表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダークエルフの女の子が、聖職者と仲良くしたらダメですか?  作者: 渋谷 恩弥斎
第2章 少年牧師と、風を奏でる森の民
57/114

01/07. 意外に豊富な野草の知識

 やることが決まった以上、善は急げだ。 

 子供たちをアミカちゃんとマルセラ姉さんに任せた俺は、かごを肩にかけながら、リリウとフィンネを連れて、生い茂る木々の中を歩いていた。


 ここは『オドニオ森林』。

 ガーシュ王国東部に広がる森林帯だ。


 ナコタ村は、この森の南端なんたんに位置しているため、村から南に進んでいけば、平野部にある他の集落へ行くことができる。

 村の人たちも、近隣の栄えた町に出る場合など、そちら側へ抜けることが多い。

 整備された道があるから安全というわけだ。


 対して、俺たちが今いるのは逆方向。

 つまり、ナコタ村から見て北側になる。


 こっちはとにかく木、林、森――といった具合で、ほとんど人の手が入っていない。

 村に現れるタキシムなんかは、十中八九、こちら側から生まれてしまうんだ。


 そういうわけで、村の人はもちろん、一般の旅人なんかも、ほとんど足を踏み入れることなんてない。

 それが、ナコタ村の北に広がるオドニオ森林という地域。


 言い換えればそれは、新鮮な野草があるってこと。

 だから、こうしてやってきたんだ。


「今日はもう午後の時間帯だから、あまり奥に行くのはやめよう。この辺りで、食用の植物を探すんだ」


 リリウとフィンネに呼びかける。


 森の夜は早い。

 日が傾いたと思ったら、すぐに真っ暗だ。

 無理をする必要なんてない。


「これは、カッタ?」

「大丈夫、食べられるよ」


「向こうのやつは?」

「あれも平気だな。でも、そのとなりの木の下に生えているのはダメだ。口にしたらしびれちゃうから」


 まじめに聞いてきたリリウに、俺が説明する。

 あの頃は嫌々だったけど、教会の施設で学んだ知識、けっこう役に立つんだよな。


 積極的なリリウに対して、


「草なんて食べたくないわよ……」


 フィンネはどうもやる気がない。


「こんなもの、苦いし」


 とはいえ、手はしっかり動かしているから、うん、文句は言えないな。


「お腹だってふくれないし」


 そうそう、それは食用。


「この国を支配してやろうっていう私に、全然ふさわしくないわ」


 おお、それも食べられる植物だ。


 わかってるじゃないか、フィンネ。


「やっぱり私は、都市部でこそ輝くのよね。こんなものでお祭りをやろうとしている田舎の村じゃ、私の価値は発揮されないのよ」


 おいおい、それも毒のない野草だぞ。


 もちろんいいんだけど、どうしてあいつ――。


「フィンネ」

「何よ、ちゃんと働いてあげているでしょーが」


 声をかけた俺に、彼女が反発してくる。


 小言を言われるとでも思ったのかもしれない。


「お前、野草の知識、どこで学んだんだよ? 今までにんだ植物、全部食用のやつだぞ」


 不思議に感じた俺は、フィンネに尋ねた。


 毒を持つものは意図的に避けて、彼女はちゃんと、使える植物だけを選んでいたんだ。


 村で長年暮らしている年輩の方でさえ、たまに間違えて大騒ぎになるっていうのに。


「えっ? こんなの簡単じゃない」


 俺の問いかけに、さも当然のように答えるフィンネ。


「私はね、好きでもないこういう野草を、たくさん食べてきたのよ。毒があるかないかなんて、自然と覚えちゃったわ」

「お前、野草嫌いだったのか? 俺、ずいぶん料理に使ってたぞ」

「あなたのは、おいしかったから大丈夫。だからこれからも、おいしいものを作りなさい」

「そ、そりゃどうも」


 うれしいけど、どうも釈然しゃくぜんとしないなぁ。


 まぁ確かに、俺が出した野草を使ったメニュー、残さず食べてくれてたっけ。


「この国を支配したら、私、あなたが料理した野草以外、ぜーったいに食べないわ。だから、こんなものを食べなくても済むように、早くガーシュ王国を私のものにしてやるんだから――ふんっ」


 気合いを入れるように、これまた食用の植物を摘んでいくフィンネ。


 それが、この国を支配しようとする動機?

 うーん、何だかなぁ。


 てか、野草メニューは俺のしか食べないって、ちゃっかり入れられちゃってるよな、その王国支配の仲間に。


 そっち方面はとにかくとしても、フィンネは俺と同じ歳の女の子。

 リリウと出会い、彼女を追ってナコタ村に来るまで、おそらく一人旅だったんだろう。

 使えるお金なんてたかが知れてる。

 野草で食べつないでいたとしても、そりゃ納得だ。

 口にしたくなくなるのも理解できる。


「安心しろ。村にいる限りは、お前が満足するような野草の料理、俺が作り続けてやるから」


 フィンネの言動がいじらしく思えた俺は、笑いながら伝えた。


「あら、それってプロポーズ? なら、私の魅力に落ちたってことよね、あなた」


 作業を止めたフィンネが、挑発的に返してくる。


「おいおい、都合よく解釈するなよ」


 こっちは、キャンキャン吠える野犬を、ペットとして手懐てなずけるような感覚だったんだからさ。


 すると、


「さっきから口しか動いてないよ、カッタ」


 チクリと、リリウが刺してきた。


「……はいはい、やります、やりますよ」


 怒られないように、俺は近くの野草を摘み始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ