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ダークエルフの女の子が、聖職者と仲良くしたらダメですか?  作者: 渋谷 恩弥斎
第2章 少年牧師と、風を奏でる森の民
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01/04. 緑の恵みを祝う祭(3)

 それとなく悩んでいると、フィンネに召喚魔法をねだっていた子供たちが、俺のところにやってくる。


「お祭り? お祭りやるの?」

「わーい、やったぁ」

「でも、この時期のお祭りって、緑の草を食べるやつだろ? 俺、苦いから嫌いなんだよな……」


 どうやら、先ほどの会話が聞こえていたらしい。


 加えて、


「ふーん、おもしろそうじゃない」


 興味を持ったのか、フィンネが話に入ってきた。


「私も参加してあげるわ、そのお祭り」

「……何で偉そうなんだよ、お前は」


 まぁ、楽しんでもらう分には、俺としても本望だけど。


「参加するなら協力もしろよ。俺といっしょに、森の奥まで山菜採さんさいとりだからな」

「えぇーっ、めんどくさいわね」

「準備を頑張るからこそ、当日を楽しめるんだぞ」


 とはいえ、その当日に何をしたらいいのか、まだ決まっていないが。


 すると子供たちが、前回の緑草祭で、村長の講演を聞いたときの思い出を口にする。


「去年の歴史の昔話、俺、眠たくなって寝ちゃったんだよなぁ」

「僕も」

「……そんなことあったっけ? 覚えてないや」


 思い出というか、記憶に残っていない子までいるな。


 村長の話、大人の方には好評だったけれど、確かに幼いこの子たちにしてみれば、いささか退屈だったかもしれない。

 教会施設で暮らしていた当時の俺も、歴史の授業は、かなり苦痛だったからな。


「昔の話をされてもな」

「僕たちにはわからないしね」

「関係ないもんね、歴史なんて。おじいちゃんやおばあちゃんの話だもん」


 まだ数年しか生きていない彼らには、あまりピンときていないんだろう。

 それぞれに素直な感想をもらしていた。


 すると、


「それは違うんじゃないかな」


 アミカちゃんが、諭すように口を開く。


「私たちはみんな、過去の歴史と無関係ではいられないんだよ」


 優しく、ゆっくりと導くように。


「今、この国で生きている誰もが、昔の人が喜んだり悲しんだり、仲良くしたり争ったりした結果の上に生きている――だからね、私や、私よりも若いみんなにこそ、歴史は語りかけているんだよ。おじいちゃんやおばあちゃん、そのまたおじいちゃんやおばあちゃんがつないでくれた時間を、また次の人たちに届けるためにね」


 まったく。


 俺なんかより何倍も、アミカちゃんは積み重ねられてきた時の営みってやつを理解している。


 それを学ぶことの意味を、正しく。


 さすがは、優秀な歴史学者の娘だな。


「だから、歴史は大切なんだよ、みんな」


 微笑みかけたアミカちゃんに、子供たちは全員、まじめな顔でうなずいていた。


 彼女の言うように、俺たちの世代や、この幼い彼らにこそ、歴史を学ぶべき意味がある。

 半人前の聖職者である俺はとにかくとしても、この村の子供たちは間違いなく、ガーシュ王国の未来を担っていく希望ある国民なんだから。


 そんなことを考えていたら、頭の中に、いろいろな思いが浮かんできた。


 歴史を学ぶことは重要。


 だけど、単なる講演は眠くなる。


 幼い子供でも興味を抱くこと。


 他人事じゃなくて、あたかも自分の物語かのように受け入れられる仕組み。


 緑草祭の出し物――。


「……そうか、演劇だ」

「えっ?」


 思わずつぶやいていた俺に、アミカちゃんが反応する。


「演劇だよ、演劇。この国の歴史をわかりやすい形の脚本にして、それを、村の子供たちが演じるんだ。そうすれば、この子たちも過去を『実感』できるし、大人たちは興味深い出し物として楽しむことができる――緑草祭のメインとして、どうかな、アミカちゃん?」


 少し興奮してしまった俺に、彼女は少し驚いていたけど、


「いいですね。素晴らしいアイデアだと思いますよ、牧師さま」


 それでもすぐにお墨付きをくれたんだ。


 さらに、


「演劇? 僕たちが、お祭りで劇をやるの?」

「ちょ、ちょっと恥ずかしいけど、おもしろそうだね」

「いいじゃん、俺やりたぁーい」


 当事者である子供たちも、どうやら受け入れてくれているみたい。


 よし。


 これで、今年の緑草祭準備に取りかかれるぞ。

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