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他に愛する人のいる彼の元を去ったら、何故か彼が追いかけてきます  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)


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90/107

90 決勝、そして優勝

アロイスのオーラが変わったことに、アレンも気付いたのか一瞬だけビクリと肩を上げた。



「……気合い入れたみたいだが、そんな身体で何ができるというんだ。結果は同じだ。お前の負けは確定している」

「それはどうだろうな」



アロイスは剣を片手に、アレンと向き合った。

両者から放たれる気迫は異常なもので、一介の騎士ですら恐れおののいて逃げ出してしまうだろう。



フィオナは人が変わったような彼を、じっと見つめていた。



(アロイス……そこまでして、一体何が欲しいというの……?)



何がそこまで彼を突き動かしているのか。自身の命を賭けてもいいと思えるほどのものなのか。

フィオナはいくら考えてもわからなかった。



「スティンガー、次は俺から行くぞ」

「やってみろ、できるものならな!」



さっきと違って、先に動いたのはアロイスだった。

彼は右腕を血まみれにしながらも、アレンに向かって行った。



アロイスの剣をアレンが受け止め、しばらくぶつかり合った。

アレンは両手、アロイスは左腕のみだったが、今度は互角だった。



(アロイス……!)



アレンは突如パワーアップしたアロイスに驚いているようだった。

余裕だった彼の表情に、僅かな焦りが見える。

アレンは今になって、アロイスの隠された真の力を悟ったようだ。



どれだけ攻撃を仕掛けても、全て受け止められてしまう。

どうせ勝てると舐めてかかったアレンにとっては、青天の霹靂だった。

そのせいで、彼は焦っていた。



次第に攻撃が荒っぽくなり、アロイスの剣が再び弾かれた。

その一瞬の隙を、アレンはチャンスだと捉えた。



アレンは剣を両手でしっかりと握ると、丸腰のアロイスめがけて振り下ろした。



「……」



――アロイスはアレンの剣の刃となる部分を、左手で握って受け止めた。



抑え込んでいるのは片手だけであるというのに、アレンの剣はビクともしなかった。

彼に攻撃を受け止められたアレンは、顔面蒼白になった。



「お前……嘘だろ……」

「悪いな、俺も本気で欲しいものがあるんだ」



アロイスは彼の剣を横にズラした。

突然動かされたことにより、アレンの足元がよろめいた。



その瞬間、彼はピンと伸ばした左手をアレンの首めがけて振り下ろした。

アレンは咄嗟の出来事に応戦することもできず、もろに受けてしまった。

もはや剣術大会とは?となるシーンだが、あえてツッコまないでおこう。



「ウッ……!」



アロイスの一撃で、アレンは意識を失って前に倒れ込んだ。

地面に横たわり、完全に動かなくなる。シンとなった闘技場で、アロイスだけが立っていた。



たった今、剣術大会の優勝者が決まった。



「――勝者、アロイス・フェンダル!」



皇家主催の剣術大会――優勝はアロイスとなった。

彼の勝利が決まった瞬間、フィオナは席から飛び出してすぐにアロイスの元へと向かった。



「アロイス―――!」

「……フィオナ?」



駆け寄るフィオナを、アロイスは驚きの表情で見つめていた。

あれほど拒絶され続けたフィオナが自分に向かって来ているこの状況を、現実だとは思えなかったのだ。



「あぁ……フィオナ……」



――たとえ夢だったとしても、嬉しい。



アロイスは出血多量で意識が朦朧としていた。

今立っているのも奇跡なほどだった。彼はこちらへ向かうフィオナにそっと手を伸ばすものの、その手は届かない。



だんだん意識が遠のいていき、アロイスはとうとう後ろに倒れ込んだ。



「アロイス……!」



フィオナが彼に辿り着いた頃には、既に彼は意識を失っていた。フィオナは慌てて彼を抱きかかえ、必死で呼びかけた。



「アロイス、しっかりして!お願い、アロイス!」



揺さぶっても反応はなく、フィオナの目から大粒の涙が溢れ出した。

彼女のドレスがアロイスの血で染まっていく。このまま彼がこの世からいなくなってしまうのではないかという恐怖が、彼女の心を支配した。



フィオナの涙が、アロイスの頬を濡らした。

それでも彼は、相変わらず反応がない。



「お願い、アロイス……私、あなたがいないと……」



フィオナはアロイスの胸に顔をうずめ、嗚咽を上げた。



そんな彼女の姿を、それぞれの場所でセレシア、カイル、ミランダはただじっと眺めていた――




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