↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後、空き教室の3センチ  作者: 三日月
第一部 三章:③秘密の隙間と、冬の予感
PR
22/51

第二十一話:解答用紙の余白と、赤点回避の誓い

期末テスト初日。


シャープペンの芯が紙を滑るカリカリという音だけが、教室内に重苦しく響いていた。

一時間目の数学。黒板の上の時計の針は、残り時間あと五分を指している。


(……やばい、問四の計算が合わない……!)


僕は冷や汗を流しながら、解答用紙の余白で必死に途中式を書き直していた。


ふと視線を上げると、窓際の席に座る瑠愛の姿が目に入る。

背筋をピンと伸ばし、すらすらと迷いなくペンを動かす横顔は、相変わらず凛としていて美しい。学年トップを争う彼女にとって、この程度のテストは造作もないのだろう。


(……足引っぱりたくないな)


テスト前、資料室で彼女が「湊の勉強、私が教えてあげる」とノートを広げてくれた時のことを思い出す。

彼女の指先が僕のノートを指すたびに、甘い香りがして全く集中できなかった……なんて口が裂けても言えない。


(絶対、いい点取って瑠愛に褒めてもらうんだ……!)


最後の三十秒、執念で導き出した数字を解答欄に滑り込ませるのと同時に、キーンコーンカーンコーンと終了のチャイムが鳴り響いた。


「はい、そこまでー。一番後ろの生徒は解答用紙を集めてください」


教員の声とともに、教室のあちこちから溜息と絶望の呻き声が漏れ出す。

僕も大きく息を吐き出し、机に伏せそうになった。


その時、教卓へ解答用紙を出しに向かう瑠愛が、僕の机の横を通り過ぎた。


周囲の目を盗み、彼女はすれ違いざまに僕の机の端へ、小さな折りたたまれた紙切れをサッと滑り込ませた。


(えっ……!?)


心臓が跳ね上がる。

周りの生徒たちがテストの手応えについて騒ぎ始める中、僕は手元でそっとその紙切れを開いた。


そこには、瑠愛の綺麗な文字でこう書かれていた。


『数学、お疲れ様。湊なら大丈夫って信じてる。放課後、いつもの場所で待ってるね』


末尾には、小さく手書きのうさぎのイラスト。


(……ズルいって、こんなの)


一瞬で緊張が吹き飛び、胸の奥がじんわりと熱くなる。

周りには誰も気づかれていない、僕たちだけの秘密のメッセージ。

テストはまだ始まったばかりだけど、この放課後があるなら、どんな難問だって乗り越えられる気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。