↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マジュウ・コラージュ  作者: 若庭葉
破──儀式編
21/46

インタールード②:鉛の記憶

 ──七年前。

 そこは冷徹(つめ)たい鉛色に閉ざされた、窮屈な空間だった。壁も床も天井も──何もかも薄汚れた鉛色をしたその部屋は、まさしく独(、)房(、)。窓すらなく、出入り可能な扉は一つだけだ。

 家具らしき物と言えば、奥の壁に沿って置かれた寝台くらいで、その上には一人の女が腰かけていた。彼女こそが、この鉛の獄の主(あるじ)なのである。

 囚人は白い装束を纏っており、それと同(、)じ(、)色(、)の(、)髪(、)を長く伸ばしていた。一見して年齢のわかり辛い風貌であり、端正な顔立ちをしている。ツキヌクように白い肌や酷く華奢な体付きは、気を抜けばすぐにでも霧散(きえ)てしまいそうなほどあえかだった。


「…………あ(、)の(、)人(、)は、死んだのね……」


 何もない壁の方に視線を向けた横顔で、彼女は尋ねた。

 対して、その人物は答える代わりに、ある品を取り出して、彼女の横に放り投げる。

 シーツの上に音もなく落ちたのは、表(、)面(、)が(、)爛(、)れ(、)た(、)オ(、)イ(、)ル(、)ラ(、)イ(、)タ(、)ー(、)だった。


「……そう」彼女はそれを一瞥すると、軽く目を伏せ、「……あ(、)な(、)た(、)が(、)殺(、)し(、)た(、)のね……」

「…………」

「……いいわ。こうなることは、わかっていたもの……あの人と、初めて逢った時から……」


 再び瞼を開いた女の目は、どこか遠い過去を見つめているようだった。


「……そのライター……勝手に処分しておいて。私が持っていても意味がないわ。──どうせ、明(、)日(、)に(、)は(、)死(、)ぬ(、)の(、)だ(、)か(、)ら(、)」


 全てを悟りきった──あるいは諦めきったような静かな声を、その人物は黙って聞いていた。女の肌や髪、そして着物の白は、鉛の縛(いましめ)に抗うには、あまりにもか弱い。


「…………」


 その人物は寝台に歩み寄ると、ライターを取り上げ、上着にしまい入れた。

 そして、ツカツカと冷たい靴音を響かせ、鉛の看守の如き足取りで、部屋を出て行く。

 ──バタンッと閉じられたドアの中心で、髑(、)髏(、)の(、)装(、)飾(、)が(、)笑(、)っ(、)て(、)い(、)た(、)。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。