蓮と愛良の立場が逆だったら
怪盗団には、一人の青年がいた。
彼は成雲 愛良。男に詰め寄られていた女性を助けようとして冤罪の前歴がついた男子だ。怪盗の時のコードネームは「ジョーカー」。
彼には、ある秘密があった。それは……。
「やぁ、愛良」
「……レンカ」
夢の中……いや、現実と夢の狭間で、その女性は愛良に笑いかける。
彼女はレンカと名乗る、愛良の人格の一人、らしい。らしいというのは彼女が勝手にそう言っているからだ。
「ずいぶん悩んでいるようだね」
「……まぁな」
愛良が顔を曇らせると、レンカは「ボクには隠せないんだから、吐き出してしまえ」と妖艶な笑みを浮かべた。
「……噂が、つらい」
「それから?」
「本当に、リーダーでいられるか心配だ……」
そうか、とレンカは微笑む。
彼女がこうして夢の中に出てくるようになったのには、きっかけがあった。
ヨッシーが出て行った時、愛良は不安定だった。戻って来てくれたのはいいけれど、そのせいで居場所を失うのが怖くなり、デザイアが出来た。そのあとに現れたのが彼女だった。
「……大丈夫、お前ならできるさ。自信を持て」
レンカは愛良の頭を撫でる。女性にそんなことをされるのは気恥ずかしいが、心地よかった。
何度、死んだのか分からない。しかしレンカは「大丈夫だ」と愛良をいつも励ましていた。
ある日、愛良は思い切って尋ねてみた。
「なぁ、レンカ。お前、本当はオレの心の一部じゃないんだろ?」
すると、レンカは「なんでそう思ったの?」と妖艶な笑みを浮かべた。
「おかしいだろ、明らかに。多重人格者ならともかく、そうじゃないみたいだ。なら、お前は別人、ということにならないか?」
そう言うと、彼女は「……そうだね、ボクは「お前」じゃないよ」と笑う。
「でも、ここで正体は言えない。自分でボクの正体を暴いてみせろ」
その時の表情は、どこか寂しげなものだった。
そして、愛良が「守り神」として覚醒した時のこと。協力者達と話しているとファートルの扉が開いた。
――そこにいたのは、私服姿のレンカだった。
「どうも。愛良の姉の、蓮です」
「は、はぁ!?お前、姉貴いたのかよ!?」
「いねぇよ!いとこの兄さんしか年上にいねぇよ!」
良希の言葉に愛良は叫ぶ。そしてため息をついて、
「お前、なんでここにいるんだ?」
そう尋ねると、蓮と名乗った女性は「お前が願ったんだろ」と笑った。
「てか、姉にしないでくれよ」
「あぁ、そうだな。姉だと、お前の恋人なんてなれないもんな」
爆弾発言にその場にいた人達は固まる。そして「お前、恋人いたのかよ!?」と良希が叫んだ。
「先を越されたね……」
「憐れむな、島田!」
同じ学校の男性陣の様子に蓮はフフッと笑う。
「本当に、いい絆を築いたね、愛良」
そう言って、優しく微笑んでくれた。
蓮も怪盗団に入ることになり、彼女のコードネームは「エース」になった。
それから因縁の相手を倒し、そして悪神である父親を討った。その時、双子の弟である冬木改め光助は愛良によって改心された。
「兄さん、ごめん……」
起きてきた時、彼は謝ってきた。そして蓮の方を見て、
「蓮、でいいんだっけ?兄を、よろしくお願いします」
そう言って礼儀よく頭を下げた。
年明けは突然すべてが変わっていて驚いた。蓮にも確認するが、原因は分からない。心当たりとしては誰のものか分からないデザイアだ。
現実でも見えるようになっていたことに違和感を覚えつつ中に入り、そのデザイアが開原のものであることを知った。
「愛良君、君の仲間の様子を見てきてほしい」
そう言われ、一度は引いた。そして仲間達の幸せそうな姿を見て、自分のやったことは一体何だったのだろうと考え込んだ。
「蓮……オレのやってきたことは、間違っていたのか?」
開原と会う前日、愛良は蓮に弱音を吐いた。蓮は優しく頭を撫で、
「……そんなことはないさ。だって、傷ついた人を助けるのがお前の「正義」だろ?」
「……あぁ。でも、みんなの中に怪盗はいない。……オレ達の軌跡は、どこにもないんだよ。オレは、皆には必要ない存在だったんだ」
涙が流れた愛良の頬を、蓮は優しくぬぐう。
「そんなことはないさ。少なくとも、ボクはお前が必要だよ」
その言葉が、愛良の心の中に浸透していった。
次の日、愛良は一人でデザイアに入った。ピンチだったところに仲間達がやって来て、窮地を脱した。りゅうが事情を説明するが、「でも、開原の作った「現実」の方がいいんだろ?」と吐き捨てる。そして、蓮とともにカバンを持ち、
「さようなら。皆のこと、大好きだったよ」
裏切られた後でも、と言葉を残して、ファートルから出て行った。
始業式の時にデザイア攻略をしていたが、エースがとらえられてしまいジョーカーがどうしようもなくなった時に仲間達が助けに来た。
エースを助け出し、再びともに戦うと決めた怪盗団だったが、一人だけ浮かない顔をしていた。
開原との決着の前、蓮は愛良に尋ねた。
「お前、消えてしまうかもしれないんだぞ?……ボクを、置いていくつもりか?」
その瞳は今にも泣きそうで、あぁきれいな瞳だなとその場に似つかわしくない感想が浮かぶ。
「大丈夫だ、オレは消えない」
愛良はそれしか、言えなかった。
開原を倒した怪盗団だったが、愛良がいないことに気付く。蓮は事情を説明し、「ごめん……」と謝ってきた。
「蓮のせいじゃないよ!あたし達も、聞かなかったし……」
風花が必死にフォローした。
それから愛良を探し続けていたが、見つかることはなく。二月十三日、ファートルに集まっていると愛良が帰ってきた。
次の日、蓮が愛良にチョコと本を渡す。
「今日、バレンタインだろ?これ、やるよ」
蓮は珍しくそっぽを向きながら、そう言った。よく見ると耳まで真っ赤だ。
――本当に、女の子なんだなぁ。
「な、なに笑ってるんだよ」
「いや?お前、本当に女なんだなぁって思っただけだ」
「悪かったな、女の子っぽくなくて」
「ベッドの上でも気が強いからなぁ」
「お前がヘタレだからだろ」
「誰がヘタレだ」
フフッといつもの調子に戻った恋人の細い腰に手を回す。
「……一度は、あっちに戻るよ。でも、絶対に戻ってくる」
「……あぁ」
「だから……待っててくれるか?」
その言葉に、蓮は愛良の肩に頭を乗せた。
「当たり前だろ?二千年も待っていたんだ、いつまでだって待つよ」
その答えに、愛良は微笑んだ。
Twitterで言っていたネタです。書きたいところだけ書きました。
これはこれであり。




