03/03. 予想外の訪問者(後編)
「ふ、ふーん……そ、そっか」
うつむきながら、リリウが俺に言う。
「そ、そういうの……わ、悪くないと思うよ、あたし的には」
「……ダークエルフにお墨付きをもらえたなら、そりゃ光栄だよ」
「す、スケベだけどね!? カッタはすごく、すごーくスケベだけどねっ!!」
「おいおい、照れてるのかよ、リリウ? ははーん、そうか。さては俺のこと、かっこいいとか思っちゃったんだな」
正直なところ、少しこそばゆいのは俺の方だった。
自分自身の話を、こんなふうに自然に話してしまったことが、何だか。
だから、明るくふざけた空気に変えたかったんだ。
「ち、違うしっ!? ぜ、全然、ぜーんぜん違うしっ。あ、あたしはあんたみたいなやつ、かか、かっこいいとか思わないしっ!!」
けれどリリウは、予想外なまでに慌てちゃって。
テーブルを叩いて立ち上がったと思ったら、ぐぐっと向かい側の俺に詰め寄ってきた。
「お、おい、そんなことするとシチューがっ!?」
「あ、あたしは――あわっ!?」
「ちょ、ちょっと――うわっ!?」
バランスを崩したリリウが、俺に覆い被さるように前のめり。
抵抗できず、押し倒されるみたいにして、俺は椅子から転げ落ちた。
食器の、がしゃがしゃした音。
体に残る鈍い痛み。
「……ったく、勘弁してくれよ、リリウ」
寝そべりながら見えたのは、床にこぼれたクリームシチュー。
俺の上に乗っているリリウの顔や腕にも、少しかかってしまっていた。
「ご、ごめん、カッタ……」
「い、いや、そんなにしおらしく謝られても……シチュー大丈夫か、やけどしてない?」
「へ、平気。そんなに熱くなってなかったから」
「じゃあほら、よりあえずどいてくれよ。床を拭かないとだし、お前の分も、また新しくよそって――」
「か、カッタ」
上から俺を見つめたまま、リリウが呼びかけてくる。
もはや、その吐息だけでくすぐったくなってしまうくらいに近い距離から、俺の名前を。
「あ、あんたがあたしに優しくしてくれるのは、聖職者として? そ、それとも――」
「どういうことのなの、カッタくん?」
聞き覚えのある声が、けれどあまりに想定外な声が、俺の家に響く。
「半裸みたいな格好の女の子に、とろみのある白濁の液体をかけて、二人きりで抱き合いながらくんずほぐれつ……いったいどういうことか、ちゃんと、ちゃーんと説明してもらえるかな、カッタくん」
金色の長い髪に、白く透き通った肌。
やや目尻の下がった、穏やかで優しく整った顔立ち。
体を覆う旅人用のローブを羽織ってはいるけど、それでも、女性らしい大きなふくらみを隠し切れていない。
いつの間にか扉が開いていて、
「ねぇ、説明して――私が、しっかり、心の底から納得できるように」
いつの間にか、彼女はそこにいた。
「ね、ねね、姉さんっ!?」
久しぶりに再会した大切な家族は、その動揺を隠すみたいに、必死な笑顔を浮かべていた。
「う、うふふふふっ」




