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放課後、空き教室の3センチ  作者: 三日月
第一部 三章:③秘密の隙間と、冬の予感

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第二十四話:廊下の影と、非常階段の密約

「……っ、ちょっと湊(みなと)、静かにして……!」


瑠愛(るあ)が僕の胸元(制服)をぎゅっと掴み、息を殺して耳元で囁いた。


終業式を翌日に控えた放課後(夕暮れ)。

旧・第一資料室へ向かう渡り廊下(静寂)の手前で、僕たちは咄嗟に非常階段(物陰)の扉の裏へと身を滑り込ませていた。


カン、カン、カン、と軽やかな足音(リズム)が三つ、重なり合いながら近づいてくる。


「ねえ、愛空。絶対お兄ちゃん(湊)、まだ学校にいると思うんだよね」

「私もそう思うー。最近、放課後になると行方(姿)をくらます頻度が高すぎるもん」

「愛海、図書室(ライブラリー)見てきたけどいなかったよ? ってことは、やっぱり特別棟(あっち)かな……」


三つ子(陸空海)だ。

中学一年の妹たち(あいつら)が、完全に僕を「捜索(ロックオン)」しながら歩いている。


狭い非常階段の踊り場(暗闇)。

僕と瑠愛(るあ)は壁と扉のわずかな隙間(すきま)で、息すら止める勢いで密着(重なり)合っていた。


瑠愛(るあ)の背中が僕の胸にすっぽりと収まり、彼女の後頭部(髪)から漂うシャンプーの甘香(かおり)が至近距離で鼻をくすぐる。

心臓が早鐘(ドラム)のように鳴り響き、自分の鼓動が瑠愛(るあ)の背中に伝わってしまうんじゃないかと焦燥(ヒヤヒヤ)した。


「……ん」


瑠愛(るあ)が身を捩り、そっと顔だけを僕の方へ向けた。

薄暗がり(夕闇)の中で見つめ合う距離(センチ)は、わずか数センチ。

彼女は自分の唇(くちびる)に人差し指を立てて「しーっ」と合図を送ると、そのまま僕の首筋(マフラー)に頬を寄せて緊張(身)を小さく縮めた。


トントン、と瑠愛(るあ)の小さな手が、僕の腰元(制服)を優しく撫でる。

『大丈夫だよ』となだめてくれているような、甘くて不器用(愛おしい)なスキンシップ。


(……やばい、三つ子(陸空海)に見つかる恐怖より、瑠愛(るあ)が可愛すぎて頭がおかしくなりそうだ……!)


「うーん、特別棟(こっち)にもいないみたいだし、先に帰って夕飯(ごはん)の仕込みでも待つ?」

「そうだね、お兄ちゃん(湊)のことだから、案外もう帰ってるかも」


三つ子(陸空海)の足音がゆっくりと遠ざかり、やがて完全な静寂(しじま)が廊下に戻ってきた。


「……ふぅ……行った、みたい」


瑠愛(るあ)が安堵の吐息(ためいき)を漏らし、僕の胸の中で身体の力(緊張)を抜く。

だけど、二人とも密着(重なった)姿勢のまま、しばらく動くことができなかった。


「湊(みなと)……胸の鼓動(音)、すごく速かったね」


瑠愛(るあ)が上目遣い(悪戯な瞳)で僕を振り返り、くすりと小さく笑った。


「三つ子(陸空海)に見つかるかと思って焦った(緊張した)だけだよ」


「……本当? 私がこんなに近く(密着)にいたからじゃなくて?」


そう言って、瑠愛(るあ)は僕の胸に頭(おでこ)を少しだけ強く押し付けてきた。

萌え袖(制服)の手で僕の手首をしっかりと握りしめたまま、微笑(甘い顔)を浮かべる。


「……冬休み、三つ子(陸空海)の警戒(目)をかいくぐるの、もっと大変そうだね」


「どんなに大変(リスキー)でも、絶対に時間(ひま)作るって言っただろ」


「ふふ、頼もしいな。……じゃあ、明日からの冬休み(特別)、楽しみにしてるね」


狭い非常階段(秘密基地)で交わした、二人だけの密約(約束)。

三つ子(陸空海)の包囲網が強まるほどに、僕たちの絆(熱)はより一層、深く強固(甘く)結ばれていっていた。

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