01/05. 世話焼き少女は心配性(後編)
鼻息荒く、俺にぐわっと近づいてきたアミカちゃん。
「危険ですから、いろいろと危険ですから」
「あ、う、うん。確かにダークエルフは強大な魔力を操る危険な魔族ではあるけれど、とりあえずリリウは大丈夫だよ。ただ単に、食事をしに来るだけだから」
昨日は魔法の炎で脅されたりもしたけど、あんなのは悪ふざけみたいなものだし。
「ダークエルフかどうかなんて、そんなことはどうでもいいんですよ、牧師さま」
「えぇーっ、そ、そうなの……」
今の流れだと、魔族であるリリウに襲われる可能性もないわけじゃないから、十分に注意しろ――的な感じのアドバイスだと思ったんだけどな。
「一番の問題は、リリウさんが女性だってことですよ」
「は、はぁ……」
正直俺は、アミカちゃんの主張にピンと来ていない。
どういう意味なんだ、それ?
「牧師さまは誠実な方なので、まさかまさか間違いなんて起こらないと思いますけど、リリウさんの体つきは、その……いろいろと危険だと思います。特に、む、胸とか」
「あ、ああ、そういう……」
アミカちゃん、二段階くらい突っ込んだ心配をしてくれてたんだな。
男子の俺としては、ずいぶんと反応に困るテーマではあるんだけど。
「牧師さまと同じ年齢だそうですけど、やっぱり魔族だからなのか、女性の私からしても、その……は、ハレンチというか、人間離れしているというか」
「ま、まぁね……う、うん」
「私、あと二年でああなれる自信がありません……うぅぅ」
「な、泣かないでもらえるかな、アミカちゃん」
なぐさめるっていうのも、何だか失礼な気がするし。
「やっぱり牧師さまも、胸の大きな女性には惹かれる部分があったりしますよね?」
「そ、そそ、そんなことないけどぉ……あはははは」
「…………」
やめてアミカちゃん。
無言のまま、細めた目で俺を見てこないで。
「……それはまぁ、牧師さまも男性ですから、私だって理解してないわけじゃありません。少しくらいは興奮してしまうこともあるでしょう。でも、やはり限度というものがあると思います」
「そ、そうだ、そうだとも」
「リリウさんは牧師さまに親しげに接しているようですし、もしかしたら……あ、あのハレンチな体で誘惑してくるかもしれません」
「い、いやぁ、あいつはそういう――」
「油でぬるぬるになって、裸のまま、牧師さまに……だ、だだ、抱きついてきたりするかもしれませんよ」
「もしかしたらだけど、俺の知らないうちに、俺ってものすごくマニアックな趣味嗜好を持つ変態キャラになってたりするのかな!?」
まさか村の人たち、俺のことをそんなふうに見てたりしてないよね?
リリウの戯れ言だけならとにかく、アミカちゃんにまで言われると、マジで不安になるぞ。
「どうか安心してください。もちろん心配はしていますけど、私は牧師さまのことを信じてますから。脚をテーブルに引っかけてバランスを崩したことを利用して、そのままついつい押し倒しちゃったなんていう、言い訳にもならない理由を主張して女性に覆い被さるようなハレンチ男性じゃないって、私はちゃんと知ってますから」
ごめんなさい、ごめんなさい。
口には出せないけど、とにかくごめんなさい。
くそう。
アミカちゃんの純粋な瞳の輝きが、俺の胸を締め付ける。
ここは、何とか話を終わらせよう。
「ま、まぁさ、俺のことはとにかく、リリウはいろんな意味で、きっと危ない魔族じゃないはずだよ。変なやつではあるけど、悪いやつじゃないって思うから」
「……牧師さまがそういうなら、そうなのかもしれませんけど」
しぶしぶながら、何となく納得してくれたっぽいアミカちゃん。
それでも、完全に――というわけにはいかないみたいで。
「私、できる限り牧師さまのことをチェックしますから。リリウさんにハレンチな誘惑をされてないか、これからも確認しますからね」
「あ、は、はい」
何だかよくわからないけど、俺はリリウと関わることになったことが原因で、まじめなアミカちゃんの管理下に置かれることになってしまったらしい。




