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第3房 お探し物は禁書庫まで

 中は遥か上まで本、本、本。

 4次元空間かよと思わず心の中で叫んだ。

「えぇ...と...あの....」戸惑うローニーに優しく微笑んだ。

「ロガールよ」

「ロガールさん。バナについての本はどこですか?」

 そうねぇ...とおもむろに巨大な本を開く。

 あまりの大きさにテーブルかと錯覚するほどだった。

 ペラペラと何ページかめくるとふぅんと小さく声を漏らし、「こっちみたいよ。ついてらっしゃい」と書庫の奥へと進んでいく。ローニーも足早に背を追った。15分ほどまっすぐ歩いてこの辺りよとロガールが指したのは7番の棚だった。

 無意識になんとなく一冊の本を手に取る。ずっしりと重たく分厚い埃が重量に加わっている様だった。

 "バナの発生と基本力学 ヨヴィル・マウンテン著"

 どうやら2000年ほど前に書かれた本らしい。言い回しが現代とは違うが文字は読めるし意味もわかる。


要約するとこんな感じか

 バナには動的バナと静的バナがあるらしい。全ての物質に大小バナが存在する。物質に蓄えられたバナが静的で、それを取り出し他の物質に作用させるのが動的バナということだ。

 ーさっきのロガールがやったのもそういうことだと思う。自らの静的バナを放出した。あるいは扉に吸われたのどちらかだろう。ー

 コントロールする事は非常に難しく精神を消耗する。誤ると精神崩壊からバナの暴走放出が起こるため大変危険である。

 ーこれは先程ロガールが教えてくれた通りだー

なるほど、だいたいわかってきた。

 するとあのパイルランダーの腕を治したのは間違いなく動的バナだ。誰かが俺を媒介してバナとパイルの神経に作用させたんだ。

 そうなると一体....近くにいたのはパイル、それから母マルーシャだけだ。マルーシャか?...

 しばらく考え込む...

「ぼく?大丈夫?」と甲高い声でハッとした。

「はい!大丈夫です」と返事の時に思わず声が裏返ってしまった。


 ロガールも別の本を読んでいたらしい。

「ロガールさんは何を読んでいるの?」と聞いてみる。大きく興味があったわけではないが、その方が子供っぽく自然だと思った。

「これは、ここゴリラ帝国の歴史書よ。」

 帝国の歴史か、そういえば気にした事なかったけど他にも国があるのか?少し興味が湧いてきた。

「あら……少し興味があるかしら?」

 コクっと頷くと

「じゃあお話ししてあげましょう!」


 ーーーーーーーーーーーー

 今から約5000年前、ゴリラ族は火山の裾野に広がる大きな森に住んでた。

 魔女により空が落とされた大惨禍のあと勃発した世界大戦。大戦は100年続いたが終結に導いたのがゴリラ族の英雄シルバック。彼によって森の郷を切り開き国を作ったのが建国とされる。


 ーー魔女?.....大惨禍?....世界大戦?.....ーーーー

 これまでに聞いたことのない単語がひしめき合っていた。ロガールが続ける


 最初はシルバックを含む一族を中心に国になっていた。しかし大きな群れが国に加わることでゴリラ族の統一国家としてなりなった。そして帝国と称し初代皇帝として英雄シルバックが着任した。

 国は主に、マウンテン一族、ウェスト一族、グラウアー一族、そしてクロスリバー一族この4支族によって運営される体制となった。

 皇帝は各支族から代表者が任命され、その中から選出される。皇帝を務める支族が国家運営となる行政と国防を司る"国守"、他の支族は建築やインフラ、土木整備を司る"礎守"、水や農業、畜産など食料供給を司る"水守"、経済や流通を司る"秤守"の役割を分担する。


 ----なるほど、職業は固定ではなく持ち回りなのか、今のウェスト家が水守として、だから父様はダム管理をしていたのか。

 そしてレズモンドの顔が頭をよぎる。----

 

 第245代皇帝ヴィルンガの時に史上初の国超会議が開かれ、その時に初めて全ての種族のトップが顔を合わせる。

 お互いの得意不得意を認め合い、過去の憎しみを全て受け入れた上で手を取り合う安全保障条約。

 これにオランウータン共和国の首相 ラッセール、チンパンジー王国の王 パン、そしてホモサピエンス公国 ムルシエ公の4名がこれに同意し調印した。

 これは現代においても有効とされる重要な条約のひとつである。現在でも有効とされるが各国の緊張は高まっている。

 現皇帝アルバックは約7年前に即位しマウンテン一族系譜である。


 ロガールはふぅと一息ついた

「ここまでがあらかたの歴史よ。途中で大きな戦いも何回かあったけどね。」

「ゴリラの他に種族がいるの?」

「そりゃあいるわよ。ゴリラだけだったらみんな脳筋ばかりで文化的生活なんてしれないかもしれないわね」とロガールは豪快に笑った。しかしそのあと鋭い目になり「他種族とはあまり仲良しとは言えないのよ。まぁその辺はぼうやに言っても仕方ないわね。」

 ここでロガールは懐中時計をみて驚いた。

「あら、いけない!この後ダーリンとお茶の約束があるのよ。残念だけどここまでね」と先程とは打って変わって少女の様な表情でウィンクした。


 図書館を出る頃にはすっかりと黄昏時だった。

 マルーシャとシャバーニが並んで手を振っている。

ロガールに今日のお礼をしてペコリと一礼し父母の元へ走っていく。ロガールもニコリと笑いながら手を振った。

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