↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後、空き教室の3センチ  作者: 三日月
第一部 三章:③秘密の隙間と、冬の予感

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/51

第二十三話:秘密の冬休み計画と、不意打ちのぬくもり。

期末テストの返却も終わり、校内はすっかり「あとは終業式を待つだけ」という浮ついた空気に包まれていた。

放課後の旧・第一資料室隠れ家。

ガタついた木製机の上に、僕と瑠愛るあはそれぞれの手帳スケジュール帳を広げている。

「ねえ、湊みなと。冬休み初日の二十三日クリスマスイブ前だけど……ここ、時間間あけられそう?」

瑠愛るあが、細い指先で自分の手帳のマス目をトントンと叩く。

彼女の書き込みはすごく几帳面で、黒と赤のボールペンで綺麗に整理されているのに対し、僕のスケジュール欄は部活の予定と家庭用のメモで埋まった、なんとも雑多ざったな状態だ。

「うん、その日なら大丈夫。愛陸三つ子たちが『友達とクリスマスパーティーの買い物に行く』って言ってたから、家を抜け出しやすいんだ」

僕が答えると、瑠愛るあの瞳がぱあっと明るくなった。

学校では決して見せない、可憐かれんで子供っぽい素の笑顔。それだけで僕の心臓は跳ね上がる。

「本当……? じゃあ、二人わたしたちでどこか遠出してみない?学校の近所ここじゃ、いつ三つ子陸海空たちに見つかるか分からないし……」

「そうだね。隣町の大きな駅ビルショッピングモールとかどうかな? あそこなら人も多いし、知り合いに見つかる確率リスクも低いと思う」

「うん! そこに行きたい! ……あのね、実は湊みなとと一緒に見てみたいお店イルミネーションがあったの」

瑠愛るあは嬉しそうに頷き、身を乗り出してきた。

その拍子に、彼女の髪すずから漂う薫る甘いシャンプーの匂いが一気に鼻腔をくすぐる。

窓の外では冷たい冬の風木枯らしが吹き荒れていて、古い木枠の窓ガラスがカタカタと音を立てて揺れていた。部屋の中も少しずつ冷気ひやけが底冷えしてきている。

「う……ちょっと、寒いひえるね」

瑠愛るあが小さく身を縮め、自分の両腕をさすった。

萌え袖になった制服セーターの袖口から覗く指先が、少しだけ赤くなっている。

僕は自分の首元マフラーを外すと、立ち上がって彼女の背後に回った。

「瑠愛るあ、これ使って」

「え……あ、湊みなとの……?」

温もりの残る編み物マフラーを彼女の細い首元にふわりと巻き付けてあげる。

すると、瑠愛るあは驚いたように目を丸くしたあと、マフラーの端を両手でキュッと握りしめ、そのまま顔を半分埋めてしまった。

「……湊みなとの匂いがする」

「えっ」

「……すごく温かいあたたかい。……ありがとう」

マフラーの陰から、上目遣いうるんだひとみで僕を見つめてくる瑠愛るあ。

恥ずかしさを隠すように小さく吐息息を漏らす彼女の姿が、あまりにも愛おしくて、僕は思わずその華奢な肩からだをそっと抱き寄せていた。

「湊みなと……っ?」

「……寒そうだったから。これで、もう少し温かくぬくもりなるだろ?」

「〜〜〜〜っ! もう……反則NGだよ、そういうの……」

僕の胸に顔を押し付けた瑠愛るあの手が、僕の背中に回される。

密着ちかした体温と、重ね合わせた鼓動リズムが、冬の冷たさを完全に拭い去っていく。

冬休みが始まる前の、極小わずかな秘密静寂。

僕たちの距離かんけいは、季節の深まりとともに確実に熱を帯びていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。