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他に愛する人のいる彼の元を去ったら、何故か彼が追いかけてきます  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)


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19 第三皇妃セレシアの秘密 皇宮の侍女side

「陛下ったら、また新しい女を連れて歩いているわ」

「……」



皇宮で侍女として働くメアリは、先輩侍女の視線の先に目をやった。



皇帝陛下が若く美しい令嬢を隣に連れて歩いていた。

この光景はもはや、皇宮では見慣れたものだった。



「陛下の女好きは有名よね、あなたももちろん知っているでしょう?」

「ええ、存じております」



皇帝は昼夜問わず人目を気にすることなく、女と密会を重ねている。

平民から高位貴族の令嬢、さらには夫のいるご夫人にまで手を出すのだから貴族たちは困り果てている。



「立て続けに婚外子が生まれているし……まぁ、陛下は子供になんて興味ないみたいだけどね」

「自分の血を分けた子が可愛くないんでしょうか?」



メアリは不思議そうに尋ねた。



「さぁね、今は亡き皇后陛下との間の子はいないんだから、どうでもいいんじゃない?」

「理解できません……」



皇帝が今でも亡くなった皇后を一番に愛しているのは有名だった。



「私たちも運良く目に留まったら皇妃になれるかもしれないわ。平民出身の私たちがね」

「それは無いんじゃないですかね……平民が皇妃になるなんて聞いたことがありません」



メアリの言葉に、彼女は面白そうに笑った。



「あら、そうでもないわよ?第三皇妃セレシアのことを知らないの?」

「……彼女はロレンツォ伯爵家の令嬢では?」

「でも最近まで平民として暮らしていた私生児よ。美しさで皇帝の側室にまで成り上がれるなんて、良いご身分ね」



メアリは第三皇妃が後宮に入る前、彼女を何度か見たことがあった。

それはそれは美しい女性で、女でも思わず見惚れてしまうほどだった。



皇宮内でまことしやかに囁かれている噂はメアリも知っていた。

あの女好きで有名な皇帝が、セレシアにだけは一度も手を出してないと。



「第三皇妃様は今何をなさっているんでしょうか?後宮でも姿をお見かけしませんが」

「彼女は今離宮にいるのよ。皇妃になってからは表舞台に姿を現さずに引きこもっているようね」



セレシアは表向きは離宮で療養中ということになっている。

しかし、皇宮にいる一部の侍女の中ではある噂が立っていた。



「何かの病気でしょうか?心配です」

「あら、あなたったら。本当に何も知らないのね」



先輩侍女はフフッと面白そうに笑った。



「――セレシア第三皇妃は実は、皇太子殿下と不貞関係にあるんだってこと」

「え、そ、それって……!?」



メアリは衝撃を受けた。

皇帝の側室である彼女が、その息子である皇太子と関係があるとは。

バレたらただでは済まないだろう。



「そのことを皇帝陛下は知っているんでしょうか?」

「さぁ?知らないんじゃない?」



侍女は笑いながらメアリの耳元で囁いた。



「噂じゃ、フェンダル公爵と付き合っていたときからの関係だったとか言われてるわね。噂だから真偽はわからないけど……でも皇太子殿下がセレシア皇妃のいる離宮へ行くところを見た侍女がいるらしいわ」

「……」



オランジュ帝国の皇太子イザークはアロイスの二つ上の二十七歳であり、皇帝陛下の最初の子だった。

イザークは剣術に長けており、学業において非常に優秀だった。

そのため、皇帝陛下から直々に次期皇帝として名指しされたのだ。



しかし、彼にはいくつか欠点があった。

そのうちの一つ、母親が平民の使用人だったこと。



何でも、最愛の皇后を失った皇帝が彼女に似た侍女に手を出した結果、生まれたのがイザークだったそうだ。

しかし皇帝は数年も経つと彼女に飽き、他の女に夢中になった。

イザークを産んだ母親は皇宮を出て行き、彼は誰からも顧みられることなく育った。



その結果、彼は捻くれ、逆らう者を皆殺しにする暴君へと成長したのだ。

前も皇太子についていた使用人の一人が彼の不興を買って行方不明になったそうだ。



(皇太子殿下はセレシア皇妃と年も近いし……気が合うのかしら)



メアリはちょうど遠くに見える、セレシアの暮らす離宮をじっと眺めた。




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