35 秘密 セレシアside
セレシアは少年を家に入れ、お茶を出した。
今は亡き祖母から教わったお茶の淹れ方だった。
「……美味いな」
少年は一口飲むと、ふぅと息を吐いた。
そして、彼は着ていたローブのフードを手で取った。
「……」
彼の素顔を見たセレシアは驚きのあまり、言葉が出なかった。
――青い髪に、輝くような金色の瞳。
金色の瞳を持っているのは、この世でオランジュ帝国の皇族だけだ。
ということは、彼はもしかして……
「皇族の方……ですか……?」
セレシアは遠慮がちに尋ねた。
瞳の色が金色な時点でほとんど確定しているようなものだが、聞かずにはいられなかった。
「そうだ、俺はオランジュ帝国の第一皇子イザーク・オランジュだ」
「……!」
当時、まだイザークは皇太子ではなく第一皇子だった。
しかし、どちらにせよ平民のセレシアからしたら手の届かないほど高貴な身分の人間であることに違いはない。
彼女は気を引き締めた。
間違ったことを言ったら首が飛んでしまうかもしれない。
「皇子様が一体私に何の用ですか……?」
「……お前、この女を知っているか」
イザークはセレシアの前に一枚の肖像画を差し出した。
そこに描かれていた人物に、彼は見覚えがあった。
「こ、この人は……!」
セレシアは肖像画を食い入るように見つめた。
間違いない、青い髪に髪色と同じ綺麗な瞳。
――幼い頃、何度か見た母の姿だった。
私の母です、とセレシアが口を開きかけたそのとき――
「この女は俺の母親だ」
「……………え?」
「幼い頃、俺を置いて皇宮から出て行った平民出身の皇宮の侍女。それが俺の母だ」
「……」
母が皇宮に侍女として勤務していたことは知っていた。
しかし、第一皇子殿下を産んでいたのは初耳だ。
(ど、どういうこと……!?)
セレシアの頭は混乱した。
目の前にいる彼は、たしかに母親と似たような青い髪を持っている。
真剣な表情から、嘘をついているようには見えないし……
「こ、この人は私の……」
「ああ、知っている。お前の母親でもあるからな」
「ど、どういうことでしょうか……!?」
「――お前と俺は同じ母親を持つ異父姉弟ってことだ」
「……」
予想はしていたが、いざ聞くとセレシアは衝撃を隠せなかった。
固まる彼女に、イザークが声をかけた。
「お前、母親のことを知りたくはないか?その様子だと、お前も母親についてほとんど知らないんだろう」
「そ、それは……」
イザークの言っていることは当たっていた。
セレシアを育てたのは母方の祖母であり、母親とは幼い頃に数回会ったきりだった。
今、どこで何をしているかもわからない。
「知りたい……です……」
その一言で、彼は母の秘密を話し始めた。




