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放課後、空き教室の3センチ  作者: 三日月
第一部 三章:③秘密の隙間と、冬の予感
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第二十五話:冬休みの幕開けと、秘められた誓い

「よし、これで提出(オワリ)……っと」


終業式の放課後(夕暮れ)。

担任の説教(はなし)が終わると同時に、教室中から一斉に歓声が湧き上がった。

鞄の中にプリント類を適当に押し込み、生徒たちが弾んだ足取り(足音)で教室を飛び出していく。


明日から、待ちに待った冬休み(ふゆやすみ)が始まるのだ。


誰もが友人たちと予定(クリスマス)を確かめ合い、賑やかに去っていく中で、僕は一人静かに鞄のチャックを閉めた。

視線を廊下側に向けろと、影(気配)すら殺した少女が通り過ぎていくのが見えた。


瑠愛(るあ)だ。


彼女は僕と目を合わせることなく、ただすれ違いざまに、制服のポケット(手元)から小さな紙切れを床に落としていった。

まるでスパイ(映画)の連絡手段みたいな手慣れた動作。

僕は周囲の生徒たちが談笑に夢中になっている隙を突き、自然な動作でその紙片(メモ)を拾い上げ、手の中に隠した。


下駄箱で靴を履き替え、校門を出て少し歩いた角(かげ)で、そっとその紙を開く。


『いつもの資料室(ばしょ)で待ってる。三つ子(陸空海)に見つからないように来て』


相変わらずの丁寧(綺麗な)文字。

僕は胸の鼓動(胸さわぎ)を落ち着かせるように一つ深呼吸をすると、引き返して誰もいなくなった裏校舎へと向かった。


旧・第一資料室の重いドア(扉)を開けると、西日が差し込む部屋の真ん中で、瑠愛(るあ)が静かに佇んでいた。

すでにお気に入りの萌え袖(セーター)姿になっていて、僕の姿を見るなり、ぱあっと表情を明るくする。


「湊(みなと)……! よかった、ちゃんと伝わった(届いた)んだね」


「まあね。でも、あんな派手(あやしい)な落とし方したら、他の奴に見られるかと思ってヒヤヒヤしたよ」


「ふふ、大丈夫。湊(みなと)なら絶対に気づいてくれるって信じてたから」


瑠愛(るあ)は嬉しそうにくすりと笑うと、机の上に置いてあった手帳(カレンダー)を僕に見せるように広げた。

そこには、明日からの冬休み(スケジュール)のマス目が、色鮮やかなペンで細かく埋め尽くされていた。


「見て、湊(みなと)。これ、私なりに考えた防衛策(作戦)なの」


「作戦……?」


「うん。三つ子(陸空海)の行動パターンを分析してみたの。陸(りく)ちゃんは午前中に部活の自主練、空(くう)ちゃんは午後に友達と買い出し、海(うみ)ちゃんは塾の冬期講習……だから、二人(わたしたち)が安全に会えるスキマ時間(タイム)はここ!」


瑠愛(るあ)が自信満々に指し示したのは、カレンダーに赤丸で囲まれた特定(わずか)の日時だった。

僕の妹たち(陸空海)の行動をそこまで完璧に把握しているとは、恐れ入るというか、少し戦慄(ビビ)ってしまうレベルだ。


「……すごすぎるよ、瑠愛(るあ)。そこまで調べてくれたんだ」


「当然だよ。……だって、湊(みなと)と会えない時間(やすみ)なんて、私には耐えられないもん」


まっすぐに僕を見つめてくる、真剣(本気)な目元。

照れ隠しもなく自分の好意(おもい)をストレートにぶつけてくる彼女に、僕の心臓は跳ね上がり、顔が熱(熱気)を帯びていくのが分かった。


「……僕だって、瑠愛(るあ)と離れてるのは寂しいよ。だから、絶対に約束(この時間)は守る」


「……うん!」


瑠愛(るあ)は満足そうに頷くと、そっと僕との距離(センチ)を詰めてきた。

爪先立ちになり、自分の手を僕の頬(顔)へと伸ばしてくる。

ひんやりとした指先が僕の肌に触れ、そのまま耳の後ろ(髪)へと回された。


「……湊(みなと)、冬休みが終わる頃には……もっと、私たちの関係(距離)、進んでるといいな」


「え……?」


「……なんでもない。秘密(ないしょ)!」


耳元で甘く囁かれ、瑠愛(るあ)は悪戯っぽく微笑みながら離れていった。

夕闇が迫る資料室(ふたりの部屋)で、僕たちの特別な冬(シーズン)が、ついに静かな産声を上げた。

最後までお読みいただきありがとうございました!


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