表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女は世界をハックする 〜見た目は魔法!?超古代技術で貧しい村を天空都市に育てます〜  作者: 七森ふれあ
外縁祠群と星見台の先

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
87/192

第82話 小祠一の休み場

 外縁小道の支度場に、朝から人が集まっていた。


 草分け棒は右に立ち、水袋は日陰に並んでいる。戻り石の袋はベンの石段に収まり、小荷物札の箱にはリタが新しい布をかけていた。入口祠の横に小さな棚ができただけで、村人の足は自然にそこへ向かうようになった。


 ミオは水袋をひとつ持ち上げて、すぐ下ろした。


「……これ、けっこう重いですね」

「ミオ様、それは大人用です」

「小さい方にします」

「はい。ミオ様用です」

「リタ、今ちょっと子ども扱いしました?」

「してません」

「しましたよね」

「少しだけ」


 白狐さんが棚の横で、しっぽをゆっくり動かした。


「重いものを無理に持つ必要はありません。道は、持てる者が持てばよいのです」

「白狐さん、荷物は」

「わたしは神獣です」

「はい。今日も神獣ですね」


 ミオは小さい水袋を取り、透明板を胸の前に持った。今日はマル婆さんも一緒だった。小祠一まで行ってみたい、と朝から言っていたのだ。


 マル婆さんは杖をつき、入口祠の前で深く息をした。


「小祠一までなんて、若い者の道だと思ってたよ」

「途中で休みながら行きましょう」

「休む場所なんてあったかね」

「座れる場所を見ます。足りないところは、その場で足します」

「その場で足すのかい」

「できる分だけです」


 白狐さんがミオを見た。


「できる分だけ、ですか」

「はい。今日はマル婆さんの歩きやすさを見ます」

「それなら、道が教えてくれます」

「道が」

「足が止まった場所です」

「なるほど。分かりやすいです」


 トマが草分け棒を持ち、リタが水袋を二つ選ぶ。ベンが戻り石の袋を持ち、神官が小荷物札を確認する。ミオは透明板を持つ。白狐さんは何も持たず、当然のように一番前に立った。


「白狐さん、先頭ですか」

「道を見る役です」

「荷物は」

「わたしは神獣です」

「封印中ですよね」

「神獣です」

「はい」


 ミオはあきらめた。


 神官は小荷物札を一枚だけ箱から出した。


「小祠一で水を飲み、足を休めましょう」

「はい」

「マル婆さんの歩きやすさを見ます」

「座り石も見ます」


 入口祠に礼をして、みんなで外縁小道へ入った。


 朝の草はまだしめっていて、足元でさわさわ鳴る。トマが草分け棒で道端を押さえ、リタが水袋の揺れを片手で止める。マル婆さんは一歩ずつ歩いた。急がない。白狐さんは少し先へ行き、時々振り返る。


 小祠一が見える手前で、マル婆さんの足が止まった。


「ここで一息つきたいね」

「座れる石、ありますか」

「前に置いたのが一つだけです」


 トマが草を分けると、平たい石がひとつ出てきた。腰かけるには低い。マル婆さんはそこに手をつき、少し苦労して腰を下ろした。


「低いねえ」

「低いですね」

「立つ時に、膝が笑いそうだよ」

「笑わない高さにしましょう」


 ミオは透明板をかざした。


――――――――――

[小祠一・休止点確認]

座り石:不足

水袋台:未設置

日よけ:未設置

荷置き:未設置

――――――――――


「足りないもの、出ました」

「ミオ様、いっぱい出ています」

「いっぱいですね。まず座り石です」


 トマが近くの平たい石を探しに行った。ベンも一緒に走ろうとして、戻り石の袋を抱えたままよろけた。


「ベン、袋置いてから」

「石係、石を探す」

「その袋も石です」

「そうだった」


 ベンはまじめな顔で袋を下ろし、草の中へ入った。


 村の男たちが二人加わり、平たい石を三つ運んできた。高い石、低い石、少し斜めの石。マル婆さんがひとつずつ座って確かめる。


「これは高すぎる」

「これは?」

「こっちはいいね。立つ時に楽だよ」

「じゃあ、それを真ん中にします」


 ミオは石の下に小石を挟み、ぐらつきを止めた。手を離すと、石は少しだけ揺れた。


「まだ揺れますね」

「ミオ様、こっちに小さい石を入れます」

「リタ、お願いします」


 リタが小石を差し込む。石はぴたりと止まった。


「上手い」

「洗濯板を止めるのと似ています」

「生活の知恵だ」


 水袋は地面に置くと倒れやすかった。リタが枝を二本差し、そこに布を渡した。簡単な水袋台だ。トマが見て、すぐ横木を足した。水袋が二つ、ころんと並ぶ。


 日よけは、古い布を木の枝と草分け棒に結んだ。風が来ると、ぱたぱた揺れる。頼りないが、座り石の上に少し影ができた。


「これでどうですか」

 ミオが聞くと、マル婆さんは座り石に腰を下ろし、杖を膝に置いた。

「さっきより、ずっといいねえ」

「膝は?」

「笑ってないよ」

「よかった」


 ベンが胸を張った。


「石係、できた」

「できたね」

「座り石係もできる」

「係がまた増えた」

「忙しい」


 白狐さんは日よけ布の下に入らず、少し離れた草の上に座った。


「白狐さん、日陰に入らないんですか」

「わたしは見張りです」

「見張り」

「誰かが供物台代わりに水袋を置かないか見ています」

「そこですか」

「そこです」


 ミオは透明板をかざし直した。


――――――――――

[小祠一・休止点設定]

座り石:三基

水袋台:簡易

日よけ布:仮設

荷置き石:一基

状態:使用可

――――――――――


「使用可です」

「使っていい、ということですね」

 神官が言う。

「はい。休めます」

「ならば、ここでは小祠一へ礼をしてから休む。水を飲む前にも短く礼をする。それでよいでしょう」

「はい」


 マル婆さんは水袋から少し水を飲み、ふう、と息をついた。


「ここまで来られるなら、祠に顔を見せられるね」

「また来ますか」

「来るよ。膝が許せばね」

「膝にも聞きましょう」

「膝は気難しいからねえ」


 リタが小さく笑い、布の端を結び直した。


 帰り道、マル婆さんの足取りは行きより少し軽かった。途中で二度止まったが、座り込むほどではない。村へ戻ると、入口祠の横の支度場にみんなが道具を戻した。草分け棒は右、水袋は日陰、戻り石は石係の段へ。今日から小祠一用の布も、棚の下にたたんで置くことになった。


 ベンが木札に書き足そうとして、リタに止められた。


「何を書くの」

「座り石」

「そこは小祠一に置いてあるから、ここには書かなくていいと思う」

「でも石」

「石だけど」

「石係として」

「じゃあ、小さくね」


 木札の端に、小さく「座」と増えた。


 道具、石、水、札、座。


 ミオはそれを見て、少し笑った。


「増えましたね」

「増えました」

 リタは少しだけ困った顔をした。

「次、入らないかもしれません」

「その時は札を大きくしましょう」

「はい」


 夕方、小祠一の休み場に、座り石が三つ残った。水袋台は低く、日よけ布は風でぱたぱた揺れている。荷置き石の上には、神官が小さな枝を一本置いていた。


 ミオは透明板を下ろす。


――――――――――

[小祠一・休止設備]

座り石:安定

水袋台:仮設

日よけ布:仮設

利用記録:成立

――――――――――


 マル婆さんは村の入り口で振り返り、小祠一の方を見た。


「今度は、針仕事の布を持っていこうかね」

「休みに行くんですよ」

「座るだけだと、手がひまだよ」

「それは分かります」


 白狐さんが棚の横で、目を細めた。


「休む場所に、手仕事を持ちこむ者が出ます」

「早いですね」

「村ですから」

「村ですね」


 ベンは戻り石の袋を石係の段に置き直し、今度は水袋台の方を見た。


「水係もいる」

「ベン、係を増やしすぎです」

「でもいる」

「たしかに、いるかも」


 リタが木札を見て、空いている場所を探した。


 もうあまり残っていなかった。

「続きが読みたい」と思ったら下の評価とブックマーク登録をどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ