インタールード①:朱の記憶
──七年前。
その人物の手にしていた懐中電灯の光芒が、立派な朱塗りの鳥居を探り出した。
辺りは広大な洞窟であり、ポタリポタリと水の滴る音が、どこかから聞こえて来る。
鳥居を潜ったその人物は、さらに深い闇の奥へと歩を進めた。
しばらく足音を響かせて行くと、やがて開けた空間に出る。
小学校のグラウンドほどの広さだろうか。歪んだ円形の舞台のようなそこは、やけに明るかった。穴の空いた天井から、朱色の斜陽が差し込んでいるのだ。
「…………」
その人物は一度立ち止まってから、舞台の中へと歩き出す。
奥の方は濃い暗闇となっており、その手前の光の中に、小さなカタマリ──子供が一人、座り込んでいた。
「……し、しんじゃった……ぼくが、ころしたんだ……! ……ぼくが、ぼくが……!」
子供はその人物に背を向けたまま──それどころか、他に人がいることすら気付いていないのだろう──、うわ言のように呟く。女児にしか見えないが、一人称は男児のそれだった。まだ十にも満たないであろう彼は、純白い装束に身を包んでいるらしい。
「らしい」と言うのは、その着物が鮮烈な西陽に侵され、尚且つ赤黒く染め上げられていたからだ。
──返り血である。
朱に塗れた彼の左足首には、鉄の枷が巻かれていた。
「おかあさん……おねえちゃん……」
鞘のない短刀に手を置いた彼は、陰が作り出す晦冥を、焦点の狂った瞳で見つめた。
朱い光の中に投げ出された、血塗れのか細い右腕──小さなぬいぐるみを握ったそれが、そこに何があるのかを物語っていた。




