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ダークエルフの女の子が、聖職者と仲良くしたらダメですか?  作者: 渋谷 恩弥斎
第2章 少年牧師と、風を奏でる森の民
62/114

01/12. 気持ちだけもらっておこう

 それからの数日は、あっという間に過ぎていった。


 明るいうちは、リリウとフィンネを連れて、オドニオ森林での野草摘み。


 帰宅後は、演劇の脚本を担当するアミカちゃんのサポート。

 これには、マルセラ姉さんも協力してくれた。


 もちろん、日々の雑務もこなしながらだったし、いつのもわちゃわちゃもあったりと、とにかく慌ただしい毎日で。


 そんな中での夕食後の時間。


「……ど、どうでしょうか?」


 ウチの平屋の静かな一室で、アミカちゃんが心配そうに聞いてくる。


 俺は、となりにいるマルセラ姉さんと目を合わせた。


 うん。


 どうやら、姉さんも俺と同じ気持ちらしい。


「いいよ、アミカちゃん。すごくいい」

「村のみんなも、きっと喜んでくれるよ」


 俺と姉さんの賞賛に、アミカちゃんは一瞬間を置きつつも、


「ほ、本当ですか……よかったぁ」


 肩の荷が下りたように、安堵あんどの表情を見せてくれた。


 今日、アミカちゃんが持ってきてくれたのは、緑草祭の出し物である演劇の脚本。

 ガーシュ王国の建国を小冊子にまとめた文章だ。


 リリウとフィンネに食卓の後片づけを任せた俺は、姉さんと二人、この部屋で、アミカちゃんの作品を読ませてもらったというわけ。


 両親が歴史学者であるアミカちゃんの家には、もちろんたくさんの歴史書物がある。


 一方、牧師である俺の家にも、その手の本が多く残されている。


 アミカちゃんはそれらを参考に、正しく、けれどわかりやすく、ガーシュの歴史を、興味深い物語にしてくれたんだ。


 本当に完成度が高くて、これなら明日から、子供たちは演劇の練習に入れる。

 ここからまた、新しいスタートって感じかな。


「お二人が力を貸してくれたから、どうにか形にできたんです。ありがとうございました」

「何言ってるんだよ、アミカちゃん。俺たちは、ただちょっとアドバイスをした程度だから――そうだよな、姉さん?」

「うん。これは、あなたの作品よ、アミカちゃん。胸を張っていいんだからね」

「は、はい……そ、そこまで言っていただけると、少し照れてしまいますね」


 謙虚けんきょなアミカちゃんだけど、俺と姉さんの言葉には、戸惑いながらも笑顔を見せてくれた。


 だけど彼女は、


「とはいえ、一つ悩んでいるシーンがあって……」


 脚本全体の完成度とは別の部分に、どうも気がかりがあるみたいで。


 アミカちゃんがどのシーンを想定しているのか、俺にはすぐにわかった。


 たぶんそれは、姉さんも同じだろう。


「この脚本では、具体的な指摘を避けました。でも、それをすることが逆に、村のみんなを信じてくれたリリウさんを裏切ることになるんじゃないかって……もちろん、他のシーンも必要に応じて変更していくかもしれませんが、特にそのシーンは、最後まで考えさせてください」

「うん。俺はアミカちゃんに任せるよ、全部」


 細かいことは、何も言わなかった。

 アミカちゃんなら、一番いい表現を選んでくれる。

 俺は、その判断に従うのみ。


 姉さんもただ、優しく微笑むだけだった。


 さて。


「こんなにいい脚本を書いてもらったからには、俺もさらに頑張らないとな。とりあえず、舞台の大道具を作らないと」


 脚本のおかげで、どういうふうに物語が展開するのか、その具体的な内容がわかった。

 それらしく見えるように、いろいろと準備しないといけない。


「衣装も必要だよ、カッタくん。子供たちが歴史上の人物になりきるための特別な衣装」


 姉さんの指摘はもっともだ。


 建物や背景があったとしても、演者がいつもの服装じゃ、さすがに臨場感が出ない。


「確かに。これは、また村の人たちにお願いすることになりそうだな」

「私も手伝うよ、カッタくん」


 やる気を示すマルセラ姉さん。


 しかし、俺はそれを受け入れない。


「……姉さん、お裁縫さいほうとかできないでしょ?」

「うん、でも頑張る」

「き、気持ちだけもらっておくよ」


 いくらキラキラした笑顔で答えても、不器用な姉さんが舞台の衣装を作るなんて無理な話だ。

 指にい針を刺して大慌てするのが目に見えている。


「そういうことは牧師さまにお任せして、マルセラさんは私と一緒に、子供たちの演技練習に参加しましょう。そもそも、そういう役回りを与えられているんですから」


 気のくアミカちゃんは、戸惑う俺と脳天気な姉さんの姿に、素早く助け船を出してくれた。

 さすがの反応。

 いつもありがとう、アミカちゃん。


「あっ、そうだったね――はい、わかりました♪」


 カッタくぅーん、指に針を刺しちゃったよぉ――と訴えてくる未来の姉さんを回避できたところで、また今夜もけていく。


 緑草祭の本番は、日一日ひいちにちと近づいてきていた。

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