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第7房 えっへんと謁見

 玄関を開けるとまずレズモンドが立っていた。

他にも数名いる様だが暗い時間なのでよく見えない。

シャバーニが応対する。


「レズモンドどうした?こんな時間に」

「シャバーニ本当にすまない。実は緊急の話があってな。」まぁ中に入れよとシャバーニが案内するも周りを気にしているのかキョロキョロして、いやここでと断った。


「実は先のダム異変の件でな。今回の事でローランドの特異体質の話が皇帝の耳に入ったらしい。なんでもお前さんの所にいるだろう?あのお調子者」

 シャバーニは少し考えてピンと来た様だ。


「ベンドラガーか。たしかクロスリバー一族を追い出されたところを皇帝の恩寵で水守としてウェスト領に派遣されてるって聞いてたが」


「そうだ。それ自体は嘘じゃあないんだがな皇帝直下の諜報員にうっかりことの全貌を話しちまったらしい」はぁとレズモンドは深いため息を着く。そして

「明日の朝、皇帝からの使いが来る。ローランドとそこのオランウータンの娘、それからアルフレッドのじじいが呼ばれてる。」


 あら、お父様も?マルーシャが驚く

「ローランドはまだ幼い。変な事にならないといいが....それじゃあ行くよ。今日のことは無かったことにしてくれ。」と人目を気にする様にレズモンド一行は闇の中へ溶けていった。


 ローニーは考えている。

 ーーーいや、ベンドラガーは気を失っていたから一部始終を見れたわけないんだ。あの場に他に誰かいたのか?それともベンドラガーは気を失っていなかった?---

 その夜はぐるぐると考えが回りなかなか寝付けなかった。モリーも同じだったらしく、夜中に部屋を訪ねてきたので2人であたたかいハーブティーを飲んだ。


 それぞれの不安を抱きながらも残酷なまでに朝はやってきた。

 全員が早めに起き、朝食を済ませて時を待った。


 コンコンコンと玄関をノックする音がした。

 シャバーニが扉の前まで行き尋ねる。

 ーーどちら様ですか?

「朝早くに申し訳ありません。皇帝閣下より招集の令状が出ております。読み上げさせていただきます。」

       

――――――――――――――――――――――――     

       ーーーーーーーーー主ーーーーーーーーー

 以下の者を第427代皇帝アルバックの名において

 宮廷への招集を要請する


 ローランド・ウェスト

 モリー・フォレスト=ワイズマン

 アルフレッド・ウェスト


           [アルバック・マウンテン]

――――――――――――――――――――――――

 重い空気のが家に流れる。

「ささ!準備して行きましょ!マルーシャさんお夕飯はポウカーラがいいです。」とモリーが笑顔で言った。いつも以上に明るくふるまってることは明白だ。

 ーーー空気読むとか慣れないことしちゃって----

 でも助けられた。やっぱりモリーのこの強さは凄いと心底感じた。


 ーーー宮廷への道中の馬車の中ーーー

 車中にはローニー、モリーと1人のゴリラがいた。多分監視役だろう。

 さすがのモリーも話題に困った様で何も喋らない。

 ーーーどのくらい経っただろうか、途中で休憩を2回ほど挟んで太陽はすっかりのぼりきってしまった。

 隣ではやる事がなく夢の世界へ落ちていった頭がズシンと肩にのしかかっていた。


 それから曲がり角をいくつか曲がってようやく馬車が停まった。

 降りた時にはすっかり黄昏色の空だった。帝都の中心部、宮廷や帝国の主要な機関が集まるエリア。そこは普段住んでいる田舎の区画とは別の世界が広がっていた。レンガをふんだんに使った道は綺麗に舗装されて馬車がひっきりなしに往来する。歩道を歩くゴリラの多さ中には異種も少なくない。


 一緒に乗ってきたゴリラに先導されて大きな門の屋敷の前にやってきた。ゴリラがあまりに身ボソボソとしゃべるので距離をグッと詰める。

「本日は遅いのでこちらに案内する様に言われております。ゆっくりお休みいただき明日の朝またお迎えに参ります。」

 モリーは言った。「私のポウカーラはどうなんのよぉおお!」


 屋敷の中は豪華絢爛だった。天井から吊り下がる大きなシャンデリア。絨毯の織物は細かく上品な紋様が所狭しと折られておりフカフカだった。

 玄関を入って正面に立派な大階段があった。

 その踊り場に1人の老人の姿があった。

「よく来た。よく来た。長旅で疲れたじゃろう?ここはわしの家じゃ。安心せい。」

 アルフレッドが笑顔でこちらを向いていた。


 長いテーブルには大量の料理。

 食べ物へ伸ばす手が停まらない女が1人。

「ここはお祖父様の家なんですか?」とローニーが興味本位で聞く。

「ここがウェスト一族の本家、当主の家。つまりはわしの家じゃよ。そしてマルーシャが育った家じゃ。」

 おおう...とローニーは面食らった。裕福とは思っていたが桁が違った。

「明日の話は明日しようかの。今日のところは今日という日を楽しもう。」

 そして各自大いに飲み食いし各部屋へと入っていった。


 翌朝、ローニーは不思議と落ち着いていた。

 考えてみたが、悪い事はしていないのだ。

 そして何か捕まる様なことが起こったら逃げる力があると自負していた。

 何も恐れることはない!そう自分に言い聞かせていた。


 宮廷への迎えが来た。3人は馬車に乗り込む。

 すぐ目の前に見えるのになかなか着かないことからもとても大きな建物だということがわかる。

 15分ほど走ったところで馬車が停まった。中央に大きな噴水のあるロータリーだった。

 こちらです。と案内人が誘導する。誰も何も発さない静寂の中カツカツという靴の音だけが響いた。

 ローニーの心臓は音が漏れていないかと不安になる程にドドドドドと激しいビートを刻む。

 やがて大きな木製の扉の前にやってきた。案内人が扉に掘ってある翼の生えた象の様なレリーフに触れる。

「ノフェルト」大きく響いた声と共にがちゃりと扉が開く。3人は部屋へと足を踏み入れる。遂に謁見の時が来た。


 部屋に入ると小柄なゴリラと複数の巨躯のゴリラ。

「やぁやぁよく来てくださいました。私が皇帝のアルバックです。えっへん」と腕を腰に当てて小さな胸を精一杯張った。

ローニーとモリーはフリーズして瞬きを忘れた。

 そしてアルバックはこう話す。

「いあやぁ。偉ぶりすぎましたかね?アルフさんお今日の調子はいかがです?」

「はっはっは。絶好調じゃ!アルバック様もお元気そうで」

 と2人は固い握手を交わす。

 アルフレッドは2人の方をチラッと見てニヤリとした。

 ーーーこのジジイ楽しんでやがったなーーー

ローニーとモリーの2人も握手を交わす。モリーは握手を求められた時一瞬躊躇した様に見えた。異種の皇帝に異種の異能持ちが触れていいのだろうか?という想いからだろう。一方でアルバックは微塵も気にしていなさそうであった。

 さてさてと全員と挨拶をして満足した皇帝は席に座る様に促す。

「今日来ていただいたのは他でもありません。禍星が現れて以来、我が帝国内では様々な事件や事故が発生しています。先日のダムの一件でのローランド君とモリーさんの活躍は聞いております。」

「あの...」とローランドは恐る恐る手を挙げる。

「ダムの件ですが、あの時は僕とモリーとそれからベンドラガーの3人しかいなかったんですがなぜその一件をご存じなのですか?」するとアルフレッドが口を開いた。


「それについてはワシが答えよう。ウーフォンじゃ。あの日マルーシャのバナ抽出のために家に向かったところでバナが大きく揺らいでいるのを感じた。それでダムの源流に向かったところお主らを見つけたということじゃ。」

 そういうことかベンドラガーを疑っていたわけではないが少しホッとした。

「ウーフォンは"バナ読み"と言ってな。特異体質まではいかんが、バナの流れや扱いが上手いんじゃ。お主らの様に物質に作用する形での出力はできないがの。だからいつもと違うバナのざわめきが何事かと思ったそうじゃ。」

 ーーーなるほどそういうことか。ーーーここでアルバックが口を開く。

「あの禍星が空に現れてから1か月。かつてないほどの変革が国中で起きてます。いや、世界中で起こっているのかもしれない。しかしこのままだと国民の生命と営みの危機です。それを危惧して以前より特異体質のオランウータンの女性を保護したと伺っていたアルフさんに相談したのが経緯です。」

 モリーが突然自分の話題が出たことにギョエっと声を上げた。思っていたより大きい声が出てしまったのか口を手で覆いしゅんとする。顔が真っ赤になっていた。

「そういうことだったんですね。」ローニーの頭では様々な思考が駆け巡っていた。

 ーーーまず、皇帝は種族差なんかどうでも良く民を第一に想っていることはひしひしと伝わってくる。だからこそ分かる。子供にもお願いするほど国の安寧が脅かされているのだと。ーーー

 それを悟ったかの様にアルバックが頭を下げる

「お願いします。どうか国と民を守るためにお力をお貸しください!」

「ローニー!やりましょう!」と涙の滲無覚悟の眼差しでローニーを見るモリー。

「こちらこそよろしくお願いします。」ローニーの進む道と覚悟が決まった。

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