04/03. わちゃわちゃな教会堂(3)
「か、カッタは、す、スケベなんだから、本気にしちゃうよ、そんなこと言ったらさっ」
「いいわよ、別に。私はあなたと違って、もう大人の女なんだから」
おしりに痛みを感じている俺の目の前で、何やら言い合うダークエルフの女の子二人。
「あ、あんたがよくても、あ、あたしは……だ、ダメなの」
「何でよ。別にカッタは、リリウの彼氏とかじゃないんでしょ?」
「そ、そうだけど……か、カッタは、胸の大きな女の子が大好きだから、あんたなんかに興味ないのっ」
「なっ!? い、言ってくれるわね、リリウ……いいわよ。じゃあ、私がカッタに、女の子の本当の魅力を教えてあげるわ――えいっ」
そこでフィンネは、まだしりもちをついたままの俺に覆い被さるようにして、細い脚を開いて乗っかってきたんだ。
「お、おい、フィン――」
「教会堂の中で、人間の牧師がダークエルフと――うふっ♪ 考えただけでドキドキしちゃうでしょ、カッタ?」
押されたらすぐにキスされちゃうような距離感だから、俺は思わず、フィンネの口元に意識を集中させてしまう。
「緊張しなくても大丈夫。すぐ……すぐに私が、カッタのことを気持ちよくしてあげるから。だからね、私と――」
「いい加減にしなさいよ、フィンネ!!」
止める――というより、もう突進。
いきなり飛び込んできたリリウのせいで、
「うわっ!?」
俺はフィンネといっしょに、またしても床を転がってしまった。
「い、痛って……あ、あのなぁ、リリウ。お前、間に入るにしても、もっとやり方が――う、うわっ!?」
再び声を上げてしまった俺。
今度は別に、リリウに突き飛ばされたからじゃない。
タックルもどきで体勢が変化したのか、いつの間にか、俺が倒れたフィンネに乗っかってしまっていて、
「あぅ……んっ」
そしてなぜか俺の右手が、フィンネの小さな胸の上にあったからだ。
薄着のフィンネだから、いくら控えめなふくらみでも、その感触と温もりは、もう完璧に俺の手に伝わってきちゃっていて。
「ご、ごご、ごめん、フィンネ!?」
だからもう、俺はひどくテンパっていた。
「お、俺、全然そういうつもりないから。す、すぐに、すぐにどくから、いやらしくてぬるぬるなこととか、そういう――」
話の流れ的に、俺がフィンネの誘惑を受け入れちゃったんだと思われたくなくて、とにかく必死だった。
もしも『こういうことしたかったんだぁ♪』とか『強引なのが好きなんだね、ふふっ♪』とか言われたら、どう弁解したらいいのかわからなくなるから。
けれど、フィンネの態度が俺の予想と違っていて、だから俺は、それ以上何も言えなくなってしまったんだ。
「い、痛く……しないで、よね」
顔を赤くして、瞳を潤ませて、顔を少し背けながら、ささやくように訴えてきたフィンネに、不覚にも俺は、本当にドキっとしてしまって。
「〈火の魔力〉」
とはいえそれは、すぐにリリウの呪文によって、別のドキドキに上書きされてしまった。
「ちょ、ちょっと待てよ、リリウ!? 言いたいことはわかるけど、この状況はある意味、お前が原因みたいなものだろっ!?」
「…………」
魔力の炎を右手に、無言のリリウが俺を見下ろしていた。
「あっ、牧師のお兄ちゃんが、さっきのやばいお姉ちゃんのおっぱい触ってる」
「下のダークエルフのお姉ちゃん、顔が真っ赤っかだぁ」
「ウチのお父さんの持ってるスケベな本に、こういう場面も載ってたぜ」
さすがに騒ぎに気づいた子供たちが、何やかんや言い出している。
「牧師さまっ、子供たちの前で、な、なな、何をやっているんですかっ!?」
当然、アミカちゃんは怒るよね、そりゃ。
「カッタくん、ごめんね。やっぱり昨日、お姉ちゃんがしっかりご奉仕してあげなかったから、いろいろ我慢できなくなっちゃったんだね……今夜は、お姉ちゃんに、そういうことしてくれていいから」
マルセラ姉さん。
ものすごく勘違いしている上に、みんなの誤解を招くようなことを言わないでくれ。
そんな中でも、やっぱり男の性なのか、俺はどうやら、無意識のうちにフィンネの胸をもんでしまっていたみたいで。
「あぅ、あっ……んんっ」
すると、さっきまでの挑発的な勢いはどこに行ったのかってくらい、何とも女の子らしい吐息混じりの声が、フィンネの口から漏れた。
これは――これは、まずい。
リリウに視線を向けると、マジで教会堂が火事になっちゃうくらいの火柱が、彼女の手から立ち上っていた。




