04/07. また一人、ダークエルフの女の子が仲間に加わった?
結局お昼抜きになってしまった俺は、夕飯の料理中。
今日のメニューは、香辛料が決め手の山菜スープだ。
「手伝おうか、カッタくん?」
「いいよ、ゆっくり座ってて」
背中に声をかけてきたマルセラ姉さんに、俺は答えた。
ありがたいけど、こういうことには不器用だからな、姉さん。
「昔はいっしょに、おかしとか作ったりしたよね」
「い、いっしょにっていうか、姉さんの後始末を、俺がしてたような気が……」
まぁ、懐かしい感じは、ちょっとあるかな。
施設では大人の人が食事を用意してくれてたけど、おやつとかは、教育も兼ねて手作りしたりもしてたから。
「カッタくんの料理、お姉ちゃんは大好きだよ」
うれしそうなマルセラ姉さん。
ある意味、姉さんが料理オンチだから、俺の家事スキルが上がったっていう面もあるんだけど……喜んでもらえるなら、それはそれでいいか。
「お腹空いたわよ、カッタ。早くしなさいよ」
「待ってろって。俺だって、お昼抜きで腹ぺこなんだからさ」
急かしてきたフィンネに、俺が答えると、
「……どうしてあんたが、普通にここにいるのよ、もう」
不満そうに、リリウが嘆いていた。
そう。
何やかんやでフィンネは今、俺の家のテーブルに向かって、まるで招かれたゲストみたいに、のんびりとくつろいでいるんだ。
「文句でもあるのかしら、リリウ? 私はちゃんと、この家の主であるカッタに頼まれたから、仕方なく来てやったんだからね」
頼んでなんかいないけど、具体的な行き場所がない女の子を、外に放置するのは胸が痛む。
心配の必要はないだろうが、下手に動かれて、村の人に迷惑をかけられても困るし。
そんなこんなで本人も望んでいるようだから、フィンネはしばらくウチで過ごすことになったんだ。
「リリウもほとんど、この家の居候みたいなものなんでしょ? だったら、私を咎めるなんてできないはずじゃない」
「くっ……フィンネのくせに、また調子に乗っちゃって」
「まぁまぁ、いいじゃない。フィンネちゃんも、もう悪いことはしないって約束しているんだし、部屋だって、余分があるんだから」
ケンカが始まりそうなリリウとフィンネをなだめるみたいに、姉さんが間に入る。
「私もカッタくんも、大人数での生活には馴染みがあるから、全然平気よ――ねぇ、カッタくん?」
「う、うん……」
面倒なことにさえならなければ、もちろん俺は構わない。
面倒なことに、ならないのならば。
「大丈夫よ、リリウ。あなたのじゃまにはならないわ――私、カッタのベッドでいっしょに寝るんだから」
……ほら、始まったよ。
フィンネの妙ちくりんな宣言に、
「ば、バカなこと言わないでよっ!!」
リリウだけじゃなくて、
「そうよ、フィンネちゃん。だったら私が、カッタくんと同じベッドに入るんだから」
マルセラ姉さんまで噛みついた。
「私の当面の目的は、カッタを誘惑することなんだから、そんなの当たり前でしょ?」
そんな知識も度胸もないくせに、相変わらずフィンネは、その手の女の子としての態度を崩しはしない。
「どうやらカッタってば、ダークエルフの女の子に、かなりのえっちぃ興味があるみたいじゃない?」
ああ、変な設定が、勝手に流布されていく。
「私にメロメロになるのも、もはや時間の問題ね、ふっふっふ」
「か、カッタは確かにダークエルフっ娘が好きみたいだけど、大好きみたいだけど」
何でそんなに強調するんだよ、リリウ。
「カッタはあくまで、胸の大きな女の子専門だからっ。胸の大きなダークエルフっ娘を油でぬるぬるにしたいって考えている、そういうスケベ男子だからねっ!!」
もはやすごいな、その誤解!?
「ちょっと違うよ、リリウちゃん。カッタくんが胸の大きな女の子が好きなのはその通りだけど、カッタくんの好きなシチュエーションは、血のつながらないお姉さんのふくよかな胸をふにふにしながら、愛を持って体と体でつながっちゃう系のやつなんだよ」
ちょっとじゃなくて、すごく違うよ、マルセラ姉さん!?
俺のことなんか差し置いて、俺のことを話している三人。
にぎやかなのは結構だけどさ、俺にも一応立場ってものがあるんだから、外ではぜったい、ぜーったいにやめてくれよな、そういうの。
やかましいやり取りを背中で感じながら、俺は心を静めるべく、ひたすらスープをかき混ぜていた。




