それは、あったかもしれない結末
「光助、一緒帰ろうぜー!」
良希がわざわざ教室に来てまで、光助を誘う。
「お前……ちょっとは静かにしろ」
「いいじゃねぇか。今日は裕斗とも合流するんだろ?」
「あ、じゃああたしもいい?」
前の席に座っている風花も乗ってきた。こいつらは……と光助は苦笑いを浮かべた。
「まぁ、いいか。どこ行くんだ?」
「お、いいねー!じゃあもみじとほのかも誘うか!」
「りゅうも呼ぼうよ!」
ワイワイと騒がしいが、この二人はいつものことだ。風花にいたってはすでにスマホで連絡していた。
渋谷で待ち合わせし、みんなで遊びに出かける。
「光助、どこに行く?」
「カラオケとかどうかな?」
裕斗が尋ねると、光助に代わってりゅうが答える。「もう、りゅうが行きたいだけでしょ?」ともみじが笑いかけた。
「でも、いいんじゃないかな?私も行ってみたいし」
「オレも別に構わないよ。藤森さんには連絡しておくし」
ほのかも目を輝かせていたため、光助は小さく笑って賛同した。
「……はい、今日も……ですか……分かりました……」
その時、近くから女性の声が聞こえてきた。いつもなら気にならないが、今回はどうしても気になった光助はその声の方を向く。
そこにはカバンから黒ネコが顔をのぞかせて、電話している黒髪の女性がいた。その人には見覚えがあった。
「あれ……もしかして「探偵王女」のなぎささん?」
光助が呟いた言葉に、反応したのはりゅう。
「え?どこ?」
「ほら、あそこ」
ちょうど電話を切ったところなのか、スマホをポケットに入れて歩き出そうとしていた。長い髪がたなびいていた。
「あ、すみません!」
珍しくりゅうが声をかけると、なぎさは「どうしました?」と振り返る。
「あれ!?なぎささんじゃん!本物、初めて見た!」
風花は興奮気味に目の前の女探偵を見た。それを気にせず、なぎさはりゅうと目線を合わせる。
「あの!僕、なぎささんのファンで……!」
「そうなんですね、ありがたい話です」
優しく笑う彼女はしかし、どこか寂しげだった。
「ここで会ったのも、何かの縁です。サインぐらいならあげますよ」
「ほんと!?やったー!」
そんな提案をしてくれるとは思っていなかったのか、りゅうは大喜びでスマホを渡す。なぎさはスマホの背面にサインを書いて「どうぞ」と返した。
ほかの人達も続いて、サインを書いてもらう。そのあと、なぎさは腕時計を見て、
「あ、ごめんなさい。この後仕事だからこれで。ゆっくり遊んでおいで」
そう言って、その場を去っていった。皆が大騒ぎしている中、光助だけは何かを忘れている感覚に陥った。
「……いいのか?レン」
なぎさのカバンから顔を出し、黒ネコが問いかける。彼女はネコの喉を優しくなでた。
「……うん、いいんだよ。あいつらが幸せなら」
冬木 なぎさ――いや、成雲 蓮は仲間だった彼らを優しく、そして寂しげに見守っていた。
悪神を倒した時、シャーロックから褒美は何がいいかと聞かれた。そして、蓮は望んだのだ。
――光助が、幸せになる世界が欲しい、と。
光助はほかでもない、蓮の手で倒れた。だからこんなことを願う権利はない。それでも……弟が、幸せになってほしかった。
「ボクが、あの忌まわしい男に引き取られた世界でもいい。光助が幸せなら……ボクは、どうなってもいいから……」
そう頼み込むと、シャーロックは「よかろう……」と笑った。
そして目覚めた時、蓮は探偵王女「冬木 なぎさ」として生活しており、スマホを見ると怪盗団発足どころかまだりゅうの母親も死んでいない時期だった。これなら間に合うと異世界に向かうと記憶を持っていたヨッシーと再会し、二人で怪盗稼業をしようという話になったのだ。
まずは狛井を、次は白野を……そうして彼らに笑顔が戻ったことを、蓮は喜んでいた。
――お前達は、もうこっちに来なくていいんだ。
そう思いながら、蓮はスマホを再び持つ。
「じゃあ、行くか。ヨッシー」
――今日も、改心させに。
今度は、りゅうの母親も咲中も、誰も死なせはしない。ボクが、お前達を絶対に守ってやるから。
だから、お前達はそこで笑っていて。陽の光が当たる場所で、何も知らず笑って過ごしてくれ。
END「世界を救った褒美」
二学期ルートのエンディングの一つです。
守り神として覚醒せず、光助を死なせてしまった時に行けるノーマルエンドです。
ちなみに、逆に光助を生かして蓮が死んでしまうルートもあります。そちらは機会がある時に。
私が考えているエンディング、実ははいくつかあります。




