↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マジュウ・コラージュ  作者: 若庭葉
破──儀式編
26/46

インタールード④:白の記憶

 ──七年前。

 白い壁のその家にはささやかな庭があり、敷地を囲むブロック塀の角の辺りに、小さなブランコが設置されていた。ロープと木材で造られた、手作り感満載の遊具だ。

 一つしかないその座席には、小さな子供が腰下ろしており、浮かない顔で前後に揺れている。一見して女児か男児かわかり辛い見た目であり、膝の上にレッサーパンダのぬいぐるみを乗せている為、知らない人間が見たら間違いなく前者だと断ずるだろう。


「どーしたの? 宰。何かあった?」


 白いセーラー服姿の少女が、その子の横から声をかけた。夏季用の制服と同(、)じ(、)色(、)を(、)し(、)た(、)髪(、)が、陽光を反射して眩しい。

 しゃがんで目線を合わせながら、彼女は小首を傾げた。すると、その子供──宰は俯いたまま、


「またバカにされた……『ふるがみくんって、ほんとは女の子なんでしょ?』って──クラスの女子から」

「あらら。それで落ち込んじゃったのか。──それくらい可愛いってことなんじゃない? 褒めてくれたんだよ、きっと」

「そんなの知らないもん。かわいいなんていわれても、うれしくないし……」

「うーん、そうかそうか。小学生にも悩みはあるんだねぇ」


 体を起こした少女は、シミジミと頷いた。


「でも大丈夫っ! きっとお姉ちゃんくらいの年齢(とし)には、ちゃんと男らしくなってるって!」

「ほんとに……?」

「ホントホント。──だからほら、それくらいでくよくよしないのっ。“シルキーちゃん”も言ってるでしょ? 『苦しい時こそ笑顔が大事! しょっぱい涙もペロリと舐めちゃえ』って」

「う、うん……!」


 宰は控えめながらも、はにかむように笑った。

 それから、姉のことを見上げ、


「そういえば、に(、)て(、)る(、)よね。はじめおねえちゃんと、シルキーちゃん」

「そりゃあそうだよー。だって、私本当はシルキーちゃんだもんっ」

「えぇー、うそっぽい」

「嘘じゃないって。ほらっ、シルキーちゃんと同じ顔でしょ?」


 そう言って、彼女は口の端から舌先を出し、ウインクして見せた。幼い弟はよほどおかしかったようで、キャッキャと甲高い笑い声を上げる。


「今日だって、“ミュータンス”を退治してて来たんだからっ。すっごい強敵だったんだよ? 攻撃を食らっちゃって、こうドバァッと血が出──ぶっばぁぁっ⁉︎」


 ──言いかけた矢先、彼女は本当(、、)に(、)血(、)を(、)噴(、)き(、)出(、)し(、)た(、)。

 それも、地面に置いたケチャップに飛び乗るかのような、スサマジイ勢いで。


「お──おねえちゃん⁉︎」


 まるで返り血のようにその飛沫を浴びた弟は、暫時間を置いてから、喫驚した様子で叫けぶ。

「おねえちゃん」は真っ赤に染まった手で口許を抑えながら、


「……だ、大丈夫、大丈夫。これくらい、い(、)つ(、)も(、)の(、)こ(、)と(、)じゃん。──それより、ね、私もすかさず反撃してね」

「そんな話してるばあいじゃないよ! 元からしんじてないし、もうやすんでて!」

「え〜、でもここからがいい話──ウッ」

「だから、どうしてムリするの⁉︎」


 宰は心配そうな、それ以上に呆れような顔で、ぬいぐるみを抱いて立ち上がった。


「ごめんごめん。……取り敢えず、今日はおとなしく寝とこうかな」


 そして、踵を返した彼女は、そこでようやく気付いたらしい。

 ──そ(、)の(、)人(、)物(、)が(、)、庭(、)の(、)入(、)口(、)に(、)佇(、)立(、)し(、)て(、)い(、)る(、)こ(、)と(、)に(、)。

 それを見た「はじめ」は、一瞬驚いたような表情をしてから、ペコリと会釈した。


「あ、どうも……」

「…………」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。