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ダークエルフの女の子が、聖職者と仲良くしたらダメですか?  作者: 渋谷 恩弥斎
第2章 少年牧師と、風を奏でる森の民
56/114

01/06. おーっ!!

「じゃあ、緑草祭に向けた作戦会議を始めるぞ」


 午後のナコタ教会堂。


 簡単に昼食を済ませた俺は、アミカちゃんや村の子供たちに呼びかけ、ここへ集まってもらった。


 もちろん、リリウ、フィンネ、マルセラ姉さんもいっしょだ。


「それとなく聞いているかもしれないけど、今年はみんなに、ガーシュ王国の歴史――具体的には、この国が生まれて、今の形になるまでのお話を劇にして、お祭りで披露してもらいたいんだ」


 題材は、建国物語に決めた。


 当然、今日までの連なりのすべてを、シンプルでわかりやすい脚本にすることなんて不可能。

 重要な出来事の一部を選んで、それをまとめるしかない。


 だとすれば、やっぱり『初め』が一番いいよな。

 ガーシュ王国が成立するまでの流れは、この国の政治的仕組みのみならず、俺が牧師であることを基礎づけている宗教にも、とても大きな影響を与えているわけだし。


 何より、歴史に詳しくない子供たちも、そのスタートなら、きっと理解しやすいはず。


「難しく考えなくていい。つまりは、本当にあった古い時代のお話を、みんなで学びながら、その登場人物になりきって大人たちに見せてあげるんだ――どう、おもしろそうだろ?」


 俺が尋ねると、


「やるっ」

「やりたぁーい」

「お話に、お姫さまはでてくるかしら?」

「剣で戦う役がいいな、俺は」


 それぞれに希望はあるみたいだけど、子供たちは全員、好意的に受け入れてくれたようだ。


「よし、じゃあやろう。緑草祭を、みんなで盛り上げるんだ」

「「「「「「「「「「はーいっ」」」」」」」」」」


 大きな返事。


 これで、子供たちの了解はとれた。


「アミカちゃん」


 すぐさま俺は、奥の方で見守っていた彼女に伝える。


「アミカちゃんには、劇の演出と脚本をお願いしたいんだ。ガーシュ建国の歴史を正しくまとめて、わかりやすい物語にしてもらいたい」

「わ、私……ですか?」


 いきなりだから、さすがにびっくりした様子。


 両親が共に歴史学者であるアミカちゃんは、たぶん俺なんかよりも詳しく歴史を理解している。

 何より、それを学ぶ大切さをわかっているんだ。

 これ以上の適任者は、ナコタ村にはいない。

 子供たちにも信頼されているからね。


「任せてもいいかな?」

「う、上手くできるかわかりませんが……でも、頑張ります」


 力強く答えてくれたアミカちゃん。


 これで、演劇の半分は完成したも同然だな。


「それで、マルセラ姉さんには、アミカちゃんのサポートをお願いしたい。さすがに一人じゃ、アミカちゃんの負担が大きいからさ」

「うん、わかったよ、カッタくん」


 うなずくマルセラ姉さん。


 教会の施設で学び、さらに聖剣士でもある姉さんは、ちゃんと国の歴史を学んでいる。

 子供たちとも仲良しだから、アミカちゃんの力になってくれるはずだ。


「私の出番も、当然あるんでしょうね」


 主役登場――的な感じで、フィンネが声を上げる。


「歴史とかよくわからないけど、女王の役とかなら、喜んで演じてあげるわよ――ふっふっふ」

「残念だが、中心は子供たち。今回、お前の出番はないよ」

「えぇーっ、つまんないわね。ダークエルフの女王とか、探せばいるんじゃないの、昔の人物に」


 俺の説明に、フィンネは不満そう。


 その口振りからして、彼女、本当に歴史にはうとそうだ。


「俺、リリウ、フィンネも、もちろん演劇の手伝いはする。だけど、どちらかというと別の仕事だな、緑草祭の準備に関しては」

「何? おもしろいことなの?」


 食いついてきたフィンネには悪いが、たぶん彼女の期待に沿うものじゃない。


「俺たちは森の奥で、野草や山菜の採取だ」

「うげぇーっ、やっぱりそれなのぉ……」


 当然のように嘆くフィンネ。


 まぁ、予想通りだけど。


「この季節の植物をおいしくいただいて、その恵みに感謝するっていうのが本来の意味だからな。何はともあれ、みんなで食べる食材がないことには始まらないんだよ」


 これに関しては、村の人も各自で行動している。


 けれど、体術や魔法を会得していない彼らは、村の周りの野草をむのが精一杯。

 無防備に森を進めば、いつものタキシムや、獰猛どうもうな獣に襲われる心配もあるからだ。


 一般的に食用の野草や山菜は、緑が深い場所に生えているものほど味が濃く、さらには栄養があると言われている。


 普段なら俺も、あえて森の奥まで行くことなんてないんだけど、こういう機会だから、特別な食材を村のみんなに提供してあげたいんだ。


 俺、リリウ、フィンネなら、森の魔族や獣くらい何てことはない。


 だから、安全に目的を達成できるってわけさ。


「私が、どうしてそんなことしなくちゃいけないのよ、まったく」

「まぁ、いいじゃない」


 ぶーぶー言っているフィンネを、となりのリリウがなだめる。


「あたしたちが頑張らないと、当日のメニューが作れなくなっちゃうんだから」

「い、いい子ぶっちゃって……もう、わかったわよ」


 口をとがらせながらも、納得してくれた様子のフィンネ。


 よし、じゃあ、あらためて――。


「これで、今日の作戦会議は終了。ここからみんなで準備して、思い出に残る緑草祭にするぞ」

「「「「「「「「「「「「「おーっ!!」」」」」」」」」」」」」


 元気よく重なる声が、教会堂に広がった。


「お、おーっ……」


 ただ、フィンネの声だけ遅れたけれど。

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