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ダークエルフの女の子が、聖職者と仲良くしたらダメですか?  作者: 渋谷 恩弥斎
第2章 少年牧師と、風を奏でる森の民
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01/09. 最近の夕食事情

「そんなことがあったんですね」


 日暮れ後、俺の家。


 テーブル越しに対面しているアミカちゃんが、スプーンを片手に言う。


「森の奥に集落があるのは知っていましたけど、私は出会ったことがありません」


 俺、リリウ、フィンネ、マルセラ姉さんといっしょに、彼女を含めて夕食の時間だ。


 両親が村を離れているアミカちゃんは、事実上の一人暮らし。

 今までも、ウチや教会堂を訪ねてきてくれていたけど、夜は気を遣っていたのか、ここで夕食を食べていくことなんて、ほとんどなかったんだ。


 けれど俺の家、いきなり三人も増えちゃったから、もう一人加わったところで大きな変化もない。


 だから、リリウたちが本格的にウチで暮らすようになってすぐ、俺からアミカちゃんに、そのむねを伝えた――『よかったら、夜もウチにお呼ばれしてもらえないかな』って。


 それからは、ほとんど毎日、このメンバーで食卓を囲んでいる。


 もちろんアミカちゃんはウチで寝泊まりしているわけじゃないけど、何だかもう、彼女を入れた五人みんなで住んでいるような感じになっているんだ。


 ちなみに今夜のメニューは、さっそくの味見も兼ねて、新鮮な野草を使ったホットスープ。

 硬めのパンを浸して食べるのがおすすめかな、作り手としては。


「オドニオ森林のキルムーリ……どうやら、本当に恥ずかしがり屋な種族みたいですね」


 俺が話した森での一件に、アミカちゃんは興味を示していた。


 すると、とりあえず今夜の野草料理にも文句はないらしいあいつが、納得したように口を開く。


「あなたたちが騒いでいたのは、そういうことだったのね」


 自分が楽をするために、あの時は熱心にマサンを教育していたフィンネ。

 いきなり現れた直後、すぐさま消えていったキルムーリに、彼女は気づいていなかったらしい。


「魔族なんだから、そのキルムーリも魔法が使えたりするのよね? 私の仲間にしてあげようかしら、ふっふっふ」

「おいおい、変な考えを起こすなよ」 


 例の勧誘を始めようとしたフィンネを、俺が注意する。


「ちょっと顔を合わせたくらいで逃げ出しちゃうんだから、あんたみたいにグイグイ行くタイプなんて、きっと話すら聞いてもらえないよ」


 経験済みのリリウが、俺に続いた。


 確かに、今日のキルムーリから想像するに、ぜったい苦手そうだもんな、フィンネのようなやつ。


「何よ、わからないじゃない。もしかしたら、その集落の全員が、私に従ってくれるかもしれないのよ。そうしたら、いきなり私、森のキルムーリたちの女王――これってすごいじゃない」

「カッタやあたしにさえ断られているあんたに、キルムーリたちが従うわけないよ」

「か、カッタは、もう私の魅力にメロメロになる寸前だし、いざそうなったら、あなただって私に従うことになるわよっ」


 いつ俺が、お前の魅力にメロメロになったって?

 寝言みたいな思い込みは勘弁してくれ。


「カッタは、大きな胸の女の子が大好きなエロエロ牧師だから、フィンネになんかメロメロにならないよ」


 俺の好みを決めつけながら、ちぎったパンをほおばるリリウ。

 妙な言いがかりはとにかくとして、彼女は暗に、フィンネの控えめな胸を攻撃しているらしい。


「や、やっぱり牧師さま、大きな胸の女性が……うぅぅ」


 こら、リリウ。


 なぜかアミカちゃん、顔を伏せちゃったぞ。


 よくわからないけどアミカちゃん、最近は胸の話題に敏感なんだからな。


「あ、あなたみたいな、胸が飛び出ているだけのうぶうぶダークエルフなんかより、私の方がエロエロカッタを満足させることができるんだからっ」


 お前も、俺を『エロエロ』呼ばわりかよ、フィンネ。


「なんちゃってビッチなんかより、胸が飛び出ているだけマシだよ、あたしの方が」

「な、なな、なんちゃってビッチじゃないわよ、私っ!?」


 持つ者としての余裕を見せるリリウと、痛いところを突かれて慌てるフィンネ。


「す、すごいんだからね!? と、とと、とにかく、私はすごいんだから、いろいろ!!」


 具体性が何もないフィンネを、適当にあしらうリリウ。


「冷めちゃうから、早くスープ飲みなよ」


 うん。


 彼女への対応としては、確かにそれが正解だな。


「ほら、冷めちゃう冷めちゃう」

「ほ、本当よ!? 本当なんだからねっ」

「牧師さまは、やっぱり……うぅぅ」


 受け流すリリウ、むきになるフィンネ、元気のないアミカちゃん――カオスな食卓になっちゃったな、今夜も。


 するとマルセラ姉さんが、不意にポンと手を叩く。


「じゃあカッタくんは、胸の大きな年上お姉さんが一番好きってことでいいわよね、みんな?」


 場の空気を整えようとしたのか、年長者として、マルセラ姉さんがまとめ――てないね、全然!?

 その『胸の大きな年上お姉さん』の話、まったく出てないからね!?


「よくないっ」

「よくないわっ」

「よ、よくありませんよ、マルセラさんっ」


 ……お、おう。


 俺がつっこみを入れる間もなく、三人が素早く声を上げた。


「ふふっ」


 その反応に、なぜか微笑む姉さん。


 まぁ、最近の俺の夕食は、たいがいこんな感じだった。

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