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ダークエルフの女の子が、聖職者と仲良くしたらダメですか?  作者: 渋谷 恩弥斎
第1章 少年牧師と、ダークエルフの少女
35/114

04/05. 続・わちゃわちゃな教会堂(2)

「……まだいたの、フィンネ?」

「いるわよ、ずっといるわよっ」


 本気なのか、からかっているのか――リリウの問いかけに、フィンネは声を荒らげた。


「カッタもあたしも、あんたの仲間になんかならないから――はい、終わり。じゃあ帰って」

「な、何よ、それ!? あ、あなたはとにかく、カッタは少し、私の魅力に心揺らいでたんだからねっ」


「……あんたね、自分から『私はあなたと違って、もう大人の女なんだから』とか言ってたくせに、結局カッタに押し倒されたら、顔を真っ赤にしてたじゃないの」

「はうっ!?」

「なんちゃってビッチの振りなんかしても、何の役にも立たないよ、そんなの」


 リリウがズバッと、フィンネに指摘する。


 まぁ、そういうことなんだろうな。


 これは女の子じゃない俺でも、何となくわかる。


「く、くぅぅ……わ、私が本気になれば、どんな男の子だってイチコロなんだからねっ」


 図星だからか、悔しがるフィンネ。


 けれど俺としては、背伸びした小悪魔的仕草で迫られるより、同世代の女の子らしい恥じらいのある表情を見せられた方が、正直、何倍も『やばい』って思っちゃうけどな。


「バカなこと言ってないで、さっさとどっかに行っちゃってよ。この村には、あんたの野望に協力するようなやつはいないんだから」

「ぐ、ぐぅぅぅっ」


 リリウにあしらわれて、フィンネはぐうの音も――もとい、ぐうの音しか出ない。


 悪い魔族じゃなさそうだけど、その胸に抱いている目的といい、いきなり仕掛けてくる攻撃性といい、ちょっと面倒な女の子だな、フィンネは。


 まぁ、リリウには完全にフラれたわけだし、俺を誘惑してどうこうっていうのも、根は純粋な彼女には無理そうだ。


 旅をしているみたいだから、これで去ってくれることだろう――なんて思っていたら、フィンネがとんでもないことを言い出す。


「い、いいわ、決めた――私、ここに残ってカッタをメロメロにしてやるわっ」

「…………え?」


 突然、俺を指さしてきたフィンネに、俺は理解が追いつかない。


「な、何でそうなるの、フィンネ!? もう用はないんだから、あんたはさっさと――」

「ふっふっふ、戸惑っているみたいね、リリウ」


 立ち上がったリリウに、フィンネは満足そうに笑う。


「あなたの言葉を信じるなら、カッタは別に彼氏とかじゃないんでしょうけど、少なくともあなたにとって、彼が親しい男の子だってことはわかったわ」

「そ、そんなこと……」

「カッタが私に夢中になれば、私をこけにしたリリウにも復讐できるでしょ? それに、カッタを取られたのが悔しくなって、もしかしたらあなたも、私の勢力に加わることになるかもしれないし」


 うわぁ、ずいぶんと都合のいい計算だな、フィンネ。


「勝手なこと言わないでよっ。あたしたちに対してならまだしも、あんたさっき、アミカや子供たちにさえも、召喚したマサンを仕向けたじゃない。村の中で呪文を唱えるような、そんな――」

「あれはたまたまよ。別に、狙ってやったわけじゃないわ。だいたい、聖剣士がいたんだから、結果的に問題なかったじゃない」


「あ、あんたねぇ」

「本当に丸くなっちゃったわね、リリウ。自分から人間を襲うようなことはしなかったまでも、他の魔族がどうしようと、いちいち文句なんか言わない感じだったのに」


 確かに、リリウは変わってきたかもな。


 最初から凶暴な魔族ではなかったけれど、何ていうか――『悪くはない』から『心優しい』になってきたって感じ。


「私はね、この国を支配してやろうとしている、崇高なダークエルフよ。たとえ同族だからって、そもそも私に、あなたの考えを押しつけようとするのが無理な話なんだから」

「……なら、もしもあんたが、本当にこの村の人に手を出すようなら、あたしは――本気であんたと戦うよ」


 にらみ合う、ダークエルフ二人。


 一瞬、身を刺すような空気が教会堂を包み込んだ。

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