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第8房 宮廷会議

謁見から数日ーーーウェスト本家ーーーー

 皇帝との謁見で皇帝直轄の調査員として特権がローニー、モリーに与えられた。これで帝国内は官民関係なく様々な施設での優遇と補助が受けられる様になった。このことは数人のみで共有され秘密裏の動くこととなった。


 何はともあれ、ホッとしたというのがローニーにとって正直なところだった。

 今日は改めて現在報告に上げられている問題の中で禍星関連の件を調査対象を決める。


 それまでまだ時間があるためローニーは帝都を散歩することにした。


 少し小雨が降っているがローニーには関係ない。

頭上2メートルのところに空気を圧縮し温度を上げた高温帯を作っておけば雨はローニーに届かず蒸発する。

こうやって常に少しずつバナを消費しないとタンクであるローニーには爆散のリスクが伴う。

 扱いに慣れると便利なもんだなとローニーは思った。ーーーいかん。慣れは禁物だな。常に慎重に---


 角を曲がるとパンを焼くいい香りがした。

 ぐぅぎゅるぅうと獣の様な鳴き声で胃袋が鳴いた。

アルフレッドからお小遣いをもらった。ローニー初めてのお小遣いだ。何歳になっても嬉しいもんだな...5歳だけど。


 パン屋を見つけたので入る。色々な種類が棚に陳列されている。いくつか買い。テラス席で食べようとパン屋の2階へ上がった。


 席につきパンをかじる。う....うまい...。小麦の香りが非常に強く鼻に抜ける。中に黄色味がかったクリームが入っているがなんのクリームかはわからないがこれも程よく甘さとフルーティーな香りが絶妙だった。


 窓の外からポロんポロポロ♪と鍵盤を叩く音が聞こえた。ピアノとも少し違うが心地のいい音色だった。

 観ると路上で演奏している女性がいた。何人かが足を止めて聞いているが聞き入っている者は誰もいない。しばらく彼女を見ていたがふと時計を見ると約束の時間が迫っていた。残りのパンを口へ放り込み、屋敷へと戻った。


 屋敷へ戻るとすでに宮廷への馬車が来ていた。

モリーはおそらく起きてから5分と経ってないのだろう。寝癖で綺麗な赤髪が爆発している。

 アルフレッドは蓄えたヒゲをクシで解いていた。

 3人で馬車に乗り込む。

 馬車の中でモリーにパンを差し出す。まだ眠気に勝てない目を精一杯開けてもぐもぐと食べ始めた。


 宮廷に着くと豪華な謁見の間とは打って変わって最低限の装飾の軍事作戦室に通された。

 部屋にはアルバック、レズモンド、それから面識のないゴリラが2人。


 3人が部屋に入ると挨拶をしてきた。

「私は軍部指揮官のムトー・ドラゴエリーゼだ。よろしく」いかにも軍人らしい屈強なゴリラがニコリともせずに握手した。


 続けてもう1人のすらっとした女性だった。

「私は諜報機関の統制室長ラインヒルデ・グラウアー=ルーヴェノよ。弟を助けてくれてありがとう。」

 握手をしながらローニーが不思議な顔をしているとレズモンドが ライナーはパイルのお姉さんだよと教えてくれた。


 ガタガタっとドアの方から音が聞こえゴリラが1人入ってきた。

「失礼します。お二方がご到着しました。」

 やれやれようやくかのとアルフレッドがつぶやいた。そして2人の老人が部屋に入ってくる。


 アルフレッドが皆に紹介しようと前に出た。

「クロスリバー家当主 ダンポリオ」禿げた頭をぽりぽりと掻き杖をついて入ってきた老人が軽く会釈した。


「グラウアー家当主 ヴァンデルケン」歳の割に足腰がしっかりしているほっそりとした老人が手を上げた。


「これで全員ですね。早速始めましょう」

 アルバックが席へと案内する。ヴァンデルケンがチラッとラインヒルデを見て呟く。チッ!ルーヴェノか...一族の恥晒しが

 ローニーは聞き逃さなかった。


 全員が席に着くとアルバックが話し始める

「今日はお集まり頂きありがとうございます。まず始めに新たに調査員として加わった仲間を紹介します。ローランド・ウェスト。そしてモリー・フォレスト=ワイズマン」ここでヴァンデルケンが口を挟む

「まだ子供と異種じゃねぇか!」

「ここで私の恩人たちを侮辱することは許しません。お二人はそのお力で国を救ってくれます。」とアルバックが睨むとヴァンデルケンはフンッどうだかとそっぽを向いた。アルバックは気にせず続ける。


「では本題に入ります。ムトーさんお願いします」

 ムトーがムクっと立ち喋り始める。

「現在、帝国内の異常は3件。ウェスト領の畜産エリア"モーブコッケ"での家畜の窃盗被害。」

「その件については私どもの方ですでに動いています。」とレズモンドが報告する。


「ウェスト領じゃ何か協力できることがあったら遠慮なく言ってくれ」とアルフレッドが応えた。

「畜産の安定は国内経済の中でも非常に重要じゃ。被害総額を割り出せ。国財から補助金を出そう。」と秤守のダンポリオが続けた。ハッとレズモンドが短く返事をした。ムトーが続ける。


「では次の件に移ります。禍星が現れてから各地で地面の隆起やひび割r....」

「その件については礎守が動いとる!主要な道路から優先的におこなっておる。全体の7割は終わって2週間以内には完了の予定じゃ。」ムトーが言い終わらない内にヴァンデルケンが荒らい口調で怒鳴る様に説明した。


「隆起の原因は分かっていますか?」とアルバックが尋ねる。すると黙っているヴァンデルケンを見兼ねてラインヒルデが口早に説明する。

「隆起についての詳細は現在専属チームを発足し調査室で分析をしております。現時点で最終的な結論までは至っていませんが、推定原因としてはk.」

 うぉっほんとここでヴァンデルケンが咳払いをしてラインヒルデを遮る。


「禍星の影響で磁場が乱れておる。あっちもこっちも不安定になっていることが原因じゃろう。禍星に引っ張られる形で隆起し、内部構造の変化で地面が上下左右あらゆる方向に引っ張られてひび割れに繋がっとる。」こう言ったあとでルーヴェノ風情がしゃしゃり出るな。と聞こえるか聞こえないかの大きさで呟いた。さすがにラインヒルデの耳にも届いた様だ。眉頭がピクピクっとなる。しかし無視をした。


 ムトーが頃合いを見て切り出した。

「では3k...」「ちょっとよろしいでしょうか?」

 手を上げたのは最年少の少年だった。全員がローニーに注目する。


「政治的な中立公平な場で個人を卑下する言葉が散見されました。納得できる形で説明いただきたいのですがよろしいでしょうか。」まっすぐな目でヴァンデルケンを見ていた。

 ヴァンデルケンはガキが!っと少し気だるげにローニーを見ている。


 ここで沈黙を破ったのはラインヒルデだった。

「ルーヴェノの件ですか?それなら私から説明させていただきます。」ヴァンデルケンをチラリと見た後でローニーの方を向いた。


「ルーヴェノとはグラウアーの中でも最も低い立場にある一族のことです。200年程前にルーヴェノは本家からのひどい扱いに耐えきれず本家への叛逆を起こしました。この時当時の当主を討ち倒しましたが代わりにルーヴェノも多くの死者が出ました。この内輪揉めはグラウアーの名が落ちることを危惧した本家が情報操作を行い他支族には気づかれませんでした。一方でルーヴェノが急に全滅したとなると国に気づかれるため一部が意図的に残されました。その子孫が私を含めて3人ルーヴェノ最後の生き残りです。」


 ヴァンデルケンはさも当然の態度で早く終わらせろと言わんばかりに貧乏ゆすりをして苛立ちを隠せていなかった。


 ローニーは小さく"ありがとうございます。"と言った。「事情は理解しました。しかしながら、この場でその様な扱いを受ける必要があるようには思えません。」

「黙れ小童がぁあああ!」

 ヴァンデルケンがすかさず反応しローニーに飛びかかろうと立ち上がった。杖の先が喉元に触れる寸前で止まっている。あと一歩でも動けば、貫かれる距離だった。


「わしの孫に触れようもんなら、貴様ら一族事潰すぞグラウアー」流石のアルフレッドも黙っていられなかった。

 一触即発のこの状況に誰もが口を開けず沈黙の間が流れた。


 その時パンッと手を叩く乾いた音が突然した。

「皆さん辞めませんか?一族とかそんなものどうでもいいです。くだらない。今日はみんなで国の未来を考えるために集まってもらいました。ですが」....柔和な皇帝の顔が無表情になる。そして聞いたこともない低い声で「これ以上見出す方は出ていってください」と言った。ローニーは全身の毛が震えたったのを感じた。皇帝のバナが圧として放出された様に感じた。

 さぁムトー続きをお願いできるかい?と進行を促す。ムトーは何事もなかったかの様に話を続けた。

「3件目は禍星の破片と思しきものが各地で発見されています。これについてはラインヒルデより報告します。」名前を呼ばれ前に出る。


「はい。小さなものはこれまでに200程発見されていますが、特に影響はありません。問題は大きなものでこれは国内に3つあります。ひとつは水守のダム上流ですでにローランド様の方で対処いただきております。」

 ---!?あれの元凶は禍星の欠片だったのか---

 今更ながら自分が行ったことの意味を知った。モリーを見ると緊張で硬直していた。まぁこういう場って慣れないと精神をだいぶ削るんだよなぁとローニーは思った。


「さて残りのふたつですがひとつは、グラウアー領とクロスリバー領の境界位置にある集落跡地旧ルーヴェノ村。もうひとつはウェスト領の農業区ナンモクの山の中腹。どちらも民家の近くではないが直接的な被害の関係性は不明です。私からは以上です。」

 ムトーは表情を変えずにガタンと席についた。

 

「さてこの2件について、私はローランドさんにお願いできたらと思っていますがいかがでしょうか?」

 アルバックがローニーの目をまっすぐ見る。

「はい。承知しましたがひとつよろしいですか?

 ルーヴェノの件は私が行きます。ナンモクの方は確か作物への影響が囁かれていると母が言っていました。そこでモリーに行ってもらうのはいかがですか?そうすれば並行して調査ができると思うにですが。」

 ローニーはモリーをチラッと見てアルバックに提案する。モリーも同じ考えだった様でこちらを見てコクンとうなずいた。


「わかりました。ではそれでお願いします。ルーヴェノへの案内はラインヒルデさんお願いします。ナンモクの方はパイルランダーにお願いしましょう。」

 では皆さんいいですね?とアルバックの言葉に全員が合意した。

 こうして宮廷会議は幕を閉じた。

 

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