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ダークエルフの女の子が、聖職者と仲良くしたらダメですか?  作者: 渋谷 恩弥斎
第1章 少年牧師と、ダークエルフの少女
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01/06. 新米牧師の仕事

 アミカちゃんが手伝ってくれたおかげで、教会堂の掃除も順調にこなせた。

 気づけば、もうお昼の時間だ。


 俺は、ほうきを片づけてくれているアミカちゃんに声をかける。


「今日もありがとね、アミカちゃん。お腹も空いてきたし、もしよかったら、俺が何か作るけど、食べてく?」

「はい、喜んで♪ 実は最初から、その……牧師さまにお呼ばれしてもらうつもりでした」


 こういうことは一度や二度じゃない。

 彼女にはお礼を兼ねて、よくランチをごちそうさせてもらってるんだ。

 だからアミカちゃん的にも、そういう予定だったらしい。


「じゃあ、すぐに作るよ。昨日のスープの残りをアレンジして、ちょっとパスタをからめたり――」



「牧師さんっ、出たわ、出たっ!!」



 教会堂の扉が開いたとたん駆け込んできたのは、村で暮らす中年女性だ。


「不気味な魔族よ、魔族っ」


 その言葉を聞いて、俺はすぐ、アミカちゃんに伝える。


「お昼、少し待ってもらってもいい? ちょっと仕事ができたから」

「はい、もちろんです、牧師さま――どうか、お気をつけて」


 アミカちゃんにうなずいて飛び出した俺は、そのまま村を走っていく。


 森へと向かう方角に進んでいくと、そこにいたのは、土汚れた人型の魔族だった。


「オォーウ、ウォーウ」


 あれは『タキシム』という魔族。


 動物の死骸や朽ちた植物の実が魔力を帯びた泥などと混ざって生まれる、知能なきモンスター。

 不快な悪臭を放ち、目的なく人を襲う存在だ。


「んっつぅーっ……やっぱり慣れないな、この臭いには」


 鼻を押さえながら、俺は村に出現した魔族――タキシムを見やった。


 俺たちが暮らしている国――『ガーシュ王国』は現在、基本的には平和な国家として栄えている。


 しかしながら、どんな時代どんな場所であっても、日々を慎ましく暮らす人々に害をなす存在が消えることはない。


 たとえば都市部の町ならば、王族や貴族に仕える公的な兵士などが、地域の治安を守っている。


 また、そういう場所でなくとも、裕福な商人たちが活動しているエリアだったりするなら、私的な傭兵が目を光らせていたりするものだ。


 でも、田舎はそうはいかない。


 王族や貴族の兵力にも限界はあるから、どうしても地方は後回しだし、一般の村人に傭兵を雇うだけの財力なんてあるはずがないんだ。


 そこで考えられたのが教会の活用。


 聖職者にもいろいろなタイプがいるんだけど、基本的には聖なる魔法を学んでいる人間。

 歴史的にみても長年魔族を相手にしてきた存在だし、ただただ静かに祈っているだけの職業じゃないわけだ。


 ナコタ村の聖職者は、新米牧師の俺一人。


 一人しかいないから、雑用から何から全部一人でやらなきゃならない。


 だから、こんなこともね。


「オォーウ」


 俺を認識したタキシムは、腕を振り上げて向かってきた。


 素早く体を引いて、俺は攻撃を回避。

 殴られるのはもちろん嫌だけど、それより何より、こんなくさいやつに触れられたくないっての。


「ウォウッ」


 距離をとった俺は、右手をかざして、呪文を唱える。


「〈魔法の火球フレイツボール〉」


 においのことを考えると、燃やし尽くすのが一番だ。


「ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」


 俺の放った火の玉が直撃すると、炎に包まれたタキシムは、灰となって土へ還っていった。


「ふぅ」


 軽く深呼吸。

 無事に仕事をこなせたって意味と、悪臭のしない澄んだ空気を取り入れたかったっていう意味で。


 さて。

 どうやらあの一体だけだったみたいだし、村への被害はなさそうだ。

 実際に目の前で見ちゃったりすると、さっき駆け込んできた人みたいに慌てるのも仕方ないけど、どんな地域でも、こういうことはよくある。

 混乱も大きくない。


「よし、お昼だ、お昼」


 アミカちゃんを待たせているし、早く帰らないと。


 俺が、来た道を引き返そうとすると、


「あ、ちょ……」


 口を開いたものの、どこか躊躇ちゅうちょしている――そんな声が、後ろから聞こえてきた。


 振り返った先に立っていたのは、


「ど、どうも」


 少しだけ気まずそうに顔を伏せる、もじもじしたリリウだった。


「あの、さ……今から、遊びに行っても、いい?」

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