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ダークエルフの女の子が、聖職者と仲良くしたらダメですか?  作者: 渋谷 恩弥斎
第1章 少年牧師と、ダークエルフの少女
31/114

04/01. わちゃわちゃな教会堂(1)

 ナコタ教会堂。


「こうやってね、呼ぶとすぐに出てくるの――ほら、ほら」

「「「「「おぉーっ」」」」」


 マルセラ姉さんに群がる子供たちが、嬉々とした声を上げた。


 場所を考えたとしても不自然なほどに神々しい光が、もう数回、この空間を照らしている。


「……姉さん、大道芸じゃないんだから」


 愛用の聖剣――『イープノス』を何度も出したり消したりしているマルセラ姉さんに、俺はため息混じりで嘆いた。


 神秘の力を宿している聖剣は、目に見え、実際に触れられる『剣』でありながら、一般のそれとは異なり、腰や背中に携える必要がない。

 聖剣の持ち主――すなわち聖剣士の想いに応えて、その姿を顕在させるんだ。


「すげぇーっ、かっこいい」

「マルセラお姉ちゃん、超強かったもんね」

「シュバッて、モンスターをやっつけちゃったんだ」


 あれから、無事にすべてのマサンを制圧した俺たちは、誰一人ケガをすることなく、みんなでここに戻ってきた。


 姉さんの力を知った子供たちは、もうずっとあんな感じだ。


「こら、みんな、わかってるの? さっきはマルセラさんが助けてくれたからよかったものの、ああいうときに近づいたらダメなんだからね」


 アミカちゃんは、勝手に飛び出してしまった子供たちを叱っていた。


「本当に、本当に危ないんだから」

「「「「「はーい……」」」」」


 子供たちのしょんぼりとした声が、教会堂に響いた。


「まさか、カッタの姉ちゃんが聖剣士だったなんてね」


 となりのリリウが、俺に言う。


「カッタがあたしの腕をつかんだ時は、頭がおかしくなったのかって思ったよ。姉ちゃんの動きが、あんたには見えていたんだね」

「悪い悪い。隠しておくつもりはなかったんだけど、先に話すタイミングがなかったからさ」


「だけど、今でもちょっと信じられないかな……あのケルギジェを倒したのが、すぐそこにいるあんたの姉ちゃんだなんて」

「……まぁ、そうかもな」


 荒々しい魔族たちを力でねじ伏せ、あの時代、その頂点に立っていた狂獣人ケルギジェ。

 聖剣士としてそいつを討伐したのが、まだ十四歳のマルセラ姉さんだったんだから。


「もしかしてあんたも、あのケルギジェと?」

「いいや、俺は何も。まだまだ子供だったし、体術はとにかく、魔法の方はたいして扱えてなかったから」


 聖剣士となった姉さんの力になりたい気持ちは、きっと誰にも負けなかったと思う。

 けれど当時の俺じゃ、姉さんの力になるどころか、完全に足を引っ張ってしまうだろうことが、火を見るよりも明らかだった。


「聖剣士は、正しい信仰心を持つ者が、ある日突然、聖剣に選ばれることで誕生する。その際は必ず、何らかの使命を負って――姉さんはケルギジェの殺戮から人々を守るために、イープノスを携えて旅だったんだ」

「……辛かった? 姉ちゃんを行かせて」

「聖剣士なんていう、何だかとんでもなくすごそうなものになってもさ、俺にとっては、それまでと変わらないマルセラ姉さんだったから……もしかしたらケルギジェに――って、そう考えない日はなかったよ」


 自分自身に対する悔しさと、万が一のときの不安を胸に抱きながら姉さんを見送ったことを、今でもはっきりと覚えている。

 もうあんな想いは、二度としたくない。


「無事に役目を果たした姉さんは今、聖剣士として各地を回りながら、その地域の人々のために働いているんだ」


 ケルギジェの恐怖は去ったけど、野蛮な魔族に苦しめられている人は、現在も少なくない。

 逆に一方で、誤解を受けている善良な魔族も。


 姉さんはそういう彼らのために、時には剣を持ち、時には慈愛を伝えながら、新しい旅を続けている。


「この五年の間、俺は姉さんと何度か顔を合わせているけど、俺がナコタの牧師になってからは、今回が初めてで」

「だからあんたは、この村で一人暮らし――ってわけなんだね」

「姉さんには姉さんのやるべきことがあるし、俺には俺のすべきことがあるから」


「……いっしょに暮らしたいって、そう思わないの?」

「いつかはね。けれどそれは、まだちょっと先かな。俺もまだ、半人前の牧師だしさ」


「ふーん……じゃ、じゃあ、あれだね。あんたが、け、結婚とかするのなら、あ、ああ、あの姉ちゃんと同居できる人じゃないと、だ、ダメだね」

「あはは、俺が結婚ねぇ……」


 リリウの言葉に、俺は苦笑い。


「まぁ、もしもそんなことがあるのなら、俺はきっと、そういう相手を選ぶのかもな」

「……あ、あたしは、カッタの姉ちゃんのこと、き、きき、嫌いじゃないから」

「あ、うん」

「そ、それは……ちょっと覚えておいてよね、うん」


 なぜか念を押すように、リリウが俺に言っていた。


「あ、あたしは、あんたの姉ちゃんとなら、それなりに上手く――」

「と、ところでさ、リリウ」


 俺は、実はさっきからずっと気になっていたことを口にする。


「あのはさ、いったい何なわけ?」


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