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ダークエルフの女の子が、聖職者と仲良くしたらダメですか?  作者: 渋谷 恩弥斎
第2章 少年牧師と、風を奏でる森の民
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04/03. ガーシュ王国のはじまり(1)

 正午を少し過ぎた頃。


 たくさんのおいしい料理を作り、さらには配ってくれていた女性の皆さんも、それぞれに一息ついている。


 男性陣は、見渡す限り赤ら顔。

 お腹も満たされてきたようで、大声で笑い合うというよりは、のんびり穏やかな宴になってきた。


 そんな中、さっきまでにぎやかにしていた子供たちが、今は舞台の下で、静かにたたずんでいる。

 ある男の子は剣を模した木の棒を持ち、ある女の子はくるぶしが隠れるくらいに長いローブを着ていた。

 みんな、やっぱりどこか緊張しているみたいだ。


「始まるね、カッタ」


 そんな子供たちをながめながら、右どなりに座るリリウが話しかけてくる。


 舞台に向かって並べられた長い丸太は、この日のための簡易なベンチ。

 青空の下の観客席ってわけだ。


「ちゃんとできるのかしらね、あの子たち――ぱくっ、もぐもぐ」


 対して、左どなりでもぐもぐしているフィンネは、彼女らしい上から目線。


「ギィ?」

「ギギィ」

「ギィ、ギィ」


 祭りを楽しんでくれている様子のマサンたちも、近くの丸太の上に並んでいた。

 フィンネと同じく、手には蒸しケーキが。

 術者同様、彼らもあれが気に入ったようだ。


「いよいよだな」

「あの子たち、どんな演技を見せてくれるのかしら」


 俺より前方に、クレマンス夫妻。


 他のみんなも、それぞれに視線を舞台へ向けていた。


 これから、子供たちの劇の幕が開く。

 この国の歴史をテーマにした、今年のメインイベントだ。


 アミカちゃんとマルセラ姉さんは、子供たちと同じく舞台側にいる。

 最後まで、しっかりサポートするんだろうな。


 確かに、熱が高まってきた広場の雰囲気を感じる。

 俺も子供たちの演劇には期待しているし、すごく楽しみだ。


 でも、ちょっと気になることが。

 だから、何となく集中できなくて……。


「ところで、ウダロはまだ来てないの?」


 フィンネが、俺に聞いてきた。


「ああ、うん。そうみたいだな」


 時間の約束までしていたわけじゃない。

 だから、いつ来てもらってもいいんだ。

 今日は夜まで、たぶんわいわいやっているはずだし。

 けど、できればこの演劇、ウダロにも観てもらいたかったな。


「キルムーリの食事は、あたしたちからすると少し特殊だから、そこら辺を考えて、昼食を済ませてから来るんじゃない?」


 流れを受けて、リリウが答える。


 そうか、そうかもしれないな。

 いくら緑草祭でたくさん料理があるといっても、この村の味が、彼の『口に合う』かどうかわからないし。


 おっと、アミカちゃんがステージに上がってきたぞ。

 とりあえず、今はこっちに集中しよう。


「皆さん、こんにちは」


 まずは一礼。

 あいさつをしたアミカちゃんが、広場全体に呼びかける。


「これから、今日のための特別な歴史劇――『ガーシュ王国のはじまり』を、村の子供たちが披露ひろうしてくれます。みんな、一生懸命に演じてくれると思いますので、どうか楽しんでくださいね」


 再び一礼して、舞台から離れたアミカちゃん。


 がやがやしていた空気が、それとなく落ち着いていく。

 村のみんなが、ステージに注目しているんだ。


「ほーぅ、王国の始まりね」


 右手のお酒を飲み干して、イェルクさんが言う。

 彼もまた、別の丸太に腰を下ろしていた。


 マルセラ姉さんが、古そうな鍋を叩く。

 こかーん、こかーん、こかーん――鈍い金属音が三回。


 すると一人の女の子が、ゆっくりと舞台に現れる。

 強張こわばった表情の彼女は、白いワンピースを着ていた。

 視線は、はるか遠く。

 どうやら、いよいよ始まるらしい。


「ずっと昔のお話です。この大地には、すでにたくさんの種族が存在していました」


 語り部的な役割なんだろう。

 女の子が、はっきりとした声で伝えてくれる。


「私のおじいさんのおじいさんの、そのまたおじいさんのおじいさんが子供だった頃よりずっと昔から、人間も、魔族も、この大地で生きていました。それぞれ、自分たちの家族や友だちと、あちらこちらで、好きなように暮らしていたのです」


 太古の昔から、この世界には人間と魔族が存在し、原始的な生活を営んでいた。

 舞台上の彼女が教えてくれたように、はじめは各種族、ごく近しい血族のみでコミュニティーを作り、その中で暮らしていたんだそうだ。

 たぶん、このナコタ村より、もっと小さい規模の集落だったんだろう。


「いろいろな種族が、山や森や草原の中、家族や仲間たちと、仲良く自由に暮らしてました。長い時間が、ゆっくり流れていくと、だんだん、家族や友だちが増えていきます。そうなってくると、みんなをまとめる偉い人物が必要になってきます。だから自然と、その仲間の中で、頼れるリーダーが選ばれました。頭がよかったり、力が強かったりした誰かが、家族や友だちのために、先頭に立つことになったのです」


 近親者を中心に集まっていた者たちが、次第にその数を増やし、部族としてまとまるようになる。

 知力、武力、あるいは魔力に優れた者が各部族の長として同胞どうほうたちをべ、それぞれの集落を――規模としては、今の村や町に匹敵するコミュニティーを、各地に形成していったんだ。


 そこまで言うと、語り部の女の子は、スッと舞台から消えた。

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