳なさそうに、ウダロが続ける。


『僕と妹を、あのチョンチョンからカッタくんが守ってくれた日から、実はずっと、君のことを探していたんだよ。オドニオ森林のどこかで、また偶然に会えるんじゃないかって。それで数日間、散歩がてら森を歩いていたんだけど、全然ダメで……だから、今日はつい、あんな風に』

「そうだったのか」


 ここ数日間、俺は野草摘みを休んでいた。

 森には入っていない。

 出会わないのも当然だ。


「でも、どうして俺を?」


 別に、悪い気はしていない。

 だが、気にはなる。


「君は、他の種族との交流を避ける、オドニオ森林のキルムーリだろう? あの時はとにかくとしても、君から再び関わろうとしてくるなんて、何て言うか、ちょっと……」

『不思議?』

「あ、うん。迷惑だなんて少しも感じていないが、確認はしておきたいかな。俺は今、ナコタ村で生活しているんだけど、この集落とは、適度な距離を保っているって聞いているからさ」


 俺が今、こうやって彼らの村に招かれているだなんて、ナコタのみんなは想像もできないだろう。


『もちろん、全部説明させてもらうよ。そのために、ここへ来てもらったんだ。ちょっと長くなりそうだけど、ちゃんと順番に話すから』

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