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週末。
甲斐多町公民館の張り紙と駅前商店街。
そして甲斐多町駅にポスターと看板、そして液晶パネルが工事で付けられる予定になっていた。
僕とシリウスは商店街のみなと雑貨店で普段は働いている。
親はみなと雑貨店の店主、みなと劉である。
雑貨店に来る人も僕とシリウス目当てで来る人が増えてきたような感じがある。
「リルドくーん!」
知らない人がやってくる。
きっと、アイドル活動を開始したあとに知った人だろうと想像できる。
雑貨店の商品も売れるので助かってるけどね。
こういうのを相乗効果と言うらしい。
「あの、握手してもらえますか!?」
「は、はい……どうぞ」
差し出された手を握り返す。
ぷるぷる震えている。
(こんなに喜んでもらえるんだ……)
なんだか不思議な気分だった。
その人は何か雑貨を一つ買って、ほくほく顔で帰っていった。
「リルドー、次レジ頼むわ」
「うん」
シリウスと交代する。
今度はシリウス目当てらしい女の子の集団が入ってきた。
「シリウスくんだ……!」
「きゃー!」
小声で騒いでいる。
シリウスはちらっとそっちを見て、ふっと微笑んだ。
(こいつ……愛想ふりまくのうまくなったな)
女の子たちが顔を真っ赤にしてうずくまっている。
(あ、やりすぎた)
みんな何かしら買って帰っていく。
お昼休憩。
父さんがおにぎりを差し出してきた。
「お前ら、最近本当に売上に貢献してくれてるな」
「貢献っていうか……雑貨店なのに僕ら目当てで来てるのがね」
「いやいや、それでも商品が売れてるんだから立派なもんだ」
「父さん、新商品仕入れる予定ある?」
「ああ、来週な。実は——」
父さんが妙ににやりとした。
「町長から話があってな。甲斐多町アイドルグッズも置かないかって」
「「グッズ!?」」
また二人で叫んでしまった。
「いやいやいや、いつの間にそんな話が」
「ブロマイドとか缶バッジとかな。撮影で撮ったやつを使うらしい」
シリウスが頭を抱えている。
「俺……俺の顔が缶バッジに……」
「僕もだよ……」
午後。
商店街を歩く人たちが、みなと雑貨店の前で足を止めていく。
ガラス越しに僕らをちらっと見て、ぱっと顔を輝かせて入ってくる。
そんなお客さんが、もう何人目だろう。
「いらっしゃいませー」
慣れてきた挨拶。
最初は戸惑っていたけど、なんだかんだ楽しくなってきた自分がいる。
シリウスを見ると、レジの向こうでお客さんと話しながら、ちょっと楽しそうにしていた。
夕方、シャッターを下ろす。
「お疲れさん」
「お疲れー」
父さんが伸びをしながら言った。
「明日は駅の工事の見学に行こうか。看板とパネル、立つところを見ておいたほうがいいだろ」
「見学?」
「自分たちの顔がでかでかと貼られるんだぞ。心の準備くらいしとけ」
(心の準備って何)
シリウスと顔を見合わせる。
「……行くか」
「うん、行こう」
平穏はどこかに行ってしまったけど。
まあ、こういう日々も悪くないかもしれない。
そう思えるようになってきた、週末の終わりだった。




