03/08. 既視感のある展開
「ど、どういうことですか、牧師さまっ!?」
翌朝。
またしてもずいぶんと早い時間に俺の家を訪ねてきたアミカちゃんが、慌てながらも詰め寄ってくる。
「そこの、眠そうに椅子に座っている女性は、いい、いったい何なんですかぁーっ!?」
「あ、あのね、アミカちゃん、あ、あの人は――」
「ねぇ、カッタくぅーん、朝ご飯はまだぁ?」
リリウのように生活が不規則というのではなく、単純に朝が苦手な姉さんは、寝ぼけ半分で甘えたような声を出していた。
「あ、あの女性、牧師さまの大きめな部屋着を着てますよね!? あ、ああ、明らかにあの女性、昨晩はこの家に泊まったとしか思えない態度ですよね!?」
うーん。
いろいろと既視感あるなぁ、この展開。
「譲りたくないですけど、百歩譲ってリリウさんならわかりますよ。なのに何ですか、牧師さま!? 今度はまったく私も知らないような女性の方を、こ、ここ、こんなふうに連れ込んだりしてっ!!」
「つ、連れ込んでない、連れ込んでない」
「しかも……む、胸が大きいしっ。も、もも、ものすごく胸が大きいしっ!!」
「……それはあまり関係ないよね、アミカちゃん」
「関係ありますよっ!! 関係……あります、うぅぅ」
そこで扉が開いて、入ってきたのはリリウだ。
「おはよう、カッ――」
「り、リリウさんっ!!」
その姿を確認したアミカちゃんは、すぐにリリウへ呼びかける。
「せ、誠実だった牧師さまが、ハレンチになってしまいました……すぐに胸の大きな女性と一晩を過ごす、そういうハレンチな男性になってしまたんですぅーっ!!」
暴走気味なアミカちゃんの言葉を受けて、リリウが俺の方を見た。
「ちょ、ちょうどよかった、リリウ。お前から説明してもらえないか? アミカちゃんは、ものすごく勘違いしているみたいだから」
アミカちゃんが取り乱しているのは、俺の家に彼女の知らない女性――つまり、マルセラ姉さんがいることが原因。
リリウは事情を理解しているから、アミカちゃんをなだめることができるはずだ。
それにしてもアミカちゃん、いい娘なんだけど、ものすごく誤解が激しいんだよなぁ。
「あ、うん、わかった――あのね、アミカ」
俺にうなずいたリリウは、アミカちゃんに話しかける。
「あの女の人は、あんたが思っているような相手じゃないよ。あの人はカッタの――」
「カッタくぅーん。朝ご飯の前に、やっぱり昨日みたいなことしてぇ。今朝も体がうずくから、カッタくんのやつでぬるぬるにしてぇ」
「…………はぁ?」
姉さんのおかしな発言に、リリウの雰囲気が変わる。
「ねぇ、カッタ……今のはどういうこと?」
あれ、リリウ。
アミカちゃんに、ちゃんと事情を説明してくれるんじゃなかったっけ?
何となく嫌な雰囲気を感じ始めていた俺に、今度はリリウが迫ってくる。
「……『今朝も体がうずくから』『昨日みたい』に『カッタくんのやつでぬるぬるに』するって、いったいどういうこと?」
「こ、怖い顔するなよ、リリウ……お、お前にまで勘違いされたら、俺は――」
「〈火の魔力〉」
「だぁーっ、ちょ、お、落ち着けって、リリウ!?」
「うわぁーん!! やっぱり牧師さまは、大きな胸の女性専門の、ハレンチでぬるぬるな男性になってしまったんですねぇーっ」
「アミカちゃん、わけのわからない理由で泣かないでっ!?」
「カッタ!!」
「牧師さまぁ」
「カッタくぅーん」
とにかく、まず、第一に――魔法だけは勘弁して、リリウ。




