裕斗と結ばれていたら
裕斗と結ばれていたバージョンです。
書きたいところだけ書きました。最初はこんな感じになる予定でした。
「蓮」
「なんだ?」
裕斗に声を掛けられ、蓮は気のない返事をする。本を読んでいてよく聞いていなかったが、
「好きだ」
「うん。……うん?」
「君のことが好きだ」
聞き間違いかと蓮が裕斗の方を見ると、裕斗はスケッチブックを置いて彼女の方をじっと見ていた。
「ボク?好きって?」
「あぁ、言い方が違ったな」
「あぁ、そうだよな。大丈夫、友人としてってことだってちゃんとわかってるから」
「君のことを愛してる」
「あぁ、あいし……愛してる!?」
直球の言葉に蓮は顔を真っ赤にした。そんなことを気にせず、「その顔、いいな」と彼は微笑んだ。
「それで、君はどうなんだ?俺のことが好きなのか?」
「え、えっと……」
ギュッと握られ、蓮は考える。
――確かに、こいつのことは……。
「……きだ……」
「うん?」
「好きだ……」
目をそらしながら、蓮は小さく答える。いつものあの覇気のあるリーダーはどこへやら、今はただの女の子だ。
裕斗は満足げに蓮を抱きしめた。
――どうせ、ここで付き合っても彼は忘れるのに……。
そんな言葉を、胸の奥にしまいながら。
皆に繰り返しているとバレ、蓮は雨の中公園のベンチに座っていた。
――知られたところで、どうしようもない。
いつもと同じだ。そんな、諦めの言葉が心を満たす。
不意に、後ろから体温が伝わってきた。
「……蓮」
「……なんだよ、裕斗」
耳元で聞こえてくる低い声は、愛おしい彼氏のものだった。
「もう、放っておいてくれ」
「出来ない」
「なんで」
自分は彼に、何も出来ない。それなのになぜ彼はそんな自分を引き留めようとするのだろうか。
「君は、俺をあの暗い世界から救い出してくれた。ならば、今度は俺が君を助ける番だろう」
その言葉に、蓮の目元が熱くなるのが分かった。
ダメだ、泣いてはいけない。
泣いたところで、何も変わりやしない。
「蓮」
裕斗が蓮の頬に触れる。
「俺にも、その傷を背負わせてくれないか?」
あぁ、もう駄目だった。涙があふれだしてしまう。裕斗はそんな彼女をギュっと抱きしめていた。
五十六回目の世界。蓮は再び彼を巡り合った。
「今度こそ、君を助け出して見せる」
その言葉と共に。




