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ダークエルフの女の子が、聖職者と仲良くしたらダメですか?  作者: 渋谷 恩弥斎
第2章 少年牧師と、風を奏でる森の民
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05/04. トスロの頭を倒せ(3)

 これで、トスロたちのボスは倒した。


 まだ暴れている子分もいるかもしれないが、リリウとイェルクさんに任せておけば、きっと大丈夫だ。


 残るは、チョンチョンのムーボ。

 戦闘不能になった自軍の長――その突っ伏した巨体を見下ろしながら、やつは表情を暗くしていた。


 ムーボは、ドムタノンの力を恐れて、調子よく立ち振る舞っているような雰囲気があった。

 俺が勝利した今、あの腰巾着こしぎんちゃくの内心は、ひどく混乱していることだろう。


 ここで退くなら深追いはしないが、向かってくるなら相手をするしかない。


 敗北に打ちひしがれているようなムーボに、俺は告げる。


「どうする、かかってくるか?」


 もちろん、負け惜しみでも残して去ってくれればありがたい。

 しかし、自分が従うべき相手に選んだ魔族が、目の前で、俺に倒されたんだ。

 冷静な判断ができずに、感情のまま向かってくる可能性もある。


 緊張感を保ちながら、俺は軽く構え直した。


 ムーボが口を開く。

 それは、予想していたような言葉ではなかった。


「……まったく、役立たずもはなはだしいですねぇ」


 ドムタノンに怯えていたようなムーボとは、明らかに違う。


「こんな田舎集落の一つも落とせないとは、情けないにもほどがありますよ。無能な魔族だとは思っていましたが、まさか、ここまで無能とは」


 平穏に暮らすキルムーリたちの村を、身勝手に襲撃してくるような連中だ。

 その結びつきが、利害関係だけの浅いものだとしても、俺はまったく驚かない。


 ムーボという魔族の生き方が、常に勝ち馬に乗るというものならば、敗者への態度を変えることも、一応は道理として通るだろう。


 だけど、やつの急変から感じるのは、そういうのとは少し違う気がする。


 何なんだ、いったい。


「まぁ、こいつが無能なのを差し引いても、あなたの存在は問題でしたねぇ」


 こちらの疑念を感じ取ったのか、独りごちていたムーボが、俺に視線を向ける。


「まさか、あなたのような牧師がいただなんて、予期せぬ不幸でした。どうしてくれるんです? こちらの計画が台無しですよ」

「……計画? お前、トスロたちを利用したのか?」


 ドムタノンによれば、彼の武勇伝を聞きつけて、ムーボが接触してきたという話だった。

 聞かされたのは国盗りの提案。

 野望へ第一歩は、外部からの侵入が難しいとされるコーソ村を奪い、拠点とすること。

 村の住民であるキルムーリは穏和な魔族で、襲撃は簡単だ――と、それらしい理由を示した上で。

 

「利用価値、ありませんでしたけどねぇ」


 ムーボが否定することはなかった。


 つまり、表向きにはドムタノンに従属しているような態度を見せながら、本心では、トスロたちを意のままに操っていたってことだ。


 動機は何だ?


 強い魔族に取り入ることで、様々な甘い蜜を吸おうとする者は、当然いるだろう。

 けれど今のムーボの発言が本心ならば、やつは最初から、ドムタノンたちを『強い魔族』だと考えていなかったことになる。


 野蛮な魔族をそそのかして、ムーボにどんな利益があるというんだ?


「……お前、何のために」

「チェチェチェ、あなたにお話するつもりはありません」


 だろうな。

 簡単に教えてくれるわけもない。


「ただ、一つだけ」


 不気味な顔を怪しくゆがめて、ムーボが面白がるように言う。


「望もうが望むまいが、いずれあなたも知ることになりますよ。この国で生きている限り、チェチェチェ」

「それは、どういう意味だ?」


 問いかけても、やつは答えない。


「チェチェチェ、チェチェチェチェチェ」


 不快な笑い声を残して、そのままムーボは飛び去り、俺の前から消えてしまった。


 倒れたドムタノンは、意識を取り戻す様子もない。


 戦いには勝利した。

 だが、すっきりしないものが、俺の心を曇らせる。


 ムーボ。

 なぜ、お前は――。

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