01/06. おーっ!!
「じゃあ、緑草祭に向けた作戦会議を始めるぞ」
午後のナコタ教会堂。
簡単に昼食を済ませた俺は、アミカちゃんや村の子供たちに呼びかけ、ここへ集まってもらった。
もちろん、リリウ、フィンネ、マルセラ姉さんもいっしょだ。
「それとなく聞いているかもしれないけど、今年はみんなに、ガーシュ王国の歴史――具体的には、この国が生まれて、今の形になるまでのお話を劇にして、お祭りで披露してもらいたいんだ」
題材は、建国物語に決めた。
当然、今日までの連なりのすべてを、シンプルでわかりやすい脚本にすることなんて不可能。
重要な出来事の一部を選んで、それをまとめるしかない。
だとすれば、やっぱり『初め』が一番いいよな。
ガーシュ王国が成立するまでの流れは、この国の政治的仕組みのみならず、俺が牧師であることを基礎づけている宗教にも、とても大きな影響を与えているわけだし。
何より、歴史に詳しくない子供たちも、そのスタートなら、きっと理解しやすいはず。
「難しく考えなくていい。つまりは、本当にあった古い時代のお話を、みんなで学びながら、その登場人物になりきって大人たちに見せてあげるんだ――どう、おもしろそうだろ?」
俺が尋ねると、
「やるっ」
「やりたぁーい」
「お話に、お姫さまはでてくるかしら?」
「剣で戦う役がいいな、俺は」
それぞれに希望はあるみたいだけど、子供たちは全員、好意的に受け入れてくれたようだ。
「よし、じゃあやろう。緑草祭を、みんなで盛り上げるんだ」
「「「「「「「「「「はーいっ」」」」」」」」」」
大きな返事。
これで、子供たちの了解はとれた。
「アミカちゃん」
すぐさま俺は、奥の方で見守っていた彼女に伝える。
「アミカちゃんには、劇の演出と脚本をお願いしたいんだ。ガーシュ建国の歴史を正しくまとめて、わかりやすい物語にしてもらいたい」
「わ、私……ですか?」
いきなりだから、さすがにびっくりした様子。
両親が共に歴史学者であるアミカちゃんは、たぶん俺なんかよりも詳しく歴史を理解している。
何より、それを学ぶ大切さをわかっているんだ。
これ以上の適任者は、ナコタ村にはいない。
子供たちにも信頼されているからね。
「任せてもいいかな?」
「う、上手くできるかわかりませんが……でも、頑張ります」
力強く答えてくれたアミカちゃん。
これで、演劇の半分は完成したも同然だな。
「それで、マルセラ姉さんには、アミカちゃんのサポートをお願いしたい。さすがに一人じゃ、アミカちゃんの負担が大きいからさ」
「うん、わかったよ、カッタくん」
うなずくマルセラ姉さん。
教会の施設で学び、さらに聖剣士でもある姉さんは、ちゃんと国の歴史を学んでいる。
子供たちとも仲良しだから、アミカちゃんの力になってくれるはずだ。
「私の出番も、当然あるんでしょうね」
主役登場――的な感じで、フィンネが声を上げる。
「歴史とかよくわからないけど、女王の役とかなら、喜んで演じてあげるわよ――ふっふっふ」
「残念だが、中心は子供たち。今回、お前の出番はないよ」
「えぇーっ、つまんないわね。ダークエルフの女王とか、探せばいるんじゃないの、昔の人物に」
俺の説明に、フィンネは不満そう。
その口振りからして、彼女、本当に歴史には疎そうだ。
「俺、リリウ、フィンネも、もちろん演劇の手伝いはする。だけど、どちらかというと別の仕事だな、緑草祭の準備に関しては」
「何? おもしろいことなの?」
食いついてきたフィンネには悪いが、たぶん彼女の期待に沿うものじゃない。
「俺たちは森の奥で、野草や山菜の採取だ」
「うげぇーっ、やっぱりそれなのぉ……」
当然のように嘆くフィンネ。
まぁ、予想通りだけど。
「この季節の植物をおいしくいただいて、その恵みに感謝するっていうのが本来の意味だからな。何はともあれ、みんなで食べる食材がないことには始まらないんだよ」
これに関しては、村の人も各自で行動している。
けれど、体術や魔法を会得していない彼らは、村の周りの野草を摘むのが精一杯。
無防備に森を進めば、いつものタキシムや、獰猛な獣に襲われる心配もあるからだ。
一般的に食用の野草や山菜は、緑が深い場所に生えているものほど味が濃く、さらには栄養があると言われている。
普段なら俺も、あえて森の奥まで行くことなんてないんだけど、こういう機会だから、特別な食材を村のみんなに提供してあげたいんだ。
俺、リリウ、フィンネなら、森の魔族や獣くらい何てことはない。
だから、安全に目的を達成できるってわけさ。
「私が、どうしてそんなことしなくちゃいけないのよ、まったく」
「まぁ、いいじゃない」
ぶーぶー言っているフィンネを、となりのリリウがなだめる。
「あたしたちが頑張らないと、当日のメニューが作れなくなっちゃうんだから」
「い、いい子ぶっちゃって……もう、わかったわよ」
口を尖らせながらも、納得してくれた様子のフィンネ。
よし、じゃあ、あらためて――。
「これで、今日の作戦会議は終了。ここからみんなで準備して、思い出に残る緑草祭にするぞ」
「「「「「「「「「「「「「おーっ!!」」」」」」」」」」」」」
元気よく重なる声が、教会堂に広がった。
「お、おーっ……」
ただ、フィンネの声だけ遅れたけれど。




