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リルド&シリウス〜アイドル活動開始します〜  作者: みなと劉


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 僕はあと4日後に控えた撮影開始に向けて自分でも密かに練習をしていた。

 リルド:準備はいいか? シリウス。最高の歌を届けようぜ!

(いこうぜ)

『履き古した靴の先を見つめて

 坂道の途中で立ち止まる朝

 昨日までの迷いは空に溶けて』

 これを2階の自分の部屋にて練習していたらシリウスが部屋に入ってくる。

「あ……」


「……」


「どこから聞いてた?」

 少し間があいて

「準備はいいか?の所から実は聞こえてた」

(最初からじゃないか!!……はずかし……)

「あれ……アドリブ?」

「うん……」

 シリウスは僕のところまで近づくと抱きしめてくる。


(!?)


「ちょ……シリウス!?」

「いいから…じっとしてろ」

 僕の頭を撫でるシリウスに僕は無言で彼が行為をやめてくれるまで待つことにする。

 その後

 二人でベッドに腰掛けて歌い合わせをする。

『履き古した靴の先を見つめて

 坂道の途中で立ち止まる朝

 昨日までの迷いは空に溶けて

 新しく塗り替えられた風が吹く

 カーテンが揺れる教室の窓から

 遠くに見える水平線を指差した』

 二人で歌い合わせてみるとこれがこれがなんと結構合うのだ。

 歌い終わって、思わず顔を見合わせる。

「……あれ?」

「……合うな」

「合うね」

 二人で、ぱちぱちと目を瞬かせる。

 前のMVの『世界の果てからこんにちわ』とは全然違う。

 あれは尖った、攻めの楽曲。

 でも、この『君と一緒に』は、もっと柔らかくて、優しくて、二人の声が溶け合うような感じ。

(僕の声、シリウスの声と合うんだ)

 なんだか、ちょっと嬉しい。

「もう一回やってみるか」

「うん、やろう」

 ベッドに腰掛けたまま、今度は最初から最後まで通してみる。

 歌詞を見ながら、メロディを追って、お互いの声を聞きながら。

 最初は譜面を覗き込むようにしてたんだけど、途中から自然と顔を上げて、お互いを見ながら歌うようになっていた。

『新しく塗り替えられた風が吹く』

 僕の声に、

『カーテンが揺れる教室の窓から』

 シリウスの声が重なる。

 息継ぎのタイミングが、知らないうちにぴったりと合う。

 なんだろう、これ。

 不思議な感覚だった。

 歌い終わって、二人でほぅっと息をつく。

「リルド」

「ん?」

「お前さ、最近上手くなったよな」

「えっ、ほんと?」

「ああ。デスボイスの時も思ったけど、こういう柔らかい曲もちゃんと歌える」

「……ありがとう」

 頬がじわっと熱くなる。

 シリウスに褒められるのって、なんだか特別だ。

「シリウスもだよ。低音、優しい曲だとまた違う感じになって、めっちゃ良い」

「……お、おう」

 シリウスの耳がまた赤くなる。

(こいつ、本当にすぐ赤くなるな)

 心の中で、ちょっと笑う。

 夕方、父さんに呼ばれて一階へ。

 階段を下りながら、シリウスがぼそっと言った。

「リルド」

「ん?」

「明日も、一緒に練習しような」

「うん、もちろん」

 ちょっとだけ、嬉しそうな声だった。

 夕飯を食べながら、父さんに新曲のことを話す。

「父さん、新曲、すごくいい曲なんだよ」

「ほぉ、どんな曲だ?」

「優しい感じ。前のとは全然違うやつ」

「衣装も白なんだぜ」

 父さんが箸を止めて、ふっと笑った。

「そりゃ楽しみだな」

「父さん、撮影は来週なんだけど……」

「ああ、店は俺が見てる。お前らはちゃんと撮影に集中しろ」

「ありがとう、父さん」

 いつも通り、頼もしい父さん。

 その存在感だけで、なんだか安心する。

 夜、布団に入って目を閉じる。

 頭の中では、まだ『君と一緒に』のメロディが流れている。

 シリウスの低音と、僕の声が重なる感じ。

 息継ぎのタイミング、声の強弱、目線の合わせ方。

 全部、ちゃんと届けたい。

(あと4日……ううん、もうあと3日か)

 日が変わったから、もう撮影は3日後。

 ちょっとだけ、胸がそわそわする。

 でも、嫌な緊張じゃない。

「シリウス、寝た?」

「まだ」

「明日、ちょっと早く起きて練習しよっか」

「……ああ、いいぞ」

「やった」

 布団の向こうから、シリウスの寝息に変わる手前のうつらうつらした声が聞こえる。

「リルド」

「ん?」

「明日……一緒に頑張ろうな」

 その一言が、なんだか胸に響いた。

 いつもならぶっきらぼうなのに、こういう時のシリウスは妙に素直で。

 その素直さが、僕の背中をぽんと押してくれる。

「うん、一緒に頑張ろう」

 目を閉じる。

 明日も、明後日も、その次も、シリウスと一緒に練習して。

 撮影本番では、ちゃんとあの優しい曲を届けたい。

 二人の声が、ぴったり重なるあの感じを、ちゃんと残したい。

 甲斐多町の夜が、また静かに更けていく。

 窓の外、住宅街の街灯が、ぼんやりと光っている。

 あと3日。

 僕らの新しい歌が、ここから始まる。

——翌朝。

 いつもより少し早く、目が覚めた。

 隣を見ると、シリウスもちょうど目を擦りながら起きるところだった。

「おはよう、シリウス」

「……おはよう、リルド」

 寝ぼけ眼のシリウスが、ふにゃっと笑う。

 その顔が、なんだかとんでもなく可愛くて。

(うわ、朝から破壊力やばい)

 心の中で叫びながら、一緒に階段を下りる。

 顔を洗って、軽く朝ご飯を食べて、二階に戻る。

 ベッドに並んで腰掛けて、今日も練習開始。

『履き古した靴の先を見つめて——』

 朝の光の中で、二人の声が、また優しく重なる。

 窓の外で、雀の鳴き声がした。

 いつもより少しだけ早い、僕らの朝の練習時間が、そっと始まった。

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